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「汗かき下手」は肌トラブルのもと 汗の意外な役割

8/8(火) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 連日厳しい猛暑が続く今夏、例年以上に「汗」が気になる人も多いのではないだろうか。汗をかくとアトピー性皮膚炎のかゆみが増したり、あせもや炎症などの肌トラブルにつながることが少なくない。しかし、汗は本当に悪者なのだろうか? 夏になると気になる汗と皮膚の関係について、大阪大学医学部皮膚科学教室准教授・室田浩之さんに聞いた。

――暑くなると大量に汗が出てうっとうしいものですが、汗は体にとって大切な役割を果たしているのですよね。まずはご専門の皮膚と汗の関係から教えてください。

 診療でお会いする多くのアトピー性皮膚炎の患者さんも「汗をかくと気持ちが悪い」、そして「ものすごくかゆい」と訴えます。そのため、従来、汗はアトピー性皮膚炎の悪化因子と考えられてきました。臨床現場でも汗をかかないよう指導する医師が多かったのですが、短絡的に「汗を避けるべき」という指導では、患者さんの生活はとても制限されてしまいます。そこで私はエビデンス(科学的根拠)に基づく適切な指導をしたいと汗の研究を始めました。そして、多方面の研究の蓄積もあり、近年、汗には様々な機能が備わっていることが分かってきました。

■明らかになってきた汗の役割

――具体的にはどんな機能があるのでしょうか?

 まず、汗には「体温調節」の機能があります。例えば体重70kgの人が運動などで上がった体温を1度下げるには、100mLの汗をかくことが必要で、皮膚表面に出た100mLの汗全てが蒸発する気化熱で体が冷やされることによってようやく1度下げられます[注1]。通常、健康であれば環境と体温上昇に応じて、暑い日にはその分たくさん汗をかいて体温調節をしているのですが、少しでも汗をかきにくい状態になると容易に体温が上がりやすくなり、うつ熱(体内に熱がこもる状態)や皮膚温の上昇が生じ、熱中症のリスクにもつながります。

 2つ目に、汗には「保湿」作用もあります。汗の中には乳酸ナトリウム、尿素など、水と親和性の高い天然保湿因子が含まれています。皮膚の保湿にはこういった汗の成分が大きく貢献しており、汗をかけない人はドライスキン(乾燥肌)になっていきます。

 3つ目に、汗の中には抗菌ペプチドなどの「生体防御」に関わる物質も含まれています。抗菌ペプチドは皮膚表面で悪影響を及ぼすバクテリアの細胞膜に付着して、その発育を抑えます。皮膚表面でもいわば善玉、悪玉というような各種の菌が共生していますから、汗がきちんとかけるということは、適切な菌の発育に貢献し、細菌叢(そう)のバランスを整えるのに重要だと考えられます。

 さらに、アレルギーの原因となるダニなどの抗原は、プロテアーゼと呼ばれるタンパク分解酵素を持っていて、タンパク質を溶かすことで皮膚に入り込み炎症を引き起こすのですが、汗にはこれらのタンパク分解酵素を抑える作用があることが報告されています(抗原失活)。ですから汗をかくことで、アレルギーの原因となる抗原の悪影響も、ある程度抑えられるのではないかと考えられます。

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最終更新:8/8(火) 7:47
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