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瀬戸内海を前に広がるひまわり畑 手島(香川県)

8/10(木) 18:10配信

サライ.jp

取材・文/小林希

瀬戸内海の塩飽諸島(しわくしょとう、香川県)の一つに、手島という島があります。人口わずか30人弱、ほとんどの島民が70歳以上という、静かな島です。

島の地形は蝶蝶が羽を広げたようで、集落は蝶蝶の頭の位置にあたる、少し窪んだ場所にあるだけ。ほとんどは空家ですが、もともと船大工が多く暮らしていたため、あちこちにある家屋は大きく、住人無き今も存在感を出して佇んでいます。

28の有人島・無人島から成る塩飽諸島のうち7島は、江戸時代に幕府から自治権を認められた“人名制”があった日本で唯一の地域です。手島もその一つ。江戸時代から残る制札場が集落にあり、情緒的な雰囲気を醸し出しています。

香川県の丸亀駅から港まで5分歩くと、手島に行くための船着き場に到着します。港の待合所で手島行きの切符を買い(片道770円)、桟橋に接舷している備讃フェリーの高速船に乗り込みます。

航路は、讃岐広島→小手島→手島。手島まで行く船便数は少なく、出航時刻に注意が必要です。(※船の時刻表はこちら)

高速船に乗ること45分、手島の港に到着します。港は人気が少なく、船の発着時は僅かに人が集いますが、船が先島へ向かうと集落はしんと静まり返ります。

それでも、真夏の手島は少し賑やか。

現在、廃校だった小学校・中学校の建物を「手島自然教育センター」と改築して宿泊施設としており、地元の子供たちが林間学校として利用したり、キャンプファイヤーをしたりと、静かな島に子供たちの笑い声が響いています。もちろん、県外の旅行者も利用可能。

その頃、知る人ぞ知る、手島の名物が見頃を迎えます。それは、瀬戸内海を背景に広がるひまわり畑。70歳や80歳のおじいちゃんたちが、一輪、一輪、心を込めて一生懸命に育てたもの。手島自然教育センターに向かう集落の道沿いや、港と反対側の西浦海岸目前の畑一面に咲いています。蒼い瀬戸内海を背景に、太陽に顔を向ける向日葵の健気な姿がほほえましい。

「もう、今年が最後かもしれんのう」

そう言うおじいちゃんたちの言葉を毎年聞きながら、今年も訪れては、「ああ、綺麗に咲いている!」と感涙してしまいます。

夕刻の最終便で、子供たちが嬉しそうにひまわりを一輪ずつ携えて船に乗り、見送りに来た島のおじいちゃん、おばあちゃんに、いつまでも手をふって「またね~! さようなら~!」と帰っていく光景はどこか懐古的。

ささやかに黄色い絨緞が広がる数日間、手島はこれ以上ないほど幸せになれる秘密の場所なのです。

取材・文/小林希
旅作家・フォトグラファー。1982年生まれ。出版社を退社して、その日の夜から旅に出る。1年後帰国して『恋する旅女、世界をゆく-29歳、会社を辞めて旅に出た』で作家デビュー。著書に『泣きたくなる旅の日は、世界が美しい』や『美しい柄ネコ図鑑』など多数。現在55カ国をめぐる。『Oggi』や『デジタルカメラマガジン』で連載中。

最終更新:8/10(木) 18:10
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