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自衛隊がいるから「国は守れる」という話は本当なの? --- 尾藤 克之

8/12(土) 16:02配信

アゴラ

改憲議論が高まっているいま、過去の歴史に真摯に向き合うことには大きな意味がある。私たちが学んできた歴史とはなんだったのか。この時期は、「戦争」や「改憲議論」に関する番組が放送されるので考える機会が増えてくる。

今回は、米国人弁護士である、ケント・ギルバート氏(以下、ケント氏)の近著、『米国人弁護士だから見抜けた日本国憲法の正体』 (角川新書) (http://amzn.to/2sL4sVE)を紹介したい。日本の歴史と政情に精通した米国人弁護士が、改憲論争の核心に迫っている。

防衛出動のハードルが高いということは

――護憲派には、現行の自衛隊があれば十分に日本を守れるのだから、憲法を改正する必要はないと主張する人がいる。一方、改正派の中には、軍隊にしか国は守れないのだから、憲法を改正して自衛隊を「国防軍」にしなければならないと信じている人がいる。

「そうした人たちは、『憲法を護もること』、あるいは、『憲法を変えること』が、自己目的化しているように思えてなりません。憲法改正は手段であって、目的ではないのです。現状を分析すれば、自衛隊が強力な装備を備えて正式な軍隊になったとしても、それだけで国を守り、戦争を避けることはできません。」(ケント氏)

「安保法制の成立を急いだ理由の1つが、平時と有事の間に存在するグレーゾーンと、警察権(海上保安庁)と自衛権(自衛隊)の間に存在するグレーゾーンを埋めて、シームレス対応を可能にすることでした。」(同)

――具体的にはどのようなケースが想定されるのか。

「西太平洋の海域や領土と領海・領空を、自衛隊の艦艇や航空機だけで監視することは限界があります。敵国の軍艦が近づいてくれば、自衛隊の艦艇が防衛出動するしかないのですが、民間人を装った民兵を乗せた船や、海警局の公船が侵入してきた場合、まず、海上保安庁か海上警察が、警察力で対応します。」(ケント氏)

「次に、海上保安庁の能力で対応できない場合自衛隊の艦艇が出動します。ただし、自衛隊の出動には段階があり最初は治安出動や海上警備行動として出動します。それでも対処できない事態に至って、防衛出動に移行するという段取りになります。」(同)

――ケント氏によれば、海上保安庁から自衛隊に移行する防衛出動を行うハードルは高く、高度で厳しい政治判断が求められるとのことである。法律の枠組みとしては整合性がとれるが、実際に現場で運用するとなると容易ではない。

「たとえば、中国側では、尖閣諸島の周辺に出動してきた自衛隊の艦艇を見て、それが治安出動か、あるいは海上警備行動か防衛出動かは判断できません。あわてた中国側が発砲し、自衛隊も応戦、といった形の武力衝突が偶発的に発生するリスクが出てきます。しかし、日中間の協議は進んでいません。」(ケント氏)

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最終更新:8/12(土) 16:02
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