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ネイマール、昨季中から水面下で進行したPSG移籍。290億円のパリ行きでFFPは?

8/8(火) 11:58配信

フットボールチャンネル

 バルセロナからパリ・サンジェルマンへの移籍が決まったブラジル代表FWネイマール。2億2千万ユーロ(約290億円)という驚愕の移籍金が動くことになった今回の電撃移籍はどのように進んでいたのだろうか。また、とてつもない金額を拠出したパリはファイナンシャルフェアプレー(FFP)による制裁を科されないのだろうか。(取材・文:小川由紀子)

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●着々と水面下で進んでいたネイマールのパリ移籍

 ネイマールのPSG移籍が実現してしまった。

 前々から噂はあった。その噂もこの夏は、より一層、現実味を帯びていた感じはあった。それでも数週間前にフランスのスポーツサイトで見たアンケート結果では、『ネイマールのPSG入りは実現する』と答えていたのは20%にも満たなかった。期待はしつつも、『絵に描いた餅』、そんな印象を多くの人がもっていたのだ。

 しかしPSGの親方カタール勢は、以前からネイマール獲得に必死だった。正確には、ネイマールを筆頭にクリスティアーノ・ロナウド等、とにかく“トロフィ・プレーヤー”と一般的に言われる、名実ともにトップクラスで、いるだけでクラブに箔がつく超ビッグスターの獲得に躍起だった。

 昨シーズンは若手集団のモナコにリーグタイトルを奪われたばかりか、追いつけ追い越せを目標としているFCバルセロナと対戦したチャンピオンズリーグ、ラウンド16でも、ホームで4-0と快勝しながらカンプノウで6-1と大敗、世紀の大逆転劇で敗退を喫するというとてつもない屈辱を味わった。

 オーナーたちは「いくら使ってでもいいからネイマールを連れてこいっ!」とアル・ケライフィ会長に発破をかけたことだろう……。

 PSGのプレスルームには、常連のアラブ系記者グループがいて、彼らはカタール筋に関して独自の情報を持っているのだが、その中の一人ナセールが4月頃だったか、こんなことを言っていた。

「ネイマール側は先日カタール王室のメンバーと面会したと王室に近い筋から聞いた。すでになんらかの約束を取り付けたそうだ。私は来季(17-18シーズン)のネイマール加入はかなり高い確率であるとみている」

 その時は半信半疑だったが、これまでも的をつくことの多かったナセール情報。ひょっとしたら?と思ったら、現実のものとなった。アラブ・コネクション恐るべしだが、やはり着々と、水面下でネイマール→PSG構想は進んでいたのである。

●日給1000万円を上回る給料水準に

 ネイマール加入の影響は、PSGのみならずフランスサッカー界にとって絶大だ。PSGの欧州での躍進や、モナコのキリアン・ムバッペの登場などでここ最近、飛躍的に国際的な知名度を上げているリーグアンにとって、世界屈指のスーパースターの参入は願ってもない追い風。

 ネイマールがバルセロナに支払う契約解除金をPSGが肩代わりすることを、スペインのリーガ側が無効にしようとすると、フランスのプロリーグ協会(LFP)はすぐさま、PSGをバックアップするという主旨のカウンター声明を出した。

 テレビ放映権やスポンサーマネーの増加も見込めるし、満席になることは滅多にないリーグアン各クラブのスタジアムも、12-13シーズン後半のデイビッド・ベッカム旋風以来の満員御礼を拝めることだろう。(イブラを擁してタイトル4連覇していた頃でさえ、PSGのホームであるパルク・デ・プランスは満席にはならなかった)。

 それにフランス国としても、高額納税者は大歓迎だ。

 PA(プレス・アソシエーション)の報道によれば、ネイマールはPSGで週給60万ユーロを受け取ることになるという。英メディア、イブニング・スタンダードに面白い記事があった。この数字をもとに計算すると、ネイマールの給料は、
毎秒 127円
毎分 7702円
時給 462167円
日給 11091716円
週給 77647386円
月給 336439322円
年棒 4037496492円
になるという。

 年棒になると額が大きすぎてもはやピンとこないが、日給1000万円以上、というのはとんでもない額である。このオファーを断るのは難しいだろう。それは「金が大事」だから(だけ)ではない。これだけの額で自分は評価されている、という、これは己の評価額だからだ。

 巨額の違約金を払い、莫大なサラリーを用意してまで自分を欲しいと言ってくれるクラブに、選手の心は動く。それに、どんなクラブも、スーパースターが抜けたところで、一時的な低迷はあっても、結局は回っていくのだ。

 仮にトッティがローマを去っていたとしてもおそらく同じだったろう。それを選手はよく知っている。ならば、価値の高いうちに、高く評価してくれるところへ動きたいと願っても不思議ではない。

 しかも、中国リーグへの移籍のように、「巨額のサラリーを受け取るかわりに、欧州チャンピオンズリーグといった栄光のステージとは別れを告げる」という苦渋の選択も必要ない。躍進中のPSGともに、欧州の一線でビッグイヤーを目指せるのだ。

●ファイナンシャルフェアプレー上の問題は生じないのか

 しかしながら、昨年夏の、ポール・ポグバのマンチェスター・ユナイテッド移籍時の世界最高額1億500万ユーロの軽く倍をいく2億2200万ユーロという金額が物議を醸さぬわけはなく、『Neymar PSG FFP』と検索にかければ、『UEFAがネイマールのPSG移籍について調査に乗りだす模様』「どうなってるんだFFP?』といった各国メディアの見出しがずらりと並ぶ。

 実際、今回の移籍金がどうファイナンシャル・フェアプレー(FFP)に影響するかは、来秋にならないと判明しない。FFPのチェックは3シーズンごとに行われ、次回は15-16、16-17、17-18シーズン分がワンセットとなる。

 さらに移籍金は契約年数で割って1年分として計上するため、ネイマールの移籍金が5年契約の2億2200万ユーロだったとして、17-18シーズンの支出に加えられるのは、5分の1の4400万ユーロ分のみだ。

 それを含めた総支出を補えるだけのスポンサーマネー等の純利益があればいいわけだが、PSGの予算の約3割を占める大口スポンサー、QTA(カタール・ツーリズム・オーソリティ)は昨年夏に、1年あたり1億7500万ユーロを供給するという破格の新契約を発表したばかり。

 ネイマール効果でマーチャンダイズの売り上げも急増する。仮に、FFPが定める3シーズンの赤字限度額3000万ユーロを超えることになっても、6000万ユーロの罰金プラスいくつかの制裁で逃げ切った前回(2014年)のような抜け道を考えているのかもしれない。

 世界中のフットボール選手を管理する世界選手組合FIFProが、一部の金満クラブによる高額移籍がフットボール界全体に与える影響について欧州委員会に調査を依頼するなど、この移籍についてはまだまだ波紋は続きそうだが、ネイマールのPSG入団に支障はない。

 間もなく、紺地にエッフェル塔のエンブレムがついたPSGのシャツに身を包んでプレーする彼の姿をピッチで拝めることだろう。ちなみに今季のPSGのアウェー用ジャージは、セレソンと似た黄色だ。チアゴ・シウバやマルキーニョスに加えてダニ・アウベスにネイマールと、ブラジル人所帯の拡大を見越したような選択だ。

 個人的には、ネイマールの成長をまだバルセロナで見ていたかったから残念な思いもあるが、彼のおかげで今季のリーグアンが盛り上がるのは間違いない。

 初戦を3-0の勝ち星で飾った酒井宏樹所属のマルセイユもかなり良い具合に仕上がっている印象だし、話題性のあるシーズンになりそうだ。

(取材・文:小川由紀子)

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