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「映画の色表現」は、100年でここまで進化した

8/8(火) 7:30配信

WIRED.jp

1938年に公開された映画『オズの魔法使』で、主人公のドロシーがカンザスから魔法の国へと旅に出て以来、観客たちにとってカラー映画は当たり前のものとなった。

名作の数々の一場面とともに見る「映画で表現される色」の進化

たまの楽しみに映画館に足を運ぶ程度の映画ファンは、ギンガム・チェックの服を着たジュディ・ガーランドがセピア調の家を出て、色鮮やかで緑に満ちたオズ王国に足を踏み入れたのが、最初の、そして最後の、偉大な一歩だと思っているかもしれない。

しかし実際には、ドロシーが真っ赤な靴で歩きはじめるずっと前から、そしてその後も、映画着色の専門家たちが活躍していた。彼らは銀幕にいきいきとした色合いをもたらすために走り続けてきたのである。

フィルムに着色する時代が始まりだった

事の始まりはシンプルだった。フィルムをもってきて、そこに色を塗っていたのだ。世紀の変わり目に始まったこの試みは、夢のように豪華な効果をもたらしたものの、あまりにも時間がかかりすぎた。そこで映画製作者たちは、手間のかからない方法を模索した。目の錯覚を利用した「キネマカラー」の誕生である。

この技術は、赤と緑に色付けされたフレームを交互に表示することで、目の錯覚によってフルカラーに近い色を表現するものだ。しかし、どんなに画面をチカチカさせてみても、元からない色を見せることはできなかった。キネマカラーは青色を映すことができなかったのだ。

結果として台頭してきたのが、「テクニカラー」である。これが映画ファンにオズ王国を見せるために使われた技術だ。フレームの色を交互に入れ替える手法とは異なり、テクニカラーは、3本の個別のフィルムに赤、緑、そして青の映像を記録し、それらを同時に上映することで一本のフルカラーの映像として見せていた。

デジタル時代の到来と「HDR」の効果

1990年代に入ると、映画業界ではさまざまなものごとがデジタル化されていった。着色も例外ではない。いまでは映画で表現される色合いは、ポストプロダクションの段階で細かくデジタル技術で調整されている。コーエン兄弟による『オー・ブラザー!』のくすんだ彩度の低い映像が証明しているように、この技術のもたらす自由度は驚くべきものである。

この映画で1930年代のディープサウス(アメリカ最南部)の雰囲気を表現するために使われた技術は、たとえば『ドクター・ストレンジ』の神秘的で万華鏡のようなアクションをレンダリングする際に使われた技術に比べれば、まだまだ単純なものにすぎない。だからこそ、テクニカラー社の最終工程監督技術者であるスティーヴ・スコットは、『ドクター・ストレンジ』に、「HDR」(ハイ・ダイナミック・レンジ)という最新技術を導入したのである。

露出の異なる複数の映像を合成するこの技術によって、映画製作者は幅広い明るさの光を表現できるようになる。暗いものをより暗く、明るいものをより明るく表現できるようになるのだ。たいしたことではないように聞こえるかもしれないが、実は視覚効果オタクにとっては大興奮の材料なのである。「この業界に入って以来、私が目にした最も大きな進化です」と、スコットは語る。

まだ新しい技術であるHDRは高コストなため、身近な映画館に導入されるまでには、まだ少し時間がかかるかもしれない。だが、これさえも色彩の最後のフロンティアではないだろう。どこかで誰かが、観客に「完璧な光景」を見せる方法を思い描いているかもしれないのだ。

EMMA GREY ELLIS

最終更新:8/8(火) 7:30
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