ここから本文です

米政権への信任低下がドル上昇を抑制

8/10(木) 7:10配信

日経BizGate

想定よりも後ずれする成長ペースや賃上げ

 2017年も、はや半分以上の月日が経過したわけだが、この間、対円でのドルは長らく調整含みの展開に終始している。「とにかくドルが弱い」ということは、年初からこれまでに対ドルでユーロがどれだけ値上がりしたかを見ても明らかである。これもひとえに「米政権に対する国際的な信任が嘆かわしいほどに低いことの表れ」と思われる。

 1月下旬に米大統領に就任して以来、果たしてドナルド・トランプという人物が、アメリカ合衆国連邦国家ならびに世界の国々・地域への貢献で、何か一つでもなし遂げたことがあるだろうか。成果と言える成果が一つも挙げられぬ一方で、疑惑の種はばらまくだけばらまき、その挙句にトランプ氏は、かつてオバマ時代に自ら声高に「あり得ない」と批判していた“大統領の夏休み“に専用ヘリで平然と飛び立ってしまった。ここまでひどいとは思っていなかったので、正直、ここまでドルが弱くなるとも思っていなかった。

 いまだ米経済は、財政政策に役割の一部を委ねることができない状況にあるが、金融政策による適切な手綱さばきのおかげでジワジワと足下で成長の歩みを進めてはいる。しかし今後、もう一段の成長加速に期待するなら、やはりどうしても「財政」の協力が欲しいところだ。かねてより「財政」と「金融」は政策の両輪と言われ、確かにどちらか一つが欠けても困るのは事実だが、実はそれぞれに持つ役割や目的、必要なタイミングが少し異なるということもまた事実である。

 “大統領の夏休み“が終わったら、まるで「人が変わったようになっていた」ということもトランプ氏にはないだろう。よって、今秋以降も「財政」の出動に関する前向きかつ具体的な議論はなかなか進まず、なおも「金融」のみの片肺飛行で極めて緩やかな成長に留まる状態がしばらくは続きそうである。仮に米大統領の弾劾(だんがい)・罷免(ひめん)、そして副大統領の大統領就任などという展開にでもなれば別だが、そうでない限りは少なくとも年初に掲げた金融相場の行方についての想定・シナリオを一部訂正することも余儀なくされよう。

 それではどのような点が年初の予想と変わったのか。一口に言えば「想定よりも時間がかかっている」ということである。それは米国経済の成長ペースが高まる時間であり、いずれは訪れるものと期待される“インフレの局面“に至るまでの時間、ひいては米当局が金融政策による対応を迫られ、結果的に市場でドル買い意欲が本格的に高まってくるまでの時間である。

 率直に言えば、米国内の賃上げ期待が盛り上がって来ない。その結果、米国における個人消費の活性化とそれを通じた物価水準およびインフレ率の上昇という局面がやってこない。もちろん、その方向には向かっている。何より、全てのスタート地点に当たる米国の雇用情勢が、明らかな改善傾向をたどり続けていることは誰もが百も承知である。

 実際、8月4日に発表された7月の米雇用統計の結果も全体に申し分のない好調ぶりを示していた。労働参加率がアップしているのにもかかわらず失業率が一段と低下した点や、失業率が“ほぼ完全雇用“のレベルにまで低下しているのにもかかわらず雇用者数が前月比で大きく伸びたこと、さらに前回(6月)分の雇用者数の伸びが上方修正されたことなど、個々の項目を見ても好評価に値する点ばかりであった。

 ただ、こうしたことはすでに市場にとっては織り込み済みであり、今後は「むしろインフレ率の方に目を向けて行くことが重要」と米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長も、機会あるごとに述べているし、市場の関心も米国のインフレ動向に移っている。

 その意味では、米雇用統計の一項目でもある「平均時給」の伸びが不十分と見る向きも少なくはない。7月は前年同月比+2.5%という結果であったが、それではこれまでとあまり変わりがない。もっとグンと伸び率がアップしなければ、市場は不満足というわけである。

1/3ページ

最終更新:8/10(木) 7:10
日経BizGate

記事提供社からのご案内(外部サイト)

日経BizGate

日本経済新聞社

・ビジネスで直面する課題を解決!
・人事・組織からマーケティング、ITまで
・専門家の知見や洞察に富んだコラム満載
・マネジメント層の情報ニーズに応えます