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ETF買い増しから1年 引けぬ日銀に不安(渋沢健)

8/8(火) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 日銀が上場投資信託(ETF)の年間買い入れ総額を6兆円へとほぼ倍増する追加金融緩和策を決定してから1年が過ぎた。日銀によるETFの保有残高は約15兆円に膨らみ、株価下支えの効果は一定程度あったとみられる。ただし、肝心の物価目標は未達のうえ、むしろ株価形成のゆがみなどの副作用が目立ち、「出口」が見えなくなっている。
 2008年のリーマン・ショックを節目に、先進国の中央銀行の役目が変わったといわれている。従来の役目とは、物価および金融システムの安定だ。その安定化の手段とは政策金利を定めることにより、市場の短期金利を誘導し、間接的な介入で民間の資金フローの調整を促すことであった。

■日銀のETF購入は株価上昇には効果

 ところがリーマン後、先進国の中銀は政策目標を金利からマネーの量に切り替える量的金融緩和に乗り出した。短期金利がほぼゼロとなり、下げ余地がなかったからである。中でも日銀は13年4月、黒田東彦総裁が「量的・質的金融緩和」、いわゆる「異次元緩和」を導入。2年間で前年比2%の物価上昇率を目指し、国債に加えETFなどリスク資産も買い増すという大胆な金融緩和策を開始した。これについて、黒田総裁は「資産価格のリスクプレミアム(リスクに応じた資産価格の割引幅)に働きかける」と説明。中銀の役目が従来の間接的な介入から、価格に直接介入する政策に転じた瞬間であった。
 ETFの買い増しもそうした政策の一環で、昨年7月29日の金融政策決定会合で決定した。以来、購入額は段階的に拡大。日銀の営業毎旬報告によると、ETFの保有額は当時の約9兆円から足元では約15兆円へと増加した。
 市場では相場が下落するたびに日銀の買いが意識され、株式を売り込みにくい雰囲気が醸成された。日経平均株価は買い入れ増の決定前日(昨年7月28日)の1万6476円から現在は2万円前後で推移しており、株価上昇については効果があったと判断される。
 ただ、公約した2%の物価目標が狙い通りにならない。今年7月20日の金融政策決定会合では物価目標の達成時期を、従来から1年先送りすることを決めた。異次元緩和の開始以来、目標達成の先送りは6回目だ。ETF買い入れ増以外にも、16年1月に「マイナス金利」、同年9月には長期金利をゼロ%程度に誘導する「イールドカーブ・コントロール」を導入した。物価目標の達成がままならない中、「異次元」はどんどんと深まり、「出口」が全く見えなくなっている。それが現在の状況といえる。
 このような状況で、再び市場が「ショック」に脅かされたら、日銀の政策ツールは何になるのであろうか。これは、日銀内部でも相当な懸念事項になっているのではないかと推測する。

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最終更新:8/8(火) 7:47
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