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ファッションは「人生の決算報告書」! 生き方が全て出る フルタチさん、装いを語る

8/7(月) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 「ファッションは『人生の決算報告書』だ」。フリーアナウンサーの古舘伊知郎氏はこう言い切る。40歳を過ぎれば、良くも悪くも、生き様がにじみ出ると考える。当代きってのしゃべりの達人に、小学生のころに目覚めたというファッションへのこだわりを存分に語ってもらった。

 ――眼鏡にこだわっているそうですね。
 「仕事に行くときは、ケースに入れた眼鏡を車のトランクに積んでいます。20本くらいはいつも持ち運んでます。マネジャーさんは大変ですけどね」
 「全部、自分で選びますよ。プライベート用も含めて、今は40本くらいかな。多いときは100本を軽く超えてましたけれど。はやりすたりもありますからね。使わない眼鏡は人にあげたりしました」
 「お気に入りのブランドはと聞かれるんですが、特に好きとかはないです。たまにメーカーからタイアップしませんかといわれるんですが、そうすると他のブランドをかけられなくなるんで。幅が狭くなっちゃうでしょう」
 「気に入った眼鏡屋さんが2軒あって、そこで『どういうものを買おうか』という話になる。ブランドではないです。ゴールデンタイムの番組では大きいフレームをかけます。お年を召した方が見てるから。深夜の若い人しか見ない番組では結構、カジュアルな感じで。ちっちゃい眼鏡とか」
■「新品より古いもの」 風合いが大切だ

 「ファッション小物ではアンティークウオッチも大好きです。故障するから常に6本くらい修理に出していて、在庫切れのことも多い」
 「アンティークでもパッと見た瞬間に目くらましにあうくらいギラギラと光っている時計もありますけど、そういうのは一つもない。べらぼうに高くない」
 「古いもののもつ独特の風合いが良いですよね。服もユーズドやウオッシュしたものなどを組み合わせるのが好きです。眼鏡や時計もそれに合わせて取り換えます」
 「新品ってツルツルでしょう。新品で身を包むことを僕は『ファッション界の再開発地区』と呼んでます。再開発された街の高層ビルの谷間の風は色気がない。でも銀座の並木通りはどうですか。なぜ一流クラブが軒を並べ金持ちでにぎわうかというと、街の匂いなんです」
 「銀座はめっちゃ古いから、下からふわっと匂い立つ。下水の匂いがね。これがいいんです。40歳を過ぎた美しい女性がちょっと動いたときに、二の腕のたるんとなった感じが、むしろ色っぽさを強調する。マイナスを置かないとプラスが映えないんです」
 「ただし、ただ古くてボロボロなら良いとはいいませんよ。着こなしには工夫がいります。あくまで、古く見せる。歌舞伎の『女形論』ですよ。男が演じた方が女性らしさをよりデフォルメできる。意図的にウオッシュアウト(洗いざらし加工)させるとかね。贋作(がんさく)といいますか、新しいのに古く見せる『偽物主義』なんです」
■小学4年生でファッションに目覚める
 ――いつごろからファッションに目覚めたのですか。
 「小学生からです。当時、セーターなんかはほとんど母親の手作りでした。だから、既製服への強いあこがれがあったんです」
 「小学4年の時に初めてデパートで茶色と黄色の編み込みのセーターを買ってもらった。その時の感動は体が震えるくらいで、今でも覚えていますが1週間、学校に同じセーターを着ていきました」
 「初めて既製のニットを着た感動。これが今になって、ファッションの手作り工房を応援する気持ちにもつながっている。既製は手製を補完するし、手製が既製を下支えすると僕は考えています。外食が家庭料理を支えている構図です。家庭料理があって外食産業を支えて消費社会に貢献している。両方なきゃいけないでしょう」

 「少し話がそれました。僕は1954年生まれ。高校に入ったときは、男がファッションに血道を上げるのは情けないという時代だった。でも、少し上の団塊世代が着始めたアイビーやトラッドに強烈に憧れました」
 「学ランの下にVAN(ヴァンヂャケット)の赤いセーターを着ていったときには、柔道5段の生徒指導の先生に怒られてセーターを引きちぎられました。男子校だったから、遠い存在の女性に対するあこがれは強かった」
 「もてたいから必死にね、お洒落(しゃれ)な格好して。大学に入ってからは、いい車やいい服がいわばよろい甲冑(かっちゅう)です。スポーツカーに乗れば、自分のスタイルも格好いいのだと思える。女性にも、いい車に乗っている男はいい男だという幻想があった」
 「今の若い人は違いますね。草食系とかノンセックスとかが当たり前で、脂ぎっているのはムチャ格好悪い。それはファッションにも表れているのかなあ」
 ――古舘さんにとってファッションとは何でしょう。
 「うーん、内視鏡ですね。なぜかというと、その日の自分の気分が出る。落ち込んでいるときはファッションに出る。如実に出ますね」
 「いい年をしたら、ファッションは人生の決算報告書でしょう。出ますよ、それまでの生き方や経験の良いも悪いも。こんなふうに意識するようになったのは、40代の頃からですね。結果的に良いも悪いもすべて出る。繕って、二重帳簿を作っていても絶対ばれちゃいます。まあ、ファッションは要素がとても多いから、正確には連結決算書になりますね」

(聞き手は若杉敏也)

 古舘さんに仕事とファッションへの情熱を語っていただいた、第1回「ダークスーツ一辺倒なんて思考停止 お洒落は工夫次第」、第2回「ニュースがカジュアル化、だからタイは外さなかった」もあわせてお楽しみください。

「リーダーが語る 仕事の装い」は随時掲載です。

最終更新:8/7(月) 7:47
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