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東日本は「佐藤」「鈴木」、西日本は「田中」「山本」……名字にも東西差がある!〈AERA〉

8/12(土) 11:30配信

AERA dot.

 生活習慣、思考様式、味覚……普段は意識しなくとも、ふとしたときに表れるのが「東」と「西」の違い。巨人と阪神を例に出すまでもなく、永遠のライバル関係でもある。地質学的な境界線・「糸魚川―静岡構造線」(糸静線)は、言語や文化にも大きな影響をもたらしてきた。

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 言語や文化にも、断層は大きな影響をもたらしてきた。糸静線の西側は飛騨山脈や赤石山脈の高山が沿線に連なり、天険を形成している。東側は新潟県から長野県にかけて妙高連峰が連なり、八ケ岳へと続いている。ここまでの険峻が続くと東西への人の往来は難しく、言語や文化でも断絶が起きやすい。日本の方言に詳しい東京女子大学の篠崎晃一教授が言う。

「たとえば『居る』や『鱗』の言い方は富山県、岐阜県の東側に沿ってはっきりと分かれます。ただ、南側では言葉によって、境界が東に寄ったり、西に寄ったりする。これは東海道ができたことで、人の往来が盛んになった結果だと考えられます」

 日本語はアクセントも「東京式」と「京阪式」で大きく分かれる。「東京式」は東北や中国地方、九州の一部にも分布しているが、東西の境界は岐阜県と愛知県。滋賀県、和歌山県からは「京阪式」となる(北陸地方は準京阪式)。

「東京式と京阪式の両方のアクセントが混じる方言が、岐阜県西部、関ケ原町に隣接する垂井町にあるといわれます。内陸ではこのあたりが境界だと思われます」(篠崎教授)

●富山県は完全に西日本

 方言やアクセントの境界は、実は、日本人の名字の分布ともほぼ重なっている。

『名字でわかる あなたのルーツ』(小学館)の著者で姓氏研究家の森岡浩さんによると、東日本には「佐藤」「鈴木」が多く、西日本には「田中」「山本」が多い。その東西の境目を見ていくと、日本海側は新潟県と富山県の境界にある親不知・子不知だという。

 富山県の1位は「山本」で、他に多いのは「林」「吉田」。これは典型的な西日本型。一方、新潟県は1位が「佐藤」で、「渡辺」「小林」「高橋」などが上位に入る東日本型だという。

「親不知・子不知は、江戸時代以前は有名な難所で、人の移動が少なく、名字が東西で動かなかった。一般的に富山県は東日本に分類されることが多いが、名字からみると、完全に西日本です」(森岡さん)

 きっぱりとした境目がある日本海側に比べて、太平洋側の境目はグラデーションのようになっている。これもやはり、東海道によって人の往来が激しかったことから、名字もゆるやかに変化したと考えられる。それでも、三重県中部の雲出川を渡ると西日本型が多くなり、さらに南の旧松阪市では西日本型の「田中」が1位となるため、雲出川付近が境界ではないかという。では、内陸部はどうか。

「県単位では、岐阜県が東日本型、滋賀県が西日本型ですが、細かくみると、天下分け目の戦いがあった関ケ原が東西の境目になっています」(同)

 滋賀県との県境の岐阜県不破郡には関ケ原町と垂井町の二つの町がある。両方ともトップは東日本型の「高木」。だが、2位以下をみると、垂井町が東日本型なのに対して、関ケ原町では「西村」「田中」「吉田」と完全に西日本型になる。

「垂井町は東側に広がる濃尾平野の末端だが、関ケ原町は東西を走る谷の西端となり、滋賀県側を向いた谷とも捉えられる。関ケ原町は、滋賀県旧坂田郡(現・米原市)との行き来が多く、近江との結びつきが強かったのではないか」(同)

(編集部・作田裕史)

※AERA 2017年8月14-21日号

最終更新:8/12(土) 14:41
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