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「残業代ゼロ」合意をドタキャンした“政権寄り”連合のこれから

8/7(月) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 労働組合の中央組織である連合は7月27日、札幌市で開いた中央執行委員会で、「高度プロフェッショナル制度(高プロ)」の創設や裁量労働制の拡大が盛り込まれた労働基準法改正案の修正に関する「政労使合意」を見送ることを決めた。

 「高プロは、残業代ゼロを容認し、長時間労働を助長する」と反対してきた連合だったが、一転、容認に回り、この約2週間前の13日には、神津里季生会長自らが官邸を訪れて、安倍首相に改正案の修正を要請したばかり。一体、何があったのか。

● 唐突に「高プロ」容認に転換 現場が反発、2週間で撤回

 「ずるずると引きずってはいけないという認識もあり、判断した」

 中央執行委員会のあと、記者会見した神津会長、逢見直人事務局長の表情はげっそり。

 執行部の全面敗北で終わった2週間のドタバタ劇を象徴するようだった。

 発端となった「高プロ」とは何かといえば、為替ディーラーやアナリストなどの特定の専門職で、一定以上の年収(1075万円を想定)のある人について労働時間の規制を外す制度のことだ。

 労働基準法では、労働時間の上限を1日8時間、週40時間と定め、この法定労働時間を超えて働かせる場合は、割増賃金の支払いを義務付けている。高プロの対象になれば、労働時間の規制がかからず、残業代はもちろん、休日労働、深夜労働にも割増賃金が一切支払われなくなる。

 第一次安倍政権のときに導入が検討され、猛反発を受けて頓挫した「ホワイトカラーエグゼンプション」の一種だ。

 政府は2015年4月に、これを盛り込んだ労基法改正案を国会に提出したが、野党が「長時間労働を助長する」と反発。法案は審議もされないまま、たなざらしになっていた。

 連合も一貫して反対し、法案の閣議決定の時も、「高プロの創設と裁量労働制の拡大を阻止するため、院内外の取り組みを強力に展開する」と“徹底抗戦”する事務局長談話を発表している。この時の事務局長が現会長の神津氏だった。

 だが唐突な形で今年7月、法案修正を政府に働きかける執行部の動きが表面化する。

 7月8日に開かれた三役会の集中審議。会長、事務局長に加え、UAゼンセン、自治労、自動車総連、電機連合、基幹労連など、連合を支える主要な産業別組織のトップが集まる会合で、条件付きで「残業代ゼロ」を容認する執行部の意向が示された。寝耳に水の出席者からは異論が続出したという。

 主要幹部の了解を取った上で、13日に神津会長が官邸を訪れて安倍晋三首相に、働き過ぎを防ぐ対策を手厚くする修正を要請、これを受けて19日には、政府、経団連との「政労使合意」を結ぶ――。執行部が当初、考えていたシナリオだ。

 実際、13日には神津会長が官邸を訪れ、高プロの対象者に年104日の休日を義務づけることなどを首相に要請した。安倍首相も政労使合意を検討することを表明し、事態はシナリオ通りに動くかのように見えた。

 だが8日の三役会以降、執行部の一部の「独走」に組織内や民進党、過労死遺族の団体から反対論が続出。

 地方組織にも動揺が広がり、連合島根は、19日付で連合本部に意見書を提出。「十分な組織的議論と合意形成の努力を行うべきであり、今回の対応は手続きの面で大きな問題がある」と、反発した。

 組織内だけではない。SNS上では連合批判が飛び交い、19日夜には「連合は勝手に労働者を代表するな」「勝手に決めるな」と書かれたプラカードを持った人々が連合本部(東京都千代田区)前でデモをした。インターネットの呼びかけに応じて集まった人々を中心に100人以上が集まった。

 執行部は、19日の「合意」をいったん見送ったが、それでも主要産別などがそろう中央執行委員会で、組織内の了解を得られると踏んでいた。だが10以上の産別や地方組織が反対。結局、合意取り付けに失敗した。

● 「一強」政権に接近の現実路線 「表も裏も政府寄り」の批判

 「こんな大騒ぎになるとは思わなかった。判断が甘かった」と幹部の一人は言う。

 現実路線を進める執行部の一部に対する、現場の不満のマグマは想定以上だった。

 安倍政権が、デフレ脱却を掲げて企業に賃上げを求める「官製春闘」を展開、「働き方改革」では「同一労働同一賃金」などの、“労働者寄り”の政策を打ち出す中で、連合は政府に呼吸を合わせてきた。政府、経団連らとの「政労使会議」や、「働き方改革実現会議」など、官邸主導で作られる舞台に乗って、「実」を取ろうという路線が続いてきた。

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