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五輪にも「ミニ競技」の波 若者の好み、スマホも意識

8/9(水) 7:47配信

NIKKEI STYLE

 通常のルールより人数や試合時間を縮小した新種目が続々登場している。2016年リオデジャネイロ五輪では15人制ならぬ7人制ラグビー、20年東京五輪では5人制ならぬ3人制バスケットボールが新たに採用された。競技団体も新種目の開発に積極的に動いている。キーワードは若者に訴える「手軽さ」や「スピード感」。選手の報酬などで本家の種目をしのぐスポーツも出てきている。
 「歴史的な日になった」。6月上旬、国際バスケットボール連盟のバウマン事務総長は、東京五輪で3人制が採用されたことを喜んだ。
 遊び心のあるプレーが多く、1試合10分というテンポが若者に受ける。国際オリンピック委員会(IOC)は他競技の「ミニ版」にも興味津々だ。16年リオデジャネイロ五輪からは7人制ラグビーが正式競技に仲間入り。14~18歳によるユース五輪でも14年南京大会から5人制ホッケーを導入した。
 7人制ラグビーはスコットランドのクラブが収入増のために1883年に始めたのが最初。3人制バスケも1980年代に米国にプロリーグが存在した。こうした自然発生的な“第1世代”と違い、近年は競技団体が考案する例も増えている。
 先進国で競技離れが進むゴルフ。欧州ツアーが5月に始めたのが6ホール制の団体戦だ。一部ホールでは時間を計り、30~40秒内に打つよう促す。同ツアーは「次世代の人にも楽しんでもらうため、ゴルフは時代に合わせて刷新する必要がある」とする。テニスでは全豪オープンの主催者が15年に1セット4ゲーム先取(通常は6ゲーム)の新大会を創設。国際卓球連盟が昨年開発した新ゲーム「TTX」は、大きめのボールで2分間の3ゲーム制で行う。
 ミニ版の多くはある成功例をモデルにする。旧英連邦や南アジアで圧倒的人気を誇るクリケットだ。簡易版でも1試合に約7時間かかるが、03年に「トゥエンティ20」という2時間半の種目が誕生。テレビ放送しやすくなり商業化も加速した。
 「当初、こんなものはクリケットじゃないと言われたが、収入や選手報酬のアップで認知されるようになった」。日本クリケット協会の宮地直樹事務局長は言う。インドのプレミアリーグはアジア屈指のプロスポーツに成長。一部のスター選手は年収2000万ドルと言われる。
 ビジネスとして成長するミニ版に有力選手も流れ出している。7人制ラグビー強豪国の代表チームは、既に15人制をプレーしない専門の選手が大半。日本ラグビー協会も先月、初の7人制専任として鶴ケ崎好昭(パナソニック)と契約した。3人制バスケも「5人制の代表経験者の参戦が増えるだろう」と日本バスケットボール協会。クリケットではトゥエンティ20への大会を優先し、伝統的な形式の代表戦への出場を拒む選手さえいる。
 根底にあるのは、スポーツを「より速く」「分かりやすく」という流れ。米国では五輪のテレビ視聴者が激減し、欧州でもサッカーのテレビ視聴者は減少傾向だ。スマホでスポーツを見る人が増え、若者の心をつかむことが生き残りのカギを握る。
 野球で無死一、二塁から攻撃を始めるタイブレークの導入が始まり、サッカーで60分制への変更が議論されるのも同じ流れの中にある。テレビがスポーツを大きく変えた20世紀後半以来の激動期が今、来ているのかもしれない。
(谷口誠)
[日本経済新聞朝刊2017年7月25日付]

最終更新:8/9(水) 7:47
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