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サントリーは世界の蒸留酒業界で戦えるのか?

8/11(金) 9:10配信

日経BizGate

国内ウイスキーは消費量が少ないながら好転

 夏はビールがうまい季節だが、国税庁の統計「酒類販売(消費)数量」によると、国内のビール消費量は1994年度(平成6年度)をピークに減少トレンドになっている。1994年度を100とすると2015年度は約38。21年間で約6割減少しており、「日本人はビール離れをしている」と言われる。

 その一方で、蒸留酒の一種であるウイスキーは2008年度をボトムに回復傾向を示している。2008年度のウイスキーの消費量を100とすると2015年度は181で、約8割も増えた。

 酒類の国内消費動向がこうした変化を見せる中、気になるのがサントリーホールディングス(サントリーHD)を統括会社とするサントリーグループの動きである。サントリーHDは2009年にキリンホールディングスとの経営統合の話が出て2010年に立ち消えとなったが、2014年には「ジムビーム」などで知られる米蒸留酒大手ビーム(現在は、ビームサントリー)を買収。蒸留酒に力を入れる戦略に打って出た。

 ここでは、世界の主要な蒸留酒メーカーの動きを鳥瞰(ちょうかん)しながら、サントリーの蒸留酒における事業戦略を検証していきたい。

 まず、国内のお酒の消費動向をおさらいしたい。ビールと比べたときのウイスキーの特徴は、消費の絶対量は少ないが消費が上向いている、単価が高く収益性が高い――ということだ。

 ウイスキーの消費量は2015年度が約13万5000キロリットルでビールの同266万6000キロリットルに比べると1桁少なく種類別のシェアは全体の2%にも満たないが、消費が勢いを取り戻している。先述のように2008年度が消費量のボトムで、2015年度はそれから約8割も増えた。1989年度までさかのぼると、2015年度の消費は約4割減少しているものの、近年増加しているのはメーカーにとって追い風だ。

 ちなみに、ウイスキーはハイボールに代表されるように「割る(炭酸飲料やジュースなどと混ぜる)」スタイルで消費することが多い。したがって、ウイスキーの消費人口とビールの消費人口は、消費量ほどの差がないと思われる。

 また、ウイスキーは単価が高く、700ミリリットル入りボトルで2000円を超える商品は珍しくない。つまり、ウイスキーは同じ容量で比較すれば配送・保管にかかる費用負担がビールに比べて低く、収益性は高いということになる。

 一方、生産者であるメーカーにとってはビールであろうと、ウイスキーであろうと、生産量は多ければ多いほどよいと考えるのが自然であろう。酒メーカーも製造業である以上は規模の経済が働く領域もあり、収益性は生産量に大きく左右されるという関係もある。企業としては、金額的な収益性が生産量より重要な指標であることは資本市場と接点がある以上は間違いないものの、仮に収益性が低かったとしても目の前に規模の大きな事業があれば、バイアスがかかりがちである。

 上記のようなポイントを考えるとサントリーHDの米ビームを買収するという意思決定は注目に値する。この買収により、サントリーグループは、ウイスキーをはじめとする蒸留酒事業へ経営の重心を移し、世界の蒸留酒業界で戦うことを決意したと見られるが、果たして勝機はあるのだろうか?

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最終更新:8/11(金) 9:10
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