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時間欠乏症時代のタイムマネジメント術

8/10(木) 7:20配信

@DIME

 ネット通販で購入したモノが場合によってはその日に届くなど昨今の社会の“高速化”は著しい。そして社会がスピードアップすればするほど、やはり“時間”は貴重なものと感じられているようだ。

■“時間を買う”人は生活の満足感が高い

 一説によれば良くも悪しくも今日の社会は“時間欠乏症”に陥っているとも言われている。何をするにも時間が足りなくて悪戦苦闘している人がそれだけ多いのである。

 カナダ・ブリティッシュコロンビア大学をはじめアメリカ、オランダの研究者による合同研究チームが先ごろ発表した研究では、“時間を買う”行為が実は暮らしにかなりの満足をもたらすものであることを指摘している。時間に追われている人が多い今日にあって、各種の代行サービスやデリバリーサービスは考えられている以上に、生活の満足度を左右するものであったのだ。

 アメリカ、デンマーク、カナダ、オランダの6000人以上の成人を対象に生活における時間の重要度についての調査を行なったところ、代行サービスやデリバリーサービスを活用している人々ほど生活の満足感が高い傾向が浮き彫りになった。

「掃除の代行サービスを利用したり、近所の子どもに小遣いを与えて庭の芝刈りをさせるなどの行為は怠惰のそしりを受けがちなのですが、我々の調査が示しているのは“時間を買う”ことは富を所有する幸せと同じものであるということです」とハーバード・ビジネス・スクールのアシュレイ・ウィランズ助教授は語る。まさに“時は金なり”ということだろうか。

 さらに直接的な調査も行なわれている。カナダ・バンクーバーの成人60人に2週にわたって40ドルずつ与え、最初の週末には代行サービスやデリバリーサービスなどの“時間を買う”行為にその40ドルを使ってもらった。そしてその次の週末には40ドルで何かその時に必要なモノを購入してもらったのだ。

 その後どちらの週末が楽しく充実していたのかを尋ねると、最初の“時間を買った”週末のほうか人々の満足度が高いことが明確に示されたということだ。

 調査の結果、代行サービスなどは今後ますます重要視されるサービス消費であることが明らかになったのだが、その一方で実際にこれらのサービスを利用している人は驚くほど少ないことも判明したという。98人のカナダ人勤労者に自由に使えるお金が週に40ドル増えたとした場合、そのお金を何に使うかというアンケート調査を行なったところ、代行サービスなど“時間を買う”行為を選んだのはわずか2%に留まったという。人の時間を直接“金で買う”という行為に多く人々には何か心理的バリアがあるのかもしれない。

 しかしながら、各種の代行サービスの活用が幸せな生活に繋がることは明瞭に示されたことになり、今後ますます“高速化”する社会にあっては検討すべきケースが増えてくるのかもしれない。

■“インターバルトレーニング”の手法で時間管理が向上できる

 スピードが求められる時代にあって、ビジネスパーソンには特にタイムマネジメント能力が求められている。

 もちろんガムシャラに全力で目の前の仕事に取り組むことではない。緩急のメリハリをつけて結果的に効率的、能率的に仕事を進めていくスキルの重要性がますます高まっているのだ。

 陸上競技に留まらずアスリートのトレーニング法としてメジャーなのが「インターバルトレーニング」だが、これをタイムマネジメントに取り入れることで仕事の能率が大幅に向上できると指摘している専門家がいる。

 先月出版された『Peak Performance: Elevate Your Game, Avoid Burnout, and Thrive with the New Science of Success』の共著者の1人、ブラッド・スタルバーグ氏は、仕事にインターバルトレーニングの手法を取り入れることで効果的に集中して仕事を進められることを「NY Mag」の記事で説明している。

 2014年の研究で、IT企業体のDraugiem Groupがグループ内の最も優秀な10%の社員の仕事ぶりを分析したところ、52分集中して仕事に取り組み、その後17分間休憩し、これを1日の中で繰り返していることがわかっている。生産性の高いエース社員たちは意外にもけっこう休憩をとっているのだ。

 業種を問わず、多くの仕事の現場でこのインターバルトレーニング方式が有効であることが各種の研究から指摘されている。例えば食肉加工の現場においては51分の作業と9分の休憩、農業の現場においては75分の作業と15分の休憩、コンピュータプログラムにおいては50分の作業と7分の休憩というそれぞれのサイクルで仕事を効率的に遂行できることが報告されている。つまりおおむね1時間前後の集中した作業とその後10分前後の休憩を繰り返すことで能率的に作業が進められることになる。

 その際に最も避けねばならない落とし穴となるのが、複数の仕事を同時進行させる「マルチタスキング」である。マルチタスキングは、当人に仕事をしている実感を高めてくれるため、仕事が好きな者ほど陥りやすい落とし穴となる。2006年に発表された研究では、マルチタスキングによって生産活動時間が最大40%奪われ得るということだ。作業はやはりひとつひとつ片付けていくのが鉄則となるだろう。インターバルトレーニングの手法を意識し、集中と休憩のメリハリをつけて仕事に取り組みたいものだ。

■サイエンスに裏打ちされた瞑想の4つの効能

 マインドフルネスと瞑想もまた仕事上のタイムマネジメントにきわめて有効であるということだ。ヨガのプログラムを提供している企業「Self Reboot」の創設者であるドーン・ローレンツ氏が、生産現場でのタイムマネジメントに活用できるサイエンスに裏打ちされた瞑想の効能を4つ解説している。

1. 注意力の向上
 集中力や注意力、自己コントロールを司る脳の前帯状皮質に瞑想が影響を及ぼすという。ハーバード・メディカルスクールの研究では、瞑想プログラムは学習と記憶に関わる脳の領域に変化をもたらすことを指摘している。

 実際にマインドフルネスと瞑想によって、集中力と注意力を保持できる能力が向上し、ストレスフルな環境にあっても長く集中を保ち、課題を成し遂げた後にポジティブな達成感を得ることができる。

2. 認知機能を明晰にする
 瞑想を日課にすることで自己コントロール力が高まり、作業の際の認知機能が明晰になる。英・シェフィールド大学の研究では、マインドフルネスによって作業の精度が高まることが指摘されている。

 瞑想はまた現在の自分の状態を把握する自己認識力を高めてくれるので、よりクリアに状況を観察し高い注意力を保ったまま対象にアプローチすることが可能になる。

3. 業務の流れを円滑にする
 マインドフルネス瞑想はきわめてハイレベルの集中状態を可能にして高い労働生産性をもたらすことが報告されている。

 有名な心理学者のミハイ・チクセントミハイ氏が提唱した“フロー”の概念はいわゆる「ゾーンに入る」体験と同様の現象であり、瞑想においても同じ体験がもたらされる。

 瞑想によって目標の理解と設定、課題の優先順位づけ、課題の克服において「努力を要しない行動」が可能となりタイムマネジメントにおいて重要な役割を担う。

4. 先延ばしの防止
 マインドフルネスの状態は自己コントロールの鍵であり、先延ばしグセの解消に繋がる。カナダ・ウィンザー大学の研究では、瞑想によって許容力が増し、過去のネガティブな自己言及を取り除き、言動を修正する動機をもたらすということだ。

 そして瞑想を日課にすることでフラストレーション、自己卑下と諦めの観念を減じさせ、今現在に集中することが容易になる。

 どうやら瞑想やマインドフルネスで高まる自己コントロール力が、タイムマネジメントに有効に作用しているということのようだ。ビジネスにも活用できるということで、瞑想をはじめてみたくなる人が増えそうな話題である。

文/仲田しんじ

@DIME編集部

最終更新:8/10(木) 7:20
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