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どうなる憲法改正の行方(深層NEWSの核心)

8/7(月) 7:01配信

中央公論

 安倍首相が二〇二〇年に憲法改正を目指す強い意思を表明し、大きな波紋が広がった。五月十六日の放送には自民党憲法改正推進本部の船田元本部長代行、民進党憲法調査会の枝野幸男会長、公明党憲法調査会の北側一雄会長、共産党の小池晃書記局長が出演して議論した。その発言を踏まえてキャスター二氏が語り合った。

◆なぜ今、改憲か
「安倍首相が自民党総裁としての任期を終えるのは、仮に来年九月に三選されたとして二〇二一年。何とか自分の政権のうちに憲法改正したいという思い。国民投票などを考えると(今が)一つの節目という感じ」=船田氏
「憲法が施行されて七〇年となる五月三日に意見表明したのは、憲法改正の論議を加速させてもらいたいという趣旨だったと思う。自民党内へのメッセージと理解している」=北側氏
「もともと安倍さんが考えていることで、いつ言ってもおかしくない話。連休明けの予算委員会は森友学園と加計学園一色になる。そして共謀罪が注目される。それらへの目をそらせたかったということ」=枝野氏
「憲法を自分の任期中に変えたいとすれば、私物化以外の何物でもない。総理が期限を区切って具体的な改憲項目まで示すのは憲法九十九条、憲法尊重擁護義務違反。行政の立法府に対する介入で、三権分立の否定につながる問題がある」=小池氏

近藤 安倍政権が発足して今年で五年目になりますが、憲法審査会の改正項目の絞り込みなど議論はあまり進んでいません。安倍首相はそれに不満で、議論を促したかったのではないでしょうか。打ち出した改正内容は、特に第九条で自民党草案とは異なっており、党内に反発や不満も出ています。

吉田 安倍首相の九条の提案は、公明党の従来の主張と一致する部分があります。ただ、同党内には二〇二〇年という区切りについて異論もあり、今後の与党内での議論となりそうです。一方で民進党には、安倍首相の提案と近い考えの人もいれば、自衛隊を違憲とする人もいるので、党を分断しかねない。それが安倍首相の政局的な戦術だと警戒する声もあります。

◆第九条をめぐる議論
「平成二十四年の自民党の日本国憲法改正草案では、九条一項(国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する)はそのままで、二項(前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない)を変えて、そこに自衛権を認め、九条の二として国防軍を入れている。それが公式見解なので、党内できちんと議論しなくてはいけない。今回の安倍首相の提案は、一・二項は変えず、三項に自衛隊を付け加えるというもの。そういう点では現在の等身大の自衛隊を明記するということで、草案よりも分かりやすい」=船田氏
「九条一・二項を残しても、自衛隊の存在を書き込めば単に追認するだけ。三項に自衛のための自衛隊を入れたとする。そうなると二項の戦力不保持という抑制がかからなくなる。結局どんどん独り歩きして、海外での武力行使をすべて可能にすることになりかねない」=小池氏
「自衛権の限界を、明確にここから先はできない、ということをはっきりさせるのであれば、それは立憲主義にかなう。それをきちんと条文に書き込まないで自衛隊を書いたら、間違いなく解釈は広がっていく」=枝野氏
「一項・二項を堅持して自衛隊の存在を明記するのは、我が党(公明党)が言っていた『加憲』と重なる。一項・二項の憲法解釈をきちんと維持する。従来の解釈を超えるようなことがあれば、私たちは反対です」=北側氏

近藤 公明党は加憲という点では賛同していますが、その内容は自衛隊の行動範囲を規定するということです。民進党にも、自衛隊の活動を明確に規定する方向なら、賛同する考えの人がいて、その点では公明党と民進党は一致できそうです。

吉田 安倍首相案でいくにしても、九条三項に自衛隊についてどこまで書き込むかが大きな論議となるのは間違いありません。安倍首相は、野党第一党の民進党とのすりあわせを待っていられないと、自民、公明、維新の三党だけでも話を前に進めたい考えのようですが、この点の議席の先行きは不透明です。

◆今後のスケジュール
「来年の通常国会で発議まで持っていくのは非常に厳しい。自民党総裁選挙(一八年九月)に加え、衆議院の任期満了(一八年十二月)、参議院の任期満了(一九年七月)と国政選挙が二回控えている。大きな問題は、国政選挙と国民投票を同時にやるかどうか。政権を選ぶ選挙と憲法改正を同時にやることは極めてよろしくない。衆議院は来年十二月に任期満了。そこまでに(憲法改正を発議するのは)きつい。早くても二〇一九年の通常国会」=船田氏
「二〇二〇年というのは、東京オリンピック・パラリンピックだと安倍総理は言う。何の関係があるのか。これはオリンピックの政治利用だ」=小池氏
「大阪都構想の住民投票もイギリスのEU離脱の国民投票も、予想と逆になった。国民投票で否決されたら自衛隊はどうなるんですか。国会の三分の二で発議して押し切るんだなんてことはあり得ない」=枝野氏
「大事なのはスケジュールでなく内容。野党第一党の民進党も理解できるような形に持っていかなくてはいけない。この問題で国論を二分して、否決されるかもしれない、ぎりぎりかもしれない、という状況で国民投票に持ち込むわけにはいかない」=北側氏

吉田 この憲法改正論議は、来年九月の自民党総裁選、そして来年十二月に任期満了する衆院選の大きな争点になることは間違いありません。どのタイミングで衆院を解散するのかどうか。解散したとして改憲発議に必要な国会の三分の二を維持できるかどうか。安倍首相にとっても大きな賭けとなりそうです。

近藤 正面から九条を打ち出したことは、憲法論議を進める上ではある意味良かったと思います。ただ、自民党内でもとりまとめがうまく進むかどうか、予断を許しません。また、国民投票で否決されるような結果になれば、政権にとって大きなダメージになるだけでなく、憲法改正論議そのものがしばらく行えなくなる可能性さえあります。そうならないためにも、野党第一党である民進党を巻き込んで議論していくことが大切です。
(了)

最終更新:8/7(月) 7:01
中央公論

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