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オタクが才能を発揮できた素晴らしき時代。いま日本人が学びたい、ルネサンス美術【ヤマザキマリさん】

8/9(水) 21:10配信

エイ出版社

いまもう一度、「ルネサンス」を見直したい理由

ルネサンス。多くの人は、中学や高校の授業で習ったな……という記憶を思い返すに違いない。といって、同時に「ルネサンスとは?」なんて聞かれると、しどろもどろになる、という人も少なくないのでは?

実は日本にはルネサンス美術の名作を見ることができる美術館が多くある。さらにいうなら、ルネサンスはいまアートの世界で注目度の高まっているジャンルだ。イタリアで10年間美術を学び、漫画『テルマエ・ロマエ』『プリニウス』など古代ローマをテーマとした作品で知られるヤマザキマリさんに、ルネサンスの魅力について伺った。

ルネサンスの画家は今でいう『オタク』だった

ヤマザキさんは、「ルネサンスは既成概念という縛りを解く力、改革的精神だと思う」という。「そういった改革精神を持った人を支えられる、経済力が大きく動いていた時代がルネサンスという時代だったと思います」

ヤマザキさんがマンガというツールを通じて表現したいと願っている、古代ローマ世界や古代ローマ人の幅広い精神性。ルネサンス時代に古代ローマの発掘品から触発された表現者達と共通している意欲と言えるかもしれない、という。自身が描く古代ローマをテーマとしたマンガに、同じイタリアのルネサンスの画家から受けた影響についてたずねると、こう答えた。

「『テルマエ・ロマエ』の主人公ルシウスやハドリアヌス帝、またプリニウスも、要は今でいうボーダーレスなマニアック人間だと言えますが、世間体に縛られず自由な探究心を謳歌していた人々をとにかく描きたかったんです。まわりから白い目で見られることがあっても屈せず、技術や知的探究心といった人間の可能性へかける意欲が逞しい。得意なことを謳歌した結果、後の人々に多大な影響力を及ぼすことができたという姿勢はマンガという媒体を使って、それまで西洋史に興味の無い人も含め、多くの人に知ってもらいたかった点です」

突出したオタク精神を発揮できて、表現は進化する

ルネサンスの画家の中で好きな画家を聞いたところ、「記号的な宗教的モチーフに画期的な人間味を加えたジョットや、そのジョットからも影響を受け、さらにそこにダイナミックな動きと技術的な精巧さを加えて、古代ローマで表現されていた人間のかたちに近づけたマザッチョなど、既存の絵画論や法則にとらわれない斬新な発想を持った表現者達は沢山います」とおいてから、遠近法に拘り過ぎてしまったパオロ・ウッチェッロを挙げた。


「それまで職人として決められたレールの上を行くべき職種だった絵画の考え方を全く別のものとして捉え、実際その思いが作品にも露見しているわけです。微笑ましいと言うか、多分多くの画家にとってはどうでもいいことに執着している姿勢が頼もしい。そんな変わった人であっても仕事の依頼はあったわけですから、素晴らしい時代だったなと思います」

「やはり、今の時代に対しても言えますが、突出したオタク精神を発揮できる人が認められてこそ、表現はより進化していけるのだと思っています。ルネサンスのすごいところは、それにパトロン達も気付いていたということですね」

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最終更新:8/9(水) 21:10
エイ出版社

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