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「ヒトの胎芽」の遺伝子編集、米国で初めて成功──“スーパーベビー”は誕生するか

8/9(水) 12:13配信

WIRED.jp

2017年7月、米国初となる「ヒトの胚」を編集する実験の成功が明らかになった。遺伝子が起こす突然変異の修正は想像以上にうまくいったが、一方で想定外の失敗も生じているという。まだまだ遺伝子編集はわからないことも多い。果たして、遺伝子編集による“スーパーベビー”が誕生する日は来るのか。

世界初、DNA的に「3人の親をもつ赤ちゃん」

米国の科学者がゲノム編集技術CRISPRを使用し、米国内で初めて人間の胎芽を「編集」した──。英国のレポーターであるスティーヴ・コナーは、この巨大で真に迫る、非常に物議を醸すニュースを一刻も早く深掘りしていきたかった。そして、「“デザイナーベビー”への大きな一歩」というフレーズが、世界的なスクープとしてロンドンに拠点を置くオンライン新聞「i」の見出しを飾った。

それよりはるかに控えめな見出しではあったが、似たようなタイミングで似たようなレポートが「MIT Technology Review」にも掲載されている。しかし、同研究を説明する論文がまだ査読の段階にあったため、どちらのニュースにも実際の実験に関する詳細な情報はほとんど含まれていなかった。

そして8月2日の朝、『Nature』のウェブサイトに論文が掲載され、研究の詳細が発表された。そこからさらに膨大な議論が始まっている。

過去2年にわたり、研究領域を拡張している生殖生物学者のショウクラット・ミタリポフは、生存可能な胎芽に存在する遺伝的欠陥を修正する実験を通じて、オレゴン健康科学大学やサーク研究所、韓国の基本科学研究所の研究者たちをリードしてきた。

遺伝子「MYBPC3」の突然変異は、500人に1人が発症する肥大型心筋症として知られる心臓異常の原因となっている。これは若いアスリートに頻繁に見られる突然死の原因だった。この遺伝子に対して彼らはCRISPR-Cas9を使用し、58個の胎芽のうち42個について、異常をもつ遺伝子を通常の遺伝子と置き換えることに成功した。

これは人間の生殖細胞系統における同手法を使った実験としては最も成功した例だろう。突然変異を是正する仕組みは非常に効率的だったが、この結果はミタリポフやほかの人々も予測していなかったのだ。

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最終更新:8/9(水) 12:13
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