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なぜ第二次大戦が開戦したとき、ドイツ海軍の戦争準備は全く整っていなかったのか?

8/9(水) 12:00配信

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深海の灰色狼。第二次世界大戦で大西洋において連合国側を戦慄させたドイツ海軍の潜水艦「Uボート」にまつわる物語をオムニバス連載で紹介する。

不備だったドイツ海軍の準備、そして重用されることとなった「深海の灰色狼」Uボート

 1939年9月1日、ドイツがポーランドへと侵攻して第二次大戦が勃発した。だが、ドイツ3軍の全てが臨戦態勢にあったわけではない。特に艦艇の建造に時間がかかる海軍は、開戦の準備が著しく遅れていた。
 というのも、海軍総司令官エーリヒ・レーダー提督(元帥)は、関係が良好だったアドルフ・ヒトラー総統から、ドイツは1944~5年頃までは開戦しないのでそれまでの間に、充実した海軍軍備を整えられると伝えられていたからだ。
 ところがこの話より約5年も早く開戦してしまったので、海軍の戦争準備は全く整っていなかった。

 ドイツ海軍は第一次大戦時以来、イギリス海軍を仮想敵としてきた。当時は植民地大国であったイギリスにとって、全世界をネットワークしたシー・レーンはまさに生命線であり、強大な海軍力を整えてその防衛に力を注いでいた。
 これに対してドイツは大陸国家であるため、シー・レーンへの依存度はイギリスほど高くはなかった。そこでイギリスのグランドフリート(大艦隊)には自国のホッホゼー・フロッテ(大海艦隊)をぶつけ、シー・レーンの遮断には巡洋艦やレイダー・シップ(仮装巡洋艦)、Uボート(潜水艦)などを投入して通商破壊戦を行うという「2本柱」の戦略を考えていた。

 しかし第一次大戦に敗北した結果、ホッホゼー・フロッテの各艦は自沈。ドイツは軍備を著しく制限され、特に海軍の軍艦保有隻数の制限は厳しいものとなった。
 第二次大戦前に再軍備化を宣言したドイツにおいて、レーダーはこの状態からの脱却を図っていたのだが、戦艦や重巡洋艦といった大型水上戦闘艦の建造には時間もコストもかかるため、既述のごとく間に合わなかった。

 かくて対イギリスの「2本柱」のうちの1本が行えない以上、せめてもう1本を行って戦うしかない。そこでドイツ海軍は、通商破壊戦に適した艦種として戦間期に建造された装甲艦のほか、レイダー・シップ、駆逐艦、Sボート(高速魚雷艇)などを用いてシー・レーン遮断のための通商破壊戦を展開したが、その一端を成していたのが、のちに「深海の灰色狼」の異名で畏怖されることになるUボートであった。

◎次回は8月16日(水)に配信予定です。

文/白石 光

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