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村上春樹を知るためのA to Z 【前篇】繰り返し観ている映画は? CREA 2017年9月号

8/10(木) 12:01配信

CREA WEB

 音楽やコーヒーが重要な要素となる村上作品。知ればより深く楽しめるはず。すべての著作と、インタビューなどを基に、作家本人のポートレートや気になるキーワードとあわせて、「村上春樹を読み解く会」代表の齋藤隆一さんがその魅力を一気に解説します。CREA2017年9月号から抜粋した一部を前後篇でご紹介。

■【A】
AUTOMOBILE[自動車]
マニュアルカーが好き

 デビュー作から最新作まで、自動車は作品の重要なアイテム。本人は、デビューからしばらくの間、車にあまり興味がなかったが、1986年からヨーロッパに長期滞在することになり車が不可欠に。免許を取得してランチア・デルタ1600GTieを購入し、運転の面白さに開眼する。ローマ滞在中に書かれた『ダンス・ダンス・ダンス』、『眠り』以降、主人公が車を運転するシーンが頻繁に出てくるようになったのは、その影響だろう。

 好きな車は、マニュアルシフトの2人掛けのオープンカー。運転している時の自由な感じがたまらないそうだ。

■【B】
BAR[バー]
人気ジャズ・バーのオーナーだった

 作家になる前にジャズ・バーを経営していたこともあり、作中でお酒を飲むシーンが多い。1971年に学生結婚した村上は、普通に就職をするのが嫌で、店を出すことを決意。夫人と二人で資金を貯め、1974年に国分寺駅の南口に「ピーター・キャット」を開店(店名は、昔飼っていた猫の名前にちなんでいる)。千駄ヶ谷に移転し人気店となるが、執筆に専念するため、1981年に惜しまれながら閉店。

■【J】
JAZZ[ジャズ]
聴きながら読みたい
王道から通なセレクトまで

 かつてジャズ・バーのオーナーだったこともありジャズに造詣が深く、関連の著作も多い。例えば、ジャズ愛好家であるイラストレーター、和田誠との共著『ポートレイト・イン・ジャズ』は、和田が55人のジャズミュージシャンのポートレートを描き、それに村上がエッセイを付けている。彼らの深い理解と愛情が感じられる1冊だ。

◆「WALTZ FOR DEBBY」 Bill Evans

 白人のモダンジャズピアニストとして独自のスタイルを確立させたビル・エヴァンズ。1959年、天才ベーシストのスコット・ラファロとドラマーのポール・モチアンと共にピアノトリオを結成。彼ら3人の傑作アルバムの一つがこちら。

『WALTZ FOR DEBBY』
ユニバーサルミュージック 1,500円

◆「JUMPING WITH SYMPHONY SID」 Stan Getz

 天才的なテナーサックス奏者スタン・ゲッツ。村上にとって、この白人のジャズミュージシャンこそがジャズ(“the Jazz”)だという。スタン・ゲッツのアルバムの中で最も愛するのが、ジャズ・クラブ「ストーリーヴィル」のライブ盤。

『Jazz At Storyville』
ワーナーミュージック・ジャパン 1,429円

■【L】
LANGUAGE[言語]
ファンは世界50カ国以上に

 英語はもちろん、仏語、ロシア語、中国語など50以上の言語に翻訳されている村上作品。

 世界で最初に翻訳されたという台湾では、村上の造語である「小確幸」が日常的に使われている。「小さいことだが確固とした幸せ」という意味で、一昨年の大統領選挙では野党がスローガンに掲げたほど。

 理由は不明だが、台湾、韓国、中国の東アジアの国々の急速な都市化、ベルリンの壁の崩壊、ソ連の消滅、アメリカ同時多発テロ等の大きな社会変化が起こると、その国で村上の小説が売れるという。

■【M】
MOVIE[映画]
繰り返し観ている作品は? 

 早稲田大学第一文学部演劇科に在籍し、時間があれば大学の演劇博物館で映画のシナリオを読んでいたという。

 何度観ても飽きない映画というのが、『静かなる男』と『真昼の決闘』。いずれも1952年に作られたアメリカ映画で、つらい時に観ては「僕もがんばらなくちゃ」と何度も励まされたという。また、『地獄の黙示録』も大好きな作品だ。

『静かなる男』
監督 ジョン・フォード
原作 モーリス・ウォルシュ
脚本 フランク・S・ニュージェント
出演 ジョン・ウェイン、モーリン・オハラ
1952年 アメリカ
※写真は私物

『真昼の決闘』
監督 フレッド・ジンネマン
原作 ジョン・W・カニンガム
出演 ゲイリー・クーパー、グレース・ケリー、トーマス・ミッチェル
1952年 アメリカ DVD 3,800円
発売元 パラマウント・ジャパン

■【N】
NORWEGIAN WOOD[ノルウェイの森]
1000万部超えの大ベストセラー

 1987年9月、上下巻の書き下ろし作品として刊行され、社会現象を巻き起こした5作目の長篇小説。

 印象的な赤と緑の装丁は、作者自身のアイデアで、帯の「100%の恋愛小説!!」というコピーも本人が書いたもの。その時、装丁を担当したデザイナーが、「こんなデザインに自分の名前を出さないでくれ」と言ったため、単行本にデザイナーの名前はなく、帯に「著者自装」と刷られたというエピソードも。

『ノルウェイの森』(上)/『ノルウェイの森』(下)
村上春樹 講談社 各1,300円

●村上春樹を読み解く会とは……
齋藤隆一氏を代表に、村上春樹ファンで構成される会。著作に『1冊でわかる村上春樹』(KADOKAWA)、『短篇で読み解く村上春樹』(マガジンランド)、監修に『PRESIDENT NEXT vol.19 村上春樹とノーベル賞』(プレジデント社)がある。

齋藤隆一

最終更新:8/14(月) 14:01
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