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サザンを正しく語りたい/スージー鈴木『サザンオールスターズ 1978-1985』

8/10(木) 11:00配信

Book Bang

「夏、海、青春、サザンオールスターズ!」――なぜサザンは、そんな手垢にまみれた文脈でしか語られないんだろう? 

 そんな疑問がまずあって、だからこそサザン、とりわけ初期サザンによる音楽的功績の広さ・深さ・奥行きを、きっちりと測定する本を出したい、そして、初期サザンを批評的に語る気運を盛り上げたい――という思いで書いたのが、この本=『サザンオールスターズ 1978-1985』です。

 タイトルにもあるように、ここで言う「初期サザン」とは、78年から85年の8年間を指します。78年=傑作シングル《勝手にシンドバッド》で鮮烈なデビューをしてから、85年=こちらも傑作シングルの《メロディ(Melody)》を発表し活動休止するまでの、怒濤の8年間。サザンと20代の桑田佳祐が、何を考え、何に迷い、何をしでかしたのかを克明に追った、一種の評伝となっています。

 1年で1章、8年で8章、プラス終章でトータル9章。そして、初期のアルバム8枚(『熱い胸さわぎ』~『KAMAKURA』)については、全収録曲の批評(5つ星採点付)も載せています。

 さて、この本を書き進めるときに、ある「仮想敵」を、ずっと頭の中に置いていました。それは――「はっぴいえんど中心史観」です。

 実は、日本ロック史に関する本の多くが、この「史観」の下に書かれています。ざっくり言えば「日本のロックの全ては、はっぴいえんどから始まり、そして、はっぴいえんどが完成させた」とでもいったような、ずいぶんと乱暴な歴史観です。

 細野晴臣、大滝詠一、松本隆、鈴木茂。70年にデビューし、傑作アルバム『風街ろまん』を遺し、そして73年にさっさと解散した伝説のロックバンド。その知的で陰鬱な感じのサウンドが、さらに伝説性を高め、結果「はっぴいえんど中心史観」が、日に日に広まっているように感じます。

 違うだろう、と。少なくとも、日本のロックをぐんぐん推進させ、ビジネスとして完成させたのは、初期サザンじゃないか。そして、はっぴいえんど以前の、例えばザ・スパイダースの功績も認めなければいけないだろう――そんな考えが、この本の中心的な視座となっています。

 最後に自己紹介になりますが、私は66年生まれ、今年51歳になる音楽評論家です。ということは、桑田佳祐のちょうど10歳下。20代の桑田が走り抜けた、初期サザンの怒濤の8年間、私は10代でした。多感な思春期に、20代の桑田による、天才的な作品を浴び続けたことの幸せを噛み締めながら、この本を書きました。

 そんな幸福感を、読者の方々と共有したいと思います。桑田の曲=『Kissin’ Christmas』風に言えば、「人生の想い出にすべてサザンがいる」――そんな方々に読んでいただきたい一冊です。

[レビュアー]スージー鈴木(音楽評論家)

新潮社 波 2017年8月号 掲載

新潮社

最終更新:8/10(木) 11:00
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