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【テレビの開拓者たち / 岡澤正樹】「面白い番組を作りさえすれば、状況は変わると思う」

8/7(月) 14:00配信

ザテレビジョン

1990年代末のお笑い氷河期にスタートし、2000年代初頭に起こった新しいお笑いブームのきっかけとなった「爆笑オンエアバトル」(1999~2010年NHK総合)をはじめ、「笑・神・降・臨」(2008~2013年NHK総合)、「おぎやはぎと愉快な芸人(なかま)たち」(2016年NHK総合)、「番組バカリズム」(2013年~2015年NHK BSプレミアム)、そして8月11日(金)にNHK総合で放送される特番「真夏のお笑い夜どおしフェス どぅっかん!どぅっかん!」など、長年にわたって数多くの番組を手掛け、“NHKのお笑い番組”を牽引してきた岡澤正樹氏。おぎやはぎ、バナナマンら、今や人気者となった多くの芸人たちから“同志”として慕われている岡澤氏に、番組作りのポリシーや今後の展望、そしてテレビ界の未来まで、お笑い番組の作り手の観点から、ざっくばらんに語ってもらった。

実力派芸人たちがオールナイト生放送でネタを披露する「真夏のお笑い夜どおしフェス どぅっかん!どぅっかん!」(8月11日[金]、NHK総合)。司会のおぎやはぎ&ゲストによるロケコントも!

■ 「笑・神・降・臨」は短めのお笑い単独ライブみたいな番組を目指しました

――岡澤さんがテレビマンとして最初に担当された番組は?

「入社して半年くらいで『クイズ100点満点』(1988~1994年NHK総合)の担当になって、取材をしたり、ロケに行ったりしてました。

初めて自分の企画で作った番組は『笑・神・降・臨』ですね。そのころ、『爆笑オンエアバトル』で芸人さんと仲良くなっていく中で、持ち時間が5、6分だとネタをやりづらいという人もいたんですね。バナナマンやアンジャッシュのコントは、当時から評価は高かったけど、長尺だからこそ面白い、というネタもたくさんあった。だから、そんなネタでも放送できる、短めの単独ライブみたいな番組ができたら面白いんじゃないかなと思ったんですよね。しかもそのころは、『爆笑レッドカーペット』(2007~2010年フジ系)が始まって、短いネタがどんどん主流になっていく時期だったので、あえてわれわれは、その逆を行った方が面白いんじゃないか、というのもあって。芸人1組で29分間、基本はネタ番組だけど、何でも好きなことをやっていいよ、と。マニュアルを作りたくなかったんです。芸人さんによってやりたいことも違うでしょうし、やり方ももちろん違うので、番組としてはなるべくそれに合わせたいなと。その方が番組のカラーも出るし、面白いかなと思って」

――それはつまり、毎回毎回、新しい特番を作るような作業ですよね。かなり時間も掛かったのでは?

「最初のころに出てもらった芸人さんは、普段からよく一緒に飲みに行ったりしている人が多かったので、やりたいことは分かっていたし、そのあたりは割とスムーズに行きましたね。本人の携帯番号も知ってるから、いろいろ話もできましたし。次長課長は、『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合)が好きだから、あの番組のパロディみたいなものをやりたいと言い出して。そこで『プロフェッショナル』のプロデューサーに電話したら、セットを貸してくれて、技術スタッフもついてくれて、本物そのままの感じでやれたんですよ。次長課長の2人も、すごく楽しかったみたいですね。『笑・神・降・臨』は、芸人さんもみんな楽しんでくれたし、質の高い番組が作れたんじゃないかと思っています」

■ 自分が選んだ無名の芸人さんがウケると、ものすごくうれしいんです

――この番組誕生のきっかけになった「オンエアバトル」も、岡澤さんは番組の立ち上げから携わられていたそうですね。

「そうです、最初の立ち上げから4年くらい。僕は出演者のブッキングとディレクターをやってました」

――ブッキング担当として、どのように芸人さんを選んでいたんでしょうか。

「とにかくライブを見に行きました。オーディションって、雰囲気悪いというか(笑)、芸人さんからすると、すごくやりにくい状況だと思うんですよ。僕らの側から考えても、笑いをよく分かってないスタッフが選ぶと、独りよがりで偏った顔触れになってしまう。僕としては、できるだけ面白いネタをやる人を集めたかったので、オーディションをやるよりも、ちゃんとネタを見にいった方がいいなと思ったんです。そうすれば、お客さんがどのネタでどんな風に笑うのかも分かりますから。それに同じネタでも、会場によって間が違ってくるし、ウケ方も違いますからね。あと、似たようなネタをやってる芸人さんがたくさんいるんだな、みたいなことも分かってきますし(笑)。だから、それまで全くテレビに出たことのない芸人さんでも、自分が面白いと思った人には積極的に出ていただきました。本番で彼らがウケると、すごくうれしかったのを覚えてます。それは今も一緒で、自分の番組で自分が選んだ無名の芸人さんがウケると、ものすごくうれしいんですよね(笑)」

――今も、お笑いのライブは見に行かれているんですか?

「そうですね。今回の『真夏のお笑い夜どおしフェス どぅっかん!どぅっかん!』では、若手芸人のコーナーをやるにあたって、この半年で、若手のライブを50本くらい見ました。ライブを見たときは、どういう芸人さんがどんなネタをやったか、そして自分はどう思ったか、忘れないようにノートにメモしています。『キャラのゴリ押しに終始』とか、ちょっと気になることも書いたりして(笑)。そのノートは、『オンエアバトル』が始まった1999年からつけていて、今、16冊目。転勤で東京にいなかった時期もあるので、冊数は大したことはないんですけど」

――いえいえ! 岡澤さんは学生時代からお笑いファンだったんですか?

「いえ、それほどではないです。ただ、僕の母親の親友が落語家の娘さんで、小さいころからお笑いとか演芸といったものに、それなりに馴染みはあったんですけど。でも、お笑いのライブをガッツリ見るようになったのは、『オンエアバトル』の時期からです」

――『オンエアバトル』が終了する際、おぎやはぎさんがラジオ番組で「岡澤さんのおかげで、当時、他のテレビではできなかったネタをやらせてもらえた」とおっしゃっていましたが。

「すごい褒めてくれてましたよね(笑)。『オンエアバトル』が始まったころって、ネタ番組がほとんどなかったから、いわば、芸人さんたちの中にネタが溜まってる状態だったんでしょうね」

――新たなお笑いブームを巻き起こした「オンエアバトル」がテレビ界に与えた影響は大きいと思うのですが、岡澤さんの自己評価は?

「タイミングがよかったんですよね。当時、面白い芸人さんはいっぱいいるのに、彼らが出ていける場所がなかった。そういう人たちがどんどん出てくれたから、番組に勢いがついた。あとは、NHKという放送局が功を奏したところもあったのかなと思います。本番が始まる前に意気込みを聞いたり、“ガチでやってますよ感”を演出していたので、そういう真面目な感じがNHK的だったのかなと」

■ 芸人さんとウィンウィンの関係を作ることが理想

――では、テレビマンとしてのターニングポイントとなったのは、やはり…。

「間違いなく『オンエアバトル』ですね。この番組に関わったことが、お笑い番組をずっとやっていこうと決意するきっかけになりましたし、そのためには芸人さんと、人と人として付き合っていかなきゃならないんだと学ばせてもらった番組ですから。最初は、お笑いのことなんて全く分かってませんから、おそらくずいぶん的外れなことも言ってたと思うんですけど、番組作りを通じて、芸人さんたちから笑いのイロハを教えていただきました。ますだおかだの増田(英彦)さんの『漫才はお客さんがいないと成り立たない』、バナナマンの設楽(統)さんの『コントは台本だけがいいだけじゃダメ。その人たちが演じるから面白くなるっていうものじゃないと意味がない』といった言葉は、なるほどと思いましたね」

――岡澤さんが番組を作る上で心掛けていること、大切にしていることは?

「僕は、芸人さんとウィンウィンの関係が作れると一番いいなと思っていて。『オンエアバトル』は、芸人さんにとっては、活躍の場が広がるきっかけになったと思いますし、われわれも、この番組によっていろんな芸人さんと関係を持つことができた。つまり、お互いにプラスの関係性を築くことができた番組なんです。そういう番組は長続きするんですよ(笑)。

あとは、芸人さんとフラットな関係でいたい、ということ。要は、偉そうにしたくないんですよね(笑)。信頼関係をしっかり築いた上で、お互いを尊重しながら一緒に番組を作るのが楽しいんです」

――今、新しい番組の構想はあるんでしょうか。

「具体的なことはともかく、これからも僕は、芸人さんと仕事をしたいから、お笑い番組を作り続けたい。今また、ネタ番組がほとんどなくなってきてるので、そういう番組を作らなきゃいけないな、というのはありますね。あと、『番組バカリスム』みたいなロケコントがやりたいです」

――ちなみに今、岡澤さんが注目しているテレビ番組やクリエイターは?

「『番組バカリスム』でもご一緒した演出家の住田崇さんはスゴイ人だなと思いますね。僕も好きだった『戦国鍋TV ~なんとなく歴史が学べる映像~』(2010~2011年、2012年tvkほか)も手掛けられていた方なんですけど、最近でも『住住』(2017年1~3月日本テレビほか)とか、『架空OL日記』(2017年4~6月日本テレビほか)とか、とても面白いものを作られているなと」

――昨今はテレビメディアの衰退を危惧する声もありますが、岡澤さんは今後のテレビ界はどのようになっていくと思われますか。

「やはり厳しいとは思います。特に、お笑いの芸を見せるメディアとしては、年々難しくなってきているのかなと。でも、そんな状況ですけど、面白い番組を作りさえすれば、状況は変わると思うんですよ。だから僕は、今後も自分自身が面白いと思える番組を作っていくだけですね。気楽に、あまり使命感を持たずに(笑)。ともあれ、演者もスタッフも含め、みんなで楽しみながら番組を作っていきたいです」

最終更新:8/7(月) 14:00
ザテレビジョン

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