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韓国・文大統領、北朝鮮の脅威をテコに念願の原潜建造?

8/10(木) 21:32配信

ニューズウィーク日本版

<国連安保理で北朝鮮への制裁決議が採択されたことを受けてトランプと文在寅(ムン・ジェイン)が行った電話会談。そこで文は北朝鮮への対抗策として原子力潜水艦の建造をトランプに提案した。文もついに北朝鮮との対話を諦め強力な軍事力で圧力をかけるのか?>

電話会談は7日、トランプが休暇を過ごしているニュージャージー州ベッドミンスターの「トランプナショナルゴルフクラブ」へ文が電話をかける形で行われた。前日の国連安保理では、中国とロシアも賛成し全会一致で北朝鮮への制裁決議が採択されており、会談では今後の北朝鮮対応についての両国の結束が確認された。

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この会談中、文はトランプに「韓米両国が“力の優位“に基づく強力な圧力と制裁で、最終的に北朝鮮を核廃棄のための交渉の場に引き出すため、共同で努力しなければならない」と強調し、“力の優位“の具体的な方策として韓国軍の防衛能力の向上を挙げ、弾道ミサイルの重量引き上げと、原子力潜水艦導入についてアメリカ側の理解を求めた。

韓国軍は、弾道ミサイルについてアメリカと米韓ミサイル指針という協定で、射程距離800km・最大弾頭重量500kg以内という制限を受けており、これでは有事の際に北朝鮮の核・ミサイル施設や北朝鮮指導部の隠れ家となる地下施設を攻撃するには非力だというのだ。

さらに文は原子力潜水艦保有の必要性についてもトランプに説明をしていた。

原潜建造は文の長年の悲願?

ここでなぜ文が原潜の話を出したのか? それは原子力潜水艦建造というのが文にとって、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権にいたときからの懸案だったからだ。

韓国SBSによると、韓国海軍の主力艦艇である1200トンと1800トン級潜水艦は、ディーゼル式潜水艦で、バッテリーの充電のためにディーゼル機関に空気を取り入れる必要があり、最長でも2週間に1回程度水面に浮上しなければならない。しかし、原子力潜水艦は理論上数か月浮上していなくても、潜行したまま作戦が可能だ。70隻あるとされる北朝鮮の潜水艦戦力に追いつくためには、原子力潜水艦の方が潜行能力、航行速度ともにはるかに有利である。

かつてあった韓国の原潜建造計画

盧武鉉政権下の2003年には、軍は原子力潜水艦3隻の建造を目指し、“362事業団“と呼ばれる極秘プロジェクトチームを結成していた。362事業団は、中核となる技術の潜水艦用原子炉の基本設計まで終えたが、その活動がメディアに知られ発足から1年で解体され、それ以来原子力潜水艦の建造は封印された。

だが今や状況は変わった。当時362事業団長だったムン・グンシクは「今、北朝鮮は核ミサイルを開発し頻繁に挑発してきており、私たちの安全保障だけでなく、米国にも脅威となっている。必ず原子力潜水艦を建造する必要がある」と語っている。

また文政権の国防長官となったソン・ヨウンは362事業団が活動していた当時、海軍の戦力を統括する企画参謀部長だった人物だ。実際、就任前の6月28日に行われた候補者に対する人事聴聞会でも原子力潜水艦の導入の必要性を語っており、就任後の7月31日国会で開かれた国防委員会全体会議でも「原子力潜水艦の導入を検討する準備ができている」と述べている。

このソン国防部長官の発言は、文の大統領選挙時の選挙公約とも一致している。文は4月に行われた討論会で原子力潜水艦の導入の必要性を問う質問に「核を燃料として使用する潜水艦は、韓米原子力協定に違反していない。今、原子力潜水艦は、私たちに必要な時代になった」と強調している。また当時の文は、大統領になれば韓米原子力協定を改正し、原子力潜水艦を建造すると明らかにしていた。

ここで問題になるのがアメリカ側の同意だ。原子力潜水艦は、少なくとも20%の濃縮ウランが使用されるが、これを第三国から輸入したとしても、米韓原子力協定によって米国の同意がなければ、軍事用として使用することができないからだ。このため、7日の電話会談で文が原子力潜水艦建造についてトランプへ理解を求めたのだ。

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