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疲弊する日本の宅配業界を救う3つの施策

8/6(日) 9:11配信

@DIME

ここ数年、住宅街でも、たくさんの荷物に悪戦苦闘する宅配業者の姿が目につく。それもそのはず、宅配便の取扱個数は年間40億個近くにも達しているのだ。ネット通販を利用しない人にとっても、他人事ではない。宅配業界に何が起きているのか。

【グラフ】疲弊する日本の宅配業界を救う3つの施策

◎年間7.4億個もの「再配達」が当面の課題

 宅配便の最大手、ヤマト運輸が「このままでは荷物が運べない」と公言したことで、宅配便をめぐる過酷な状況が次々と明らかになっている。

 国土交通省によれば、2016年の宅配便取扱個数は38億6900万個。さらに、そのうち2割が再配達される現状という。

 増え続ける荷物に人手不足。ついに今年9月から、ヤマトは基本運賃の最大20%値上げを発表。何と27年ぶりのことだ。

 動きはヤマトだけではない。佐川急便は一部地域でトラック輸送から旅客鉄道を利用した「貨客混載輸送」を開始。日本郵便と楽天は、再配達を減らすための連携強化策を策定した。

 世界に冠たるサービスと称えられた日本の宅配便は、もう限界なのか。物流コンサルタントの角井亮一氏は、再配達の問題を次のように指摘する。

「年間約7.4億個の再配達があるのですが、コストにすると2600億円にもなります。労働力は9万人相当、再配達時間は1・8億時間にもなります」

 宅配ドライバーには、サービスの一環として「荷物を当日中に届けたい」との心理がどうしても働く。連絡がなくても、ついつい再訪してしまうわけだ。

「再配達は、国の発表の個数ベースでは2割ですが、ドライバーさんの体感値では35%と言います。間違いなく業界を圧迫している大きな要因です」

 再配達問題は、業界内だけのことにとどまらない。現にヤマトは、値上げだけでなく、再配達の受付時間を繰り上げるなどサービスの縮小を始めている。つまり私たちの利便性にも直結してくるのだ。

 しかも2030年前後には、宅配便取扱個数が60億個を超えるとの試算もある。

 事実、日本国内の消費者向けEC市場(電子商取引)は急拡大を続けている。経済産業省によれば、2016年は前年比9.9%増の15兆1358億円。ネット通販などのEC市場の伸長は、当然、宅配便取扱個数を増加させる。

◎1回で受け取った人に共通ポイントを

 果たして「60億個時代」を乗り切ることができるのか。角井氏は大きく「3つの施策」によって、十分可能という。

 1つめは、店側が「自前配送」を増やすこと。

 商品を消費者の自宅まで配送する「ラストワンマイル」。今はこの部分を、ヤマト、佐川、日本郵便という三大業者がほとんど担っている。ここを小売業者も担うという考え方だ。

「アマゾンが『自前配送』を増やしていることはご存じかと思いますが、大手スーパーなどもさらに力を入れていくでしょう。最近では家電量販店のヨドバシカメラが、家電だけでなく食料品も1品から無料で即日配達し、高い評価を得ています」

■宅配便取扱個数の推移

国土交通省によれば、宅配便の取扱個数は急増し続けている。2016年の取扱個数は38億6900万個で、前年から6.4%も増加。この10年間では約3割増。さらに2030年前後には、60億個時代の到来が予測されている。

 2つめは「新規参入の促進」。

「例えばクラウドソーシングを合法化するなどして、個人が何かのついでに荷物を運べるようにする。あるいはベンチャーが、大手の負えないニッチな配達を埋めていく。いずれにせよ、今以上に業界が活性化することが必要です」

 そして3つめ。これこそ利用者側の協力も欠かせない「再配達問題」への対策だ。

「再配達に35%の労力が振り分けられているのは、65%しか運べていないのと同じ。再配達をゼロにできれば、今の人員でも理論上1.5倍の荷物を運ぶことができる。38億個の1.5倍のほぼ60億個に対応できてもおかしくはない」

 だが、「再配達ゼロ」など可能なのか。角井氏は、5つの動きに注目する。

(1)自宅宅配ボックスの設置
(2)公共宅配ロッカーの設置
(3)コンビニでの受け取り
(4)宅配業者の営業所での受け取り
(5)SNSやアプリの積極的活用

「(1)が最も効果的ですが、利用者に大きなコスト負担が生じる。(2)(3)(4)は持ち帰りが面倒だったり、中身が箱でばれてしまったりなどの課題がある。その点、(5)のSNSやアプリの活用は障害が少ない。配達状況をリアルタイムで把握し、連絡を取り合えば、確実に再配達が減ります」

 とはいえ、操作が面倒な部分もある。このため角井氏は「例えば1回で荷物を受け取った人に、共通ポイントを付与するような横断的なサービスに期待したい」と指摘する。

 利便性を安価に享受し続けるためにも、業界と利用者双方の協力が欠かせそうもない。

《再配達削減に向けた業界全体の取り組み》

〈受け取り方法の多様化〉
コンビニとの連携や宅配ボックスの設置

再配達を減らすべく、「確実に受け取れる場所」を増やそうとする動きが、官民一体となって広がっている。例えば、駅などの公共スペースやコンビニに宅配ボックスやロッカーを設置したり、一軒家や集合住宅の宅配ボックスを増やしたり、という動きだ。だが、いずれも設置数には限界があるほか、設置コストの負担やプライバシーの問題などの課題が残っている。

〈SNSやアプリの活用〉
連絡を取り合えば再配達は当然ゼロ

商品を受け取る側(利用者)と出荷する側(ネットショップ)、配達する側(宅配業者)の3者が、アプリやSNSを使って配送状況を密に連絡し合えば、不在時の配達は事前にほぼ防げる。現在、ヤマト運輸や佐川急便が独自に配送状況を知らせるサービスを展開しているが、最近ではヤマト、佐川、日本郵便、アマゾン、楽天などと連携した「無料アプリ」も登場している。

スマホ用無料アプリ『ウケトル』は、ヤマト、佐川、日本郵便の荷物を自動追跡し、配達日時の再指定もワンクリックで可能。アマゾンや楽天とのアカウント連携も。

文/編集部

※記事内のデータ等については取材時のものです。

@DIME編集部

最終更新:8/6(日) 9:11
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