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テクノ失業する前にAIで伸びる業界に投資しておこう

8/7(月) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

産学官が連携し、加速度的に開発が進むAI。人工知能が仕事を奪う“テクノ失業”を危ぶむ声も飛び交うなか、どの分野から先んじていくのか。専門家に聞いた。

◆インフラ、医療、音声認識etc.で伸びる業界、廃れる業界

 政府は6月、新たな成長戦略のテーマに「ソサエティ5.0(第5期科学技術基本計画)」を掲げた。産学官が連携し、AI(人工知能)やIoT、ビッグデータを活用して少子高齢化を乗り越える構想だ。

「大規模な範囲で人工知能の実用化の動きが起こっている。単なるブームから、どう実用的に導入していくのか? 多くの企業で本格的に議論され始めています」

 ロボットやIoTの専門メディア「ロボティア」代表の河鐘基(ハジヨンギ)氏は、こう語る。

「法務・税理・採用の分野では、すでに人工知能を用いたサービスの導入が始まっている。最近だとソフトバンクが新卒採用にIBMの『ワトソン』を導入して、エントリーシートの評価に活用することが発表され、話題になりました。これまで人間が目で見たり、頭で考えたりした判断を人工知能のアルゴリズムが行うのです」

 テーマ株投資に詳しいカブ知恵代表の藤井英敏氏も、人工知能の可能性をこう述べる。

「暗記する、分析するといった人間の頭脳を使った業務は、いずれAIが追い越していく。いわゆるホワイトカラー業務と言われるジャンルは、人工知能が人間に取って代わる可能性が高い」

 人工知能の台頭による“テクノ失業”には不安の声も上がる。が、河氏はこう解説する。

「現段階では、人間の判断材料を人工知能が支援するといった側面が強い。不必要な作業を減らし、経費削減や労働力不足の解消をするBtoBサービスを中心としたAIの活用は、ビジネス的な課題克服のカギといえるでしょう」

◆インフラ保全にAIが真価を発揮する!?

 では、人工知能でさらなる盛り上がりが期待される最有力業界とはなにか。河氏の分析はこうだ。

「インフラ保全、医療の分野では、市場規模が急拡大することが予想されます」

 老朽化インフラの保全は国の緊急課題。政府が掲げた「インフラ長寿命化基本計画」によると、老朽インフラ維持管理市場は’14年には2兆円程度だったが、’20年には16兆円、’30年には33兆円に拡大するという。

「人間による目視点検から、ドローンで集めた画像を人工知能に解析させ、過去の画像と照合して施設の劣化状態を診断する。このような効率化が期待できる」(河氏)

 期待感は市場にも反映されている。土木管理総合試験所は、6月に年初来高値を更新したばかりだ。

「道路・軌道の路面下ビックデータ共有システム『ROAD-S(ロードス)』の開発を発表したことが買い材料視されました。インフラの老朽化は世界的な問題。これは将来、大化けが狙えるかもしれません」(藤井氏)

 医療分野では膨大な量の論文を人工知能に学習させ、ディープラーニングの技術を用いてCTやMRIなどの画像データから疾患を発見する技術開発が見込める。

「ここでもデータや画像解析を人工知能が下処理をして、医師の業務をサポートする。移動が困難な高齢者や医師不足で診察を受けられない地域に住む患者への遠隔診断も可能にします。また人工知能を使った見守りサービスなど介護でも活用が期待されます」(河氏)

◆次の波は音声機能!? 有力プラットフォームが続々参戦

 AI単体のサービスとしては、人工知能を搭載した音声認識機能を備え、話しかけるだけで操作できる「AIスピーカー」は今年最注目市場である。

「米ネット通販大手アマゾン・ドット・コムの『アマゾン・エコー』や、それに追従するグーグル社の『グーグルホーム』の人気を受けて、ベンチャー企業も多く参入してきました」(河氏)

 総務省も海外勢に対抗し、日本語の会話システムを官民共同で開発する方針を明らかにした。次世代の高速通信規格「5G」にも対応し、実証実験は来年度から開始され、’20年度の実用化を目指すという。

 具体的な有望株として藤井氏は、オンキヨー、アドバンストメディア、フュートレックなどに着目している。

 人工知能やロボティクスにこれまでにない市場の関心が高まるなか、藤井氏は冷静な分析を下す。

「マーケットの関心は高いが、新味には乏しくなってきている。各企業が人工知能絡みのリリースを出すと、一時的にはマーケットは反応するが、一過性のもので終わってしまうことが多い。株式を購入する際には、この視点は持っておきたい」

 6月にはホットリンクが東京大学らと共同で、人工知能を用いたソーシャルメディア上のビッグデータ解析を発表したが、市場の反応は短期的だった。

「現段階では、人工知能の導入による業務の改善や収益がハッキリと見えていない。ただし人工知能やロボティクスは第四次産業革命と言われる大きな潮流。長期的に見ればポテンシャルの高い投資テーマなので、調整局面で仕込んでおいて、再び活況になってから売るのも良い作戦ですね」(藤井氏)

◆長期保有ならグーグル、アマゾン、アップルが鉄板か

 AIの覇権を世界的に見ると、開発をリードしているのは、グーグル、アマゾンやアップルといった米国のプラットフォーマーだ。よって、初心者はひとまず大手IT企業の銘柄を中心に長期保有を狙うのも一つの手といえよう。

 2045年には人工知能が人間の知性を超え、テクノロジーの進化スピードが無限大になる「シンギュラリティ」が到来する――天才未来学者のレイ・カーツワイルの予言は果たして現実となるのか。人間が人工知能に取って代わられると見るか、より高次の課題に取り組むチャンスと捉えるか、今こそ人間力が問われている。

<先物買いが吉? 注目のAI関連銘柄10選>

・メタップス【東マ・6172】

目標株価 5000円

株価 3900円

売買単価 100株

今年の3月にはビッグデータ解析とAIを活用した融資プラットフォーム「LENDIA(レンディア)」のリリースに先立ち、金融機関の事前パートナーの募集を開始した

・ユーザーローカル【東マ・3984】

目標株価 11000円

株価 8750円

売買単価 100株

3月に新規上場。人工知能を活用した自動応答システムであるチャットボットを提供し、顧客サポート業務効率化。ヘルプデスク業務に特化した設計の自動学習機能で解答精度を向上させる

・フロンテオ【東マ・2158】

目標株価 1000円

株価 791円

売買単価 100株

法的訴訟時の証拠保全等電子データ収集、分析等コンピュータ解析事業が主。人工知能「KIBIT(キビット)」を開発し、ヘルスケアなど他分野でも展開を開始している

・フォーカスシステムズ【東マ・4662】

目標株価 1400円

株価 1101円

売買単価 100株

病院経営、医療現場の意思決定といった医療事業分野で人工知能研究を用いるため、共同研究を去年の6月から開始。株価は急伸した’01年来の高値圏から一旦反落したが再動意

・シグマクシス【東マ・6088】

目標株価 1100円

株価 865円

売買単価 100株

三菱商事系の新興コンサルで人気銘柄のひとつ。7月には深層学習で精度を高めたドキュメント自動入力サービス「ディープシグマDPA」を発表、クラウドで提供を開始した

・ホットリンク【東マ・3680】

目標株価 800円

株価 628円

売買単価 100株

東京大学と電通の企業広報戦略研究所と社会的合意形成・政策形成について、人工知能を用いたソーシャルメディア上のビッグデータ解析の活用を目指す共同研究を開始

・PCIホールディングス【東マ・3918】

目標株価 3500円

株価 2713円

売買単価 100株

自動車、家電などの組み込みソフトウェアの開発を手掛けている。通信、情報家電、産業機械向けも強い。かねてより自動運転関連やIoT関連として認識されている銘柄

・アプリックス【東マ・3727】

目標株価 650円

株価 493円

売買単価 100株

IoT用のアナログ半導体を世界で初めて開発、赤字脱却に向け、IoT搭載の浄水器や空気清浄機を拡販へ。疑義注記銘柄だが、黒字化期待で株価が物色される可能性も

・土木管理総合試験所【東一・6171】

目標株価 2200円

株価 1717円

売買単価 100株

人工知能を活用したインフラ保全分野での「ど真ん中銘柄」。地中情報のビッグデータ共有システム「ROAD-S(ロードス)」を開発。豊洲市場への移転に絡み関連銘柄としても注目される

・オンキヨー【JQS・6628】

目標株価 350円

株価 278円

売買単価 100株

老舗音響メーカー。今年6月にはiPhoneのSiri(シリ)に対応したスピーカーフォン「RAYZ Rally(レイズ・ラリー)」を発売。AIスピーカー関連銘柄として物色されている

【河 鐘基氏】

ロボティア代表。テクノロジー専門ウェブメディア「ロボティア」を運営。近著に「AI・ロボット開発、これが日本の勝利の法則」

【藤井英敏氏】

カブ知恵代表。日興証券、フィスコを経てカブ知恵を設立。大型株から超小型株、IPOまで幅広く監査し、投資情報を提供

取材・文/アケミン

ハーバー・ビジネス・オンライン