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なぜ働き方改革には「定年制の見直し」が欠かせないのか~人口ボーナス、人口オーナスの大いなる誤解

8/7(月) 11:50配信

政治山

人口ボーナス、人口オーナスをめぐる誤解

 「人口ボーナス」「人口オーナス」という言葉は、しばしば誤用される。たとえば、「人口が増えれば、国民生活は豊かになる」「人口が減れば、国民生活は貧しくなる」は、単純にすぎ、ミスリーディングだ。

 考えてもみよう。どの国も、出生率が高まり、人口が増える時こそが苦しい。より多くの子どもを一人の大人が支えなければならないからだ。

 日本も戦争直後はそうだった。戦争で貴重な働き手を失う一方で、団塊世代が多く生まれた。彼らをどう養っていくかが、国の大きな課題だった。1950年代には、中南米への移民も再開されている。移民は、戦前だけのものではない。

 重要なのは、総人口に占める働き手の人口の比率である。国民の豊かさ(国民一人当たりのGDP)は、この比率に比例する。同比率の上昇局面が本来の「人口ボーナス期」、低下局面が本来の「人口オーナス期」に当たる。

 簡単な例で確認してみよう。参考1は、働き手の年齢層を20~69歳(注1)とし、出生数が毎期減少を続ける場合の「働き手人口」比率の変化をみたものだ。

(注1)働き手を20~69歳としたのは、10歳単位で計算するための便宜上のもの。15~64歳(生産年齢人口)あるいは20~64歳としても、結論はほとんど変わらない。

 試算結果が示すように、少子化継続の仮定のもとでは、「働き手人口」比率は長期にわたり上昇し、ピーク到達後も高原状態が続く。すなわち、「人口ボーナス」期が長く続く。

 参考1にはないが、このモデルを前提に再計算すると、「人口オーナス」期は、むしろ出生率の低下が止まった時点から始まることとなる。

すべては「長寿化」が原因

 つまり、出生率の低下が、国民生活を貧しくするわけではない(注2)。人口問題の根源は、上記試算に織り込まれていない「長寿化」の方にある。より正確にいえば、長寿化にもかかわらず、その分一人一人が長く働いて「働き手人口」比率を維持しようとしてこなかったことに問題がある。

(注2)ここでは、あくまで「国民一人あたりの経済的な豊かさ」に焦点を当てている。これとは別に、「一国の国力」を考える場合には、人口規模と比例するとの見方が有力であり、少子化は依然大きな問題である。

 確認のため、参考1に「長寿化」の要素を付け加えてみよう。参考2は、各年齢層の死亡率が毎期5%ずつ低下すると仮定して、「働き手人口」比率の推移をみたものだ。

 試算結果から分かるように、長寿化継続の仮定のもとでは、働き手人口比率のピークは参考1に比べ早く到達し、かつピーク後急速に低下していく。すなわち、一挙に「人口オーナス期」が訪れることになる。

 それほど長寿化のインパクトは絶大だ。こうした働き手人口比率の低下を避けるには、一人一人がより長く働く――すなわち、働き手人口を「20~69歳」から「20~70歳超」まで引き上げる――しかない。

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最終更新:8/7(月) 11:50
政治山

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