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最近の欧州銀行救済策と銀行破綻処理のガイドライン見直し

8/10(木) 8:53配信

NRI研究員の時事解説

<要旨>

2017年6月に行われた2つのイタリアの地方銀行に対する公的資金注入では、銀行救済で公的資金を投入する前には、株主に加えて債権者の負担を求める(ベイルイン)という従来からの原則が事実上崩れたという側面もあるとも考えられる。そのため、将来の銀行救済、破綻処理のプロセス等に関する不確実性も高まってしまったのである。これを受けて欧州単一銀行破綻処理委員会(SRB)のケーニッヒ委員長は、銀行破綻処理のガイドラインを見直す考えを示唆している。

欧州銀行破綻処理のガイドライン見直しの動き

欧州で、銀行破綻処理のガイドラインを見直す動きが浮上している。欧州単一銀行破綻処理委員会(SRB)のケーニッヒ委員長は、フィナンシャルタイムズ紙のインタビュー(注1) の中で、2013年に欧州委員会が採用した銀行破綻処理のガイドラインは既に時代遅れになっている面もあるとして、その見直しを検討する可能性を示唆した。これは、ガイドラインをより厳格化することで、安易な公的資金の注入を回避する方向での見直し検討である。しかし他方で、欧州委員会はガイドラインの見直しは必要ないとしており、欧州内で意見の相違も見られる。


(注1)Tighter EU curbs urged on winding down banks”, Financial Times, August 8, 2017

イタリア地方銀行の救済策

この議論のきっかけになったのは、2017年6月に行われた2つのイタリアの地方銀行に対する公的資金注入であった。銀行救済で公的資金を投入する前には、株主に加えて債権者の負担を求める(ベイルイン)という原則が崩れたことが、ガイドライン見直し議論のきっかけであった。この救済策に対しては、ドイツを中心に、問題銀行が安易に公的資金を受け入れることができるとの誤ったメッセージを送ることになり、いわゆるモラルハザードのリスクを高めるとの批判が高まったのである。以下では、このイタリアの地方銀行の救済策を詳細に見ていこう。

従来からその対応が注目されていた、イタリアの2つの中小銀行の救済策が、6月25日に公表された。2行を優良資産(グッドバンク)と不良資産(バッドバンク)に切り分け、優良資産(グッドバンク)をイタリア第2の銀行インテーザが取得する。一方、不良資産(バッドバンク)は政府が引き受け、その処理には公的資金が利用されたのである。この2つの中小銀行への対応については、(1)イタリア最大の銀行モンテ・パスキの救済策に用いられた、破たん処理開始をトリガーとせずに銀行への公的支援を可能にするEUの例外措置である「予防的公的資金投入」(注2) のスキーム、あるいは(2)、サンタンデール銀行への売却を通じた破綻処理で公的資金の利用が回避された、スペインの大手銀行バンコ・ポピュラールの救済策、のいずれかが適用される、との見方が一般的であった。それゆえに、実際の破綻処理の方法に関しては驚きを持って迎えられたのである。

(注2)欧州銀行再建・破綻処理指令(BRRD)第34条4項

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