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「恥ずかしい、都の西北」 中野翠×東海林さだお 早稲田出身対談

8/11(金) 17:00配信

文春オンライン

ダンスパーティーでの思わぬ失敗、イメージと違った学生運動──。
早稲田大学出身の二人が、恥ずかしい青春の日々を語り合う。

◆◆◆

東海林 早稲田もすっかり様変わりしましたね。僕らの頃は、建物も5階建てくらいだったのが、いまは高い建物が増えて、大学の中にエレベーターまである。

中野 私が学生だった60年代後半は、このあたりに喫茶店がたくさんあったのに、当時よく行っていた「ジャルダン」も「キャビン」も「モンシェリ」も、なくなってしまいました。茶房(「茶房 早稲田文庫」)がなくなったのが80年代のようだから、その頃に大きな変化があったみたい。

東海林 中野さんは『あのころ、早稲田で』のあとがきに、大学時代のことを書くのは恥ずかしかったと書かれていましたが、どういうところが恥ずかしかったんですか? 早稲田ってことが?

中野 早稲田が、というわけではなく、完全に、私個人の問題。当時の私は今よりもっと軽挙妄動だったので。

東海林 政経学部に入ったことが? それとも、社研(社会科学研究会)に入ったこと?

中野 日々の行動が軽挙妄動。世間知らずで頭でっかちで。大体、生活実感と全く関係のないところで左翼になったということからして……。

東海林 相当のめりこんだんですか。

中野 のめり込むほどではなかったんですけど、本をちょっと読んだくらいで左翼気分になったのが恥ずかしい。

日本人は謙虚なのにあんな「ドーダ!」の歌を誇らしげに歌うなんて

東海林 じゃあ、早稲田の学生であるということ自体は恥ずかしくない?

中野 それは恥ずかしくないですね。でも、『都の西北』を歌うのは恥ずかしかった。

東海林 あれはすごい。僕は、早稲田大学校歌ってのを初めて知ったとき、こんなことでいいのか! と思いましたよ。日本人って謙虚なのに、早稲田大学校歌は「俺が俺が」って感じ。あんなすごい「ドーダ!」の歌を、みんな誇らしげに歌うなんて。歌詞、覚えてます?

中野 「都の西北、早稲田の森に」……。ここまでしか覚えてない。

東海林 「聳(そび)ゆる甍(いらか)はわれらが母校」。他にも、「われらが行手は窮り知らず」とか、言いたい放題だよね。

中野 フフフ、確かに。他の大学では、校歌をこんなに晴れ晴れとは歌わないかも。

東海林 なんで校歌が自慢になっちゃったんだろうね。折につけ歌うんですよ。結婚式でも歌うし。

中野 以前はそういうのを見ると「フンッ」て鼻白んでたのが、最近は年のせいか、「いいわね、若い人たちは」なんて思っちゃうんです。

東海林 それじゃダメです。「そんなのよくない!」ってテーブル叩かなきゃ。

中野 年をとって、性格が丸くなっちゃった(笑)。でも、今の学生はもっとしらけてるんじゃないかな。昔は制服に制帽だったようだし、そういうのでエリート意識を確認していたようなところがあったのかな、と思います。

東海林 僕の頃は、6割ぐらいがまだ角帽をかぶって、制服を着ていましたね。

中野 私は1965年入学で、東海林さんとは十年くらい違うんですけど、その頃には学生服の人はもう少なかった。

東海林 僕の頃は制服で、襟に「文」「商」「政経」と書いてある学部のバッジをつけてました。だから、ヒエラルキーがひと目でわかるんです。向こうから政経の人が歩いてくると、文学部の僕は、道の真ん中をあけるために脇へ避ける。

中野 え、ほんとに?

東海林 ウソです。でも、みんな、だんだん制服を着なくなりましたね。

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最終更新:8/11(金) 18:57
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