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スペインのホテル業者と食中毒詐欺の英国人観光客との戦い --- 白石 和幸

8/10(木) 14:50配信

アゴラ

観光シーズンを迎えてスペインのホテル業者と英国人による食中毒詐欺との戦いが再開されている。3年前からこの戦いが顕著になっている。

ストリーは次の通りだ。スペインで宿泊したホテルの食事で下痢などを催して食中毒にかかったと偽って、旅行を手配した英国のツァー・オペレーターに賠償請求をする。ツァー・オペレーターは早速彼らが宿泊したホテルにその支払いを要求する。

このような英国のツァー・オペレーターによるスペインのホテル業者への賠償請求が3年前から急増している。昨年のスペインのホテル業者によるこの支払総額は凡そ6,000万ユーロ(72億円)にまで達したそうだ。

処が、今年に入って状況に変化が見られるようになっているという。スペインのホテル業者による英国の関係当局への執拗な訴えが功を奏して、英国政府や航空業界そしてツァー・オペレーターが英国旅行者による中毒詐欺の摘発に協力するようになったのである。特に、トーマス・クック、トムソン、ジェット2ホリデーズといったツァー・オペレーターが真剣にこの問題に取り組むようになったのである。理由は、ホテル業者がツァー・オペレーターとの契約を破棄するケースが見られるようになったからである。

当初、ホテル業者はツァー・オペレーターからの賠償請求に仕方なく応じていた。そうしないと、彼らは英国からのお客を連れて来なくなるという恐れからである。しかし、賠償請求の頻度が増加し、ホテルの損害は深刻なものになり、これ以上素直に彼らの請求を受け入れることは出来ないという状態にまでなったのである。例えば、カナリア諸島での賠償請求は14倍に増加、マジョルカ島やイビサ島があるバレアレス諸島でも7倍に増加したのである。

事態がホテル業者の方に好転した様子を示すケースに次のような判決がある。虚偽のクレームに対し、英国の裁判所は英国人旅行者に食中毒を捏造したとして罰金を科したのである。彼ら夫婦は子供二人を連れて2014年にカナリア諸島のホテルに宿泊した。宿泊したホテルで下痢などを起こし食中毒に罹ったと英国の悪徳弁護士事務所Bridger & Co of Landovery Carmarthernshireを介して2016年にトーマス・クックに111,186ユーロ(162 万円)の賠償請求をしたのである。

例年のケースだと、トーマス・クックは彼らが宿泊したカナリア諸島のホテルにその賠償請求をしていたはずである。処が、トーマス・クックはこれまでのようにお客からの陳情を素直に受け入れることをせず、彼らのクレーム内容に不審があるとして、逆に彼らを裁判に訴えたのである。

この裁判の判定を下す決定的な要因となったのは、彼ら家族がスペインから英国に戻る機内でのアンケート調査でスペインで受けたサービスに非常に満足していると答えていたことが判明したのである。しかも、彼らは医療費の請求もしておらず、食中毒に罹ったということを宿泊していたホテル側に何も伝えてもいなかったのである。彼らに対し下された判決は虚偽の言動をしたとしてトーマス・クックへ3700ポンド(53万6000円)の支払い請求となったのである。

もう一つ似たような判決を紹介しよう。マジョルカ島のあるホテルに英国人夫婦と30歳の娘が宿泊した。宿泊代には食事も込みであった。食あたりを起こしたとして、52,000ポンド(754万円)の賠償を請求した。リバプールの法廷での判決は逆に彼ら3人に実刑18か月から6年の有罪判決が下されたのである。

この様なクレームが英国でできるのは、同国では2013年の消費者保護法によって事件発生から3年経過するまでクレームをつけることが出来るというのである。しかも、それを立証するものがなくても可能なのである。この安易な保護法の盲点を利用して悪徳弁護士が存在できるのである。実際に、スペインへの英国からの旅行者の中には悪徳弁護士も混じっているそうだ。彼らの目的はスペイン滞在中に宿泊している英国人に容易にクレームをつけることが可能で宿泊費が無料になると説得して回るのだそうだ。

それを防止する意味で、航空会社もスペインのホテル業者に協力するようになった。スペインに向かう機内でパンフレットを配り、虚偽の食中毒はスペインの法廷では詐欺行為として判断され収監となる場合もあるということを伝えているという。

また、ホテル側でも英国人が宿泊する部屋は食べ物を吐いた形跡があるか、タオルに血の痕跡が残っているかなどをコントロールしているという。同様に、トイレットペーパーの消費量もチェックしているそうだ。また、チェックアウトの時にアンケート用紙に滞在中に病気になったかなどを尋ねるようにしているという。これらは全て賠償請求を受けた時の証拠としてホテル側で保管しておくのだそうだ。

メイ首相は英国人旅行者に収監という判決もあると指摘して、彼らの品行に注意を促しているという。また、いつも歯に衣を着せぬ発言が目立つボリス・ジョンソン外相は「英国市民は世界で最も消化器官が弱いようだ。国の恥だ」と言って自国民を皮肉ったそうだ。

白石 和幸

最終更新:8/10(木) 14:50
アゴラ

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