ここから本文です

労働力不足時代には最低賃金の引き上げが合理的

8/8(火) 11:20配信

Wedge

 前回、『弱者保護が弱者を困らせる可能性を考える』を掲載した際、「最低賃金制度については、他の弱者保護よりは考えることが多そうです」と記しました。そこで今回は、最低賃金制度について考えてみましょう。

一般論として、最低賃金制度は失業を増やす

 最低賃金制度ができる前、安い賃金でも働きたい人と安い賃金で雇いたい会社が合意して雇用契約が結ばれていたとします。そうした時に最低賃金制度が出来ると、安い賃金でも満足して働いている人が、「残念だが、今後は雇えない」と言われて、失業してしまうかもしれません。

 「安い給料でこき使われる可哀想な労働者を保護してあげよう」という暖かい心で作った制度が、むしろ弱者を困らせることになりかねないわけです。文字通りの意味で「情けは弱者のためならず」というわけですね(笑)。

 ここまでは前回の復習ですが、最低賃金制度については、それほど単純な話ではありません。第一に、労働者階級全体としてプラスの効果があるならば、悪法とは言えないからです。

本当に可哀想な人は生活保護で救うという選択肢も

 労働者階級全体への影響がプラスか否かは、労働市場の需要曲線と供給曲線の傾きによって決まります。場合によっては、大幅に賃金が上昇する一方で失業者は少ししか増えない、という場合もあります。数値例で考えてみましょう。

 時給1000円なら働きたい人が10人、雇いたい会社が6社(1社あたり1人。以下同様)、900円なら働きたい人が8人、雇いたい会社が8社だとします。最低賃金法がなければ、900円で8人が雇われます。最低賃金が1000円に定められると、6人だけが雇われて、4人が「働きたいのに仕事がない」ことになります。しかも労働者階級全体の賃金は7200円から6000円に減ってしまいます。こうした場合には、最低賃金法は有害でしょう。

 時給1000円なら働きたい人が10人、雇いたい会社が6社、300円なら働きたい人が8人、雇いたい会社が8社だとします。最低賃金法がなければ、300円で8人が雇われます。最低賃金が1000円に定められると、6人だけが雇われて、4人が「働きたいのに仕事がない」ことになります。しかし、労働者階級全体の賃金は2400円から6000円に増えます。こうした場合には、最低賃金法は有益でしょう。300円でも働きたかった2人は失業して可哀想ですから、生活保護で300円ずつ払ってあげましょう。

 実際には、労働者は「失業しているよりは、安い時給でも働きたい」と考えるでしょうから、後者のようなケースがあり得るのでしょうね。だからこそ、最低賃金法が必要だ、というわけですね。

1/2ページ

最終更新:8/8(火) 11:20
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2017年9月号
8月19日発売

定価500円(税込)

■特集  捨てられる土地
・所有者不明だらけの日本国土
・所有者不明土地が招く空き家問題
・登記義務化と利用権制限 次世代のための制度改革を