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年金75歳受給時代、家族が病気になれば一瞬で家計は火の車

8/7(月) 16:00配信

マネーポストWEB

 いま、年金の受給開始年齢を「75歳」にしようとする計画が進められている。政府は74歳までを“働ける世代”と見なそうとしている。だからこそ昨今「75歳まで働ける社会を」「高齢者は75歳から」などの言説が飛び交っているのだ。しかし、定年後に再雇用で働いても現役時代の給料が保障されるわけではない。

 厚労省の調査では定年後も年金受給が始まる直前の64歳までフルタイムで働くサラリーマンは62%にのぼるが、60歳以降の給料は定年前の「40~50%」にダウンしたという層が最も多い。

 国税庁の「民間給与実態統計調査」(2015年)でもそれが裏付けられる。男性の年収のピークは50歳代前半の約656万円だが、60代前半は約477万円、60代後半になると約389万円、70代以上は約359万円とピーク年齢時の半分近くまで下がる。これは経営者も含めたフルタイムの就業者の金額だ。

 定年後に同じ会社に期限付きの嘱託社員として再雇用された運送会社の運転手3人が「仕事内容は同じなのに給料を3割下げられたのは不当」と訴えた裁判では、一審は勝訴したものの、二審の東京高裁は昨年11月、「同じ労働条件であっても、定年後の賃金減額は社会一般で広く行なわれており、そのことは社会的に容認されている」と会社側の減給を認めて一審判決を取り消した(原告は上告中)。

 これで「65歳は完全に現役」「70歳ほぼ現役」で働き方を改革するから年金をもらうなと言われても、高齢者に勤労意欲が生まれるはずがない。

 総務省の家計調査によると、世帯主が60代後半の高齢者世帯(2人以上)では、毎月の支出は27万802円。平均的な年金収入(約22万円)だけでは生活費をまかなえず、毎月5万円前後は貯金を取り崩すか、働いて収入を得なければやっていけないのが現実だ。

 高齢者の1か月の生活費は70代前半世帯は平均約25万円、70代後半世帯になると同約23万円と下がっていくものの、家族が病気になるなどの事態になれば一瞬にして家計は火の車になる。

 定年後10年間嘱託として働いたAさんは70歳を機に「これから悠々自適で妻とセカンドライフを過ごそう」と考えていたが、会社を辞めた途端に2歳年上の妻が骨折で入院し、医師に「奥さんはアルツハイマーです」と思いがけない宣告を受けた。そこから医療費地獄が始まった。

「年金は2人合わせて約20万円、医療保険料などを引かれて手取りは18万円ほどだが、妻の入院費が毎月10万円を超える。わずかな貯金はすぐに使い果たしました」(Aさん)

 現在は元の会社でアルバイトをしながらなんとか糊口をしのいでいるが、年金75歳支給になれば完全に生活が破綻するケースだ。

※週刊ポスト2017年8月11日号

最終更新:8/17(木) 12:36
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