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バランスシート圧縮に動くFRBのポートフォリオ変化と政策効果

8/8(火) 8:30配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

FRBが9月にもバランスシート圧縮の開始を正式に発表するとの観測が広がるなか、その金融市場への影響が注目されている。FRBが今まで進めてきた保有財務省証券の平均年限の短縮化と、今後始める保有財務省証券の削減とは、FRBの研究成果も踏まえると、長期金利のタームプレミアムを押し上げるという点において、同質の影響を財務省証券市場に与え、同質の政策効果を生むと解釈できる。政策効果の源泉である金利(タームプレミアム)への影響を考えれば、バランスシート圧縮は従来の政策の延長線上にあり、非連続的な効果を生むものではない。この点から、FRBのバランスシート圧縮が金融市場及び経済に与える影響を過大評価すべきではないだろう。

「バランスシート圧縮策」が緩和効果縮小の始まり

FRB(米連邦準備制度理事会)が、9月にもバランスシート圧縮の開始を正式に発表するとの観測が広がるなか、その金融市場への影響が注目されている。一般に中央銀行の国債買入れ政策は、長期金利のタームプレミアムの低下を通じて、政策効果を発揮するものと考えられている。タームプレミアムとは、名目長期金利のうち、中長期の予想物価上昇率と実質短期金利予想(政策金利の予想)で説明できない部分全体を指す。このタームプレミアムへの影響は、中央銀行がどの程度の国債を保有するかで決まるという、いわゆる「ストックビュー」に基づけば、(1)国債買入れ増加額のペースを縮小する(国債保有の増加は続く)、いわゆる「テーパリング」は、タームプレミアムを押し下げて需要を刺激するスピードを落とす政策であるのに対して、FRBが間もなく実施しようとしている(2)「バランスシート圧縮策」は、タームプレミアムを押し上げて、需要刺激効果を縮小させる政策である、と整理できる。この観点からは、2014年にFRBが始めた「テーパリング」ではなく、この「バランスシート圧縮策」こそが、緩和効果を縮小させる国債買入れ策の正常化の始まり、との解釈もできるだろう。この考えのもとでは、金融市場がその影響に神経質になるのは当然のことである。

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