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財政リスク顕在化の条件と金融政策

8/7(月) 8:29配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

国債発行増額によって財政拡張策が実施される場合に、その「受益者」、「負担者」、「国債保有者」の3者が概ね一致している場合には、国内民間部門が最終的に増税を受け入れることで財政破たんは回避されるとの期待が金融市場に強く、財政リスクプレミアムが顕現化しにくい。しかし3者が乖離するほど、つまり、(1)国債発行の拡大で将来世代へのつけの傾向が強まるほど、また(2)海外部門の日本国債保有比率が高まるほど、顕現化リスクは高まるのである。人口動態の変化から国内民間資金余剰が大幅に削減され、海外投資家の日本国債保有比率が高まることで財政リスクプレミアムが顕著に上昇する臨界点までにはなお時間的余裕があると考えることもできるだろう。ところが、日本銀行の国債買入れ策が、国債市場の過度の流動性の低下を通じて長期金利の上昇を招く場合には、そうした財政面での危機的な状態が顕現化する時期が、一気に早められてしまう可能性がある。

財政政策の「受益者」と「負担者」

財政政策は一般に、その政府サービスの「受益者」と「負担者」ができるだけ一致することが望ましい。例えば公共投資が実施され、それが増税で賄われる場合には「受益者」は現役世代と将来世代、「負担者」は現役世代となる。他方、それが国債発行で賄われる場合には、「受益者」は現役世代と将来世代、「負担者」は現役世代と将来世代と、双方が一致することになる。

しかし、国債発行で賄われる場合の現役世代と将来世代の「受益」と「負担」のバランスが、それぞれ一致する保証はない。国債の償還に時間をかけるほど、将来世代の負担の比率は高まることになるのである。そして、その「負担」が「受益」に見合わなくなると、不公平感が強まることになる。

強まる将来世代へのつけと不公平感

国債発行が、将来世代も「受益者」となる公共投資に限定された建設国債に限らず、経常的な財政赤字を国債で賄う赤字国債の発行が認められた時点で、既に将来世代へのつけは始まったのである。

当初は建設国債に適用されていた「60年償還ルール」が赤字国債に適用されるようになったことも、次世代につけを回す政策を定着させてしまった面がある。さらに、政府債務の増大や平均償還年限の長期化も、こうした傾向を助長しており、不公平感を強めているといえる。

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