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「逃げ恥」族は本当に結婚を焦っていない

8/9(水) 15:15配信

プレジデントオンライン

生涯未婚率が上昇している。昨年、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』と『東京タラレバ娘』という、どちらも「結婚する/しない」という選択を描いた作品が放送された。同じように結婚を前に考え込む人々を描きながら、『逃げ恥』は評価され、『タラレバ』は批判された。家族社会学者の永田夏来さんは、その違いを「『結婚したくないわけではないが、どうするのかは場合による』と考える若者が増えているから」と読み解く。著書『生涯未婚時代』(イースト新書)から抜粋して紹介しよう。

 ※以下は永田夏来『生涯未婚時代』(イースト新書)の第1章からの抜粋です。

■『逃げ恥』はどこが斬新だったのか

 『逃げるは恥だが役に立つ』(以下『逃げ恥』)とは、『Kiss』(講談社)にて2012~17年に連載された海野つなみさんによる漫画作品です。2015年に第39回講談社漫画賞・少女部門を受賞して話題となり、2016年10月に系列でテレビドラマ化されました。内容としては基本的にラブコメディで、新垣結衣さんが演じる「職ナシ」「彼ナシ」「居場所ナシ」の主人公森山みくりを星野源さんが演じる「恋愛経験ナシ」のサラリーマン津崎平匡が「妻」として雇ったことを発端に話がスタートします。

 仕事として割り切った「契約結婚」だったはずの二人の関係が、いつしか恋愛に発展していくという展開で後半になるにつれて盛り上がりを見せ、第9話の総合視聴率では30.0を記録する大ヒット作品となりました。とりわけインターネットでの反響が大きく、番組のエンディング曲に合わせたダンスを様々な人が再現してYouTubeにアップしたり、平匡とみくりの恋愛関係の進展に一喜一憂する投稿がTwitterに数多く見られるなどの現象が起きています。

 私の友人たちの多くも、くっつきそうでくっつかない平匡とみくりに「ムズキュン」してTwitterにて大いに盛り上がっていました。しかし私が連載時からこの作品で面白いなあと思っていたのは、本作のもう一人のヒロインともいえるみくりの伯母、 土屋百合です。49歳で外資系の化粧品会社勤務、最終話には部長にまで昇進するキャリアウーマンという設定の彼女は、主人公であるみくりの最大の理解者として登場します。美人で若い頃からモテていたという百合ですが、実はこの年齢になるまで性交経験がないままに未婚というキャラクターです。

 この百合が一回り以上年下の男性から熱烈なアプローチを受け、年齢を理由に拒んだものの最終的にはその愛情を受け入れるという展開は本作のクライマックスの一つとなりました。「私たちのまわりにはたくさんの呪いがある」と百合は言います。作中で直接言及される呪いとは「女性は若い方が価値があり、49歳にもなって年下と交際するのは恥ずかしい」というようなものなのですが、しかし作品全体を俯瞰してみれば、「夫は外で働き妻は家庭を守る」という性別役割分業、 LGBTのカップル形成、「結婚には法的な結びつきが必要だ」という嫡出規範、「一つの会社に勤めあげることが当然だ」という終身雇用などが「呪い」として描かれているように感じられます。「そんな恐ろしい呪いからはさっさと逃げてしまいなさい」との百合の台詞はTwitterで大きな共感を呼びました。

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