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さらば、フロスト警部。人気シリーズ最終作『フロスト始末』上下巻 R・D・ウィングフィールド/訳・芹澤恵

8/9(水) 11:00配信

Book Bang

 本書は作者の死去の翌年に出版された遺作である。フロスト警部シリーズは二十三年間で六冊という寡作ぶりだったが、わが国でも一作目の『クリスマスのフロスト』がお目見えしたのが一九九四年であるから、やはり四半世紀近くをかけて全巻の翻訳がなったわけだ。下品なジョークや駄洒落、皮肉交じりの当てこすりが頻出するので、訳者も苦労されたに違いない。過去の五作品ともミステリー部門のベストテン投票で一位になっているのだが、芹澤恵の達意の翻訳がなかったなら、それだけの人気を得ることはなかったろう。

 切断された足首遺棄、乳児失踪、異物混入によるスーパーマーケット脅迫、レイプ犯の横行、少年少女の失踪、腐乱死体の発見……。人手不足のデントン警察管内で次々と事件が起き、フロスト警部が不眠不休で駆け回るという従来のパターンに加え、今回は彼を他の署に追い出そうという動きが具体化する。気弱でいつも丸め込まれるマレット署長が、首切り役としてスキナー主任警部を招いたのだ。さっそくスキナーはフロストの領収書改竄を発見。ついにフロストは首根っこを掴まれてしまう。しかもスキナーは捜査にも介入し、美味しいところだけ持っていこうとする。はたしてフロストの運命は……。

 これだけ重大事件が起きているのに応援が来ないイギリスの警察制度ってどうよ? と毎回思うのだが、それじゃあフロストの活躍は見られない。未成年者が犠牲になるエグい犯罪が多いのだが、それを中和するのがフロストの存在だ。また、亡き妻との不和を後悔するシリアスな述懐が多いのは、作者の病もあったためか。全シリーズが翻訳されたことは喜ばしいが、もう新作を読めないのかと思うと嬉しさ半分寂しさ半分である。

[レビュアー]西上心太(文芸評論家)
にしがみ・しんた

光文社 小説宝石 2017年8月号 掲載

光文社

最終更新:8/9(水) 11:00
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