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バイオベンチャーの株価はどこで騰がる? 株価動向と関連イベントの関係を振り返ってみた

8/11(金) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 製薬企業が薬剤を開発し、新薬として承認され、市場に出て販売されることは、「上市(じょうし)」と呼ばれる。今回は、研究開発型の製薬企業の中でベンチャー企業、すなわち、バイオベンチャー企業が上場企業であった場合の株価形成について考えてみたい。ここでは、定量的ではなく、定性的な記述に留めることを、予め、記しておきたい。

 バイオベンチャーの株価は、EPS(一株当たりの利益)×PER(株価収益率)という一般的な株価の公式を使って推測するのは難しい。薬剤を開発中で、赤字企業のケースが多い。一方、上市済みであれば、EPS×PERが成り立つこともあるかもしれない。

 薬剤の開発は、1.基礎研究、2.非臨床試験、3.臨床試験、4.承認申請と審査 の4つのプロセスに分かれる。(参照:中外製薬 「くすりを創る」)

 基礎研究では、化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから物質を発見する。非臨床試験では、発見された物質の中から、試験管の中での実験や動物実験により、病気に効果があり、人に使用しても安全と予測されるものを「くすりの候補」として選ぶ。臨床試験では、この「くすりの候補」の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べる。臨床試験は「治験」と呼ばれるが、フェーズ1から3の試験に分かれる。フェーズ1は、健康な人の協力によるもの。フェーズ2は、少数の患者を対象に実施される。フェーズ3は、多数の患者を対象に実施される。承認申請と審査では、こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となる。(参照:厚生労働省 「治験とは」)

 では、実際の株価はどのような動きをするのだろうか?

 バイオベンチャーの株価に戻ると、上記の4つの薬剤の開発プロセスの後半へ進むにつれて、上市の可能性が高まり、将来の販売によるキャッシュフローの現在価値が高まると考えられることから、薬の上市のゴールに到達しないと株価は騰がらないのではなく、薬剤の開発プロセスが進捗するにつれ、徐々に株価が騰がっていくはずであると、論理的には考えられる。

 薬の上市のゴールに到達したというニュースから、バイオベンチャーの株価が急騰することはあるのではないかと思う。また、逆に、上市が高い確度で予想されていた場合には、上市が決まったら、材料出尽くしで、株価が下落することもあるかもしれないとも思う。上市までの長いプロセスでは、上市への可能性が高まれば、株価は騰がるように思える。テレビなどメディアでの認知向上や、権威ある賞を獲得したとかいうニュースでも、株価は上昇するのではないだろうか?あるいは、治験が成功したというニュースだけでなく、治験対象者の全員へ薬剤を注射することが完了した(「組み入れ」が完了したという。) というような、段階が前に進んだだけでも、株価が騰がることもありそうだ。

 そこで、そーせいグループの過去の株価動向を例にとって、バイオベンチャーの株価、および関連イベントを振り返ってみたい。

◆「そーせいグループ」のケース

 そーせいグループ(東証マザーズ;4565)は、グローバルに医薬品開発に取り組む日本発バイオ医薬品企業で、アルツハイマー病、統合失調症、がん免疫、偏頭痛、依存症、代謝疾患等の画期的なバイオ医薬品の創出を目指している。

 そーせいグループの過去10年間を振り返ってみると、営業利益および純利益はずっと赤字が続き、ともに黒字になったのは2014年からである。このことから、前年の2013年から株価が上昇したのではないかと推測されるが、やはり、2013年と2014年を比較すると、株価の水準が一段階上がったように見える。この時期は、「ウルティブロ」(慢性閉塞性肺疾患(COPD)の諸症状を緩和するための気管支拡張剤)の欧州および日本における製造販売承認に伴う開発進捗に応じたマイルストーン収入および上市(販売)後のロイヤリティ収入が拡大した。したがって、薬剤の製造販売承認というイベントは、株価を上昇させた。

 さらに、2015年11月から2016年5月にかけて、そーせいグループの株価は、およそ5000円から25000円程度まで急騰した。この約半年の間、ほぼ毎月1回のペースで、以下のような複数の大手製薬企業との提携が実現し、収益の大きな要因となる好材料のIR、プレスリリースが続いている。(参照:株主通信)

●2015年8月、AstraZeneca社と、がん免疫療法開発に関する提携

●2015年9月 Heptares社、米国国立薬 物乱用研究所(NIDA)から コカイン乱用及び依存症を適応とするオレキシン(OX1)受容体拮抗薬の研究に授与

●2015年10月、ノバルティス社に導出したCOPD治療薬が米国で承認

●2015年11月、Teva社と新規低分子 CGRP受容体拮抗薬に関して片頭痛治療を目 指した提携

●2015年11月、Pfizer社と最大10種の GPCRターゲットに関する新規医薬品開発に向けた戦略的提携

●2015年12月、NVA237(グリコピロニウム臭化物)の導出先であるノバルティス社が同剤を含有する新規3剤配合型吸入喘息治療薬(QVM149)の 第3相臨床試験を開始

●2016年4月、Allergan社とアルツハイマー病等の中枢神経系疾患に対する新規治療薬の開発・販売提携 契約一時金125百万米ドルを受領。

 上記のように、好材料のIR、プレスリリースがそーせいグループの株価を押し上げた。そーせいグループのケースでは、開発パイプライン(開発中の新薬)の数が多いため、好材料のIR、プレスリリースが続くことにより、株価の上昇トレンドを形成できたと考えられる。

 パイプラインの数が少ないバイオベンチャーのケースでは、治験を進めている期間に、IRやプレスリリースがほとんど出てこないことがある。

 その事例として、脳梗塞や外傷性脳損傷など中枢神経系疾患領域の再生細胞薬を開発するバイオベンチャーに、サンバイオ(東証マザーズ;4592) のケースを見てみよう。

◆「サンバイオ」のケース

 4月20日に放送されたNHKクローズアップ現代「脳がよみがえる!?再生医療大国・日本の逆襲」にサンバイオが取り上げられた。(参照:NHKクローズアップ現代)

 また、6月30日、サンバイオは、米国で実施している再生細胞薬 SB623の慢性期脳梗塞を対象としたフェーズ 2b 臨床試験に対して、カリフォルニア州再生医療機構(CIRM)から20百万米ドルの補助金を獲得した。

 普段のリリースが少ないこともあり、サンバイオの株価の動きは乱高下となっていることが多い。しかし、NHKクローズアップ現代で取り上げられたことや、および、カリフォルニア州再生医療機構(CIRM)から20百万米ドルの補助金を獲得したIRは、株価をトレンドとしては上昇に向かわせているように株価チャートは示している。

 上市への段階が一歩一歩進んでいけば、株価は上昇していくものと推察される。

 バイオベンチャーの株価動向と、新薬の開発状況。「上市」までどれくらいの段階にあるのか、などを推測しながら株価チャートを眺めてみると、何か気づくこともあるかもしれない。

<文/丹羽唯一朗>

ハーバー・ビジネス・オンライン

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