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作詞家 zoppが考える、“流行歌”が更新されない理由 「日本人の琴線に触れるメロディが減った」

8/12(土) 13:00配信

リアルサウンド

 修二と彰「青春アミーゴ」や、山下智久「抱いてセニョリータ」など、数々のヒット曲を手掛ける作詞家・zopp。彼は作詞家や小説家として活躍しながら、自ら『作詞クラブ』を主宰し、未来のヒットメイカーを育成している。これまでの本連載では、ヒット曲を生み出した名作詞家が紡いだ歌詞や、“比喩表現”、英詞と日本詞、歌詞の“物語性”、“ワードアドバイザー”としての役割などについて、同氏の作品や著名アーティストの代表曲をピックアップし、存分に語ってもらった。第13回目となる今回は流行歌が更新されないことや、“夏うた”が減少していることへの危機感についてじっくりと聞いた。(編集部)

■「最近はアイドルの場合でも、歌いやすいベタな曲は選ばれにくい」

ーー前回は夏うたに使われるテクニックから、季節の流行歌が減っているという話になりました。たしかにテレビなどで特集される冬うたや夏うたのランキングは、更新されずに昔の曲ばかりランクインしている印象があります。

zopp:夏うたについて聞かれると「TSUNAMI」「真夏の果実」(サザンオールスターズ)「夏色」(ゆず)……となるのは、メディアで流れてくるので自然と聴いていて、頭に残っているから。必然的にランキングに入るのはこれまでのヒット曲ばかりで、特に2010年代になってからは本当に無くなった気がします。それを強く感じるのは、僕が20歳くらい歳が違う女の子たちと音楽の話をしている時。あまりジェネレーションギャップを感じないんですよ。「どんな音楽が好きなの?」と聞くと、ZARDや松田聖子が好きだという子も多くて。今のティーンエイジャーの子たちからしてみたら、2世代くらい前の音楽がいまだに残っていて、次の世代になっても残るだろうという予感すらします。こういう状況が続くと、若手のクリエイターやシンガーが日の目を見づらくなって縮小していくのが心配なところで、音楽のちょっと危ない時期が見えてきている。若者が車を買わない、免許を取らないというのと同じくらいかそれ以上に、“若者が音楽を買わない”というのはスタンダードなのかもしれません。今後はライブ性があったり、分かりやすく尖ったアーティストが残っていくんだろうなという気はしますね。もちろん、まだまだそうではない音楽もしっかり受け継がれてはいますが。

ーー最新のオリコンチャートを見ても、夏の歌が少なく感じます。2017年上半期のレコチョクランキング(参考:2017年上半期チャートに見るJ-POPの現状とは? 有識者3人の座談会)などで2016年発売の「恋」(星野源)が1位であることからも、1つの楽曲が長いスパンで聴かれるようになっているのかな、とも思うのですが。

zopp:最近、山下(智久)くんと亀梨(和也)くんの亀と山Pが音楽番組に出ると「背中越しのチャンス」と一緒に、僕が作詞した「青春アミーゴ」(修二と彰・2005年)を歌ってくれることがあって。カラオケとかでも「青春アミーゴ」を歌っている人が多いと聞くので、もちろん嬉しいですが、新しいものより懐かしい方に行っちゃうんだな、と。これは昔の曲の方がメロディが歌いやすいのもあります。僕も作詞してて思うんですけど、難しいんです、最近の曲って。

ーー難しい、というと?

zopp:1番と2番でメロディが変わっていたりとか、構成が複雑化してメロディが統一されなくなっているので、書く側も大変ですし聴く側も覚えづらくなっています。お皿を洗いながらでも口ずさめるメロディというか、日本人の琴線に触れるメロディが減りましたね。

ーー最近はカラオケでの歌いやすさを考えなくなっているんですね。カラオケのランキングも上位はずっと同じ曲ですし。

zopp:だから、最近の曲の中でも星野源さんは歌いやすいと思います。アレンジはシティポップのような感じで安心できますし、歌詞もタイトルも難しすぎない。「恋」は“恋ダンス”の効果だけでなく、メロディが口ずさみやすいというのもあって人気があるんでしょう。複雑で凝った曲は歌詞を乗せると歌いづらくなってしまいますが、最近はアイドルの場合でも、歌いやすいベタな曲は選ばれにくい。特に最近は海外の作家さんも多くなってきたので、日本語を乗せるイメージでメロディを作ってないんですよね。日本語を入れにくい細かいメロディがあると、そこには英語詞を入れることになる。でも、サビの頭の歌詞が英語だとキャッチーではなくなって、日本人の印象には残りづらくなります。

ーーアイドルの楽曲も、構造やメロディを複雑にしたほうが評価されるようになってしまっている。

zopp:そうなんですよね。アイドルだけでなく評論家も、ベタなものを評価すると自分が普通だと思われてしまうから尖らないといけない、と思っているような気がします。みんな尖っているからといって尖ったら、埋もれてしまう。むしろ尖っている中でちょっと丸まっている方が目立つんじゃないかと思いますが、尖っている方が評価しやすいし、説明しやすい。

ーー尖っている方が一定の人気を得るところまではいきやすいけれど、それ以上の域に達するのは難しいのかもしれません。

zopp:今はむしろ「フライングゲット」(AKB48)のような、分かりやすいアイドルソングを作れなくなっていて、誰でも歌える楽曲がなくなってしまった気がします。今は好きか嫌いかはっきりしないといけないとされる時代なんですけど、どちらでもなくてどちらでもある、というのは最近あまりないところかなと思っていて。そこを攻めていくのは、ある種尖っていることになるのかもしれませんーーそう考えると、以前は季節の歌を歌って“尖る”ことが精いっぱいだったのかもしれないですね。

■「ベタだけどしっかり絵が見えるような物語性のある歌詞は、聴いていて面白い」

ーーなるほど。夏うたの話に戻りますが、尖っているというか、印象的な曲は何かありますか。

zopp:『関ジャム』でも挙げた「夏の思い出」(ケツメイシ)が自分の中で印象深いんですけど、KinKi Kidsの「ジェットコースター・ロマンス」もとても好きで。あの“THE 昭和”な歌詞というか、“仲間たちとわざとはぐれて夕方の海を見に行く”というベタだけどしっかり絵が見えるような物語性のある歌詞は聴いていて面白いし、わくわくします。

ーーサビ頭の<波はジェットコースター>などは、キャッチコピーのようで特に印象的です。

zopp:あの歌詞は松本隆さんが好きなものだと思いますね。山下達郎さんのメロディも終始良いですし、比喩表現が独特なのも楽しい。一見分かりづらい比喩表現と分かりやすい物語が融合しているから、ベタな物語でありながらベタにならない。これは自分の作詞スタイルにも近いんですが、複雑ではないけど物語がしっかりあって、その中でどういう情景をどういう言葉で切り取るのか、というのはベテランの作詞家さんのテクニックだろうなと思っています。

ーーzoppさんが青春時代に聴いていた夏うたは、どんなものがありますか。

zopp:SPEEDの「Body & Soul」とか、あとはT.M.Revolutionも聴いてました。当時は歌番組を見て、次の日にみんなで語るというのが普通で、まさに音楽全盛期でしたよね。経済的にも将来的にもあまり不安がなかったから、音楽も面白いものを作れていましたけど、今は将来に不安を抱いてるがゆえにちょっと悲しい、重い歌が多いですよね。でも“おバカ”や“エロ”が大々的に許されるのは夏だけなんで、ビビらないでもっとそういう曲を作ってほしいです。長く聴かれるアーティストって格好良さと“おバカ”とか“エロ”な部分、両方とも持っているんですよ。星野さんもそうですけど、パイオニアは桑田佳祐さん。あとはMr.Childrenの桜井和寿さん、福山雅治さん……。関ジャニ∞が人気なのもそういった二面性があるからでしょうね。

ーーそういう意味で関ジャニ∞の「罪と夏」は、まさに“夏うた”ですよね。他に夏うたの中で面白いと感じたものはありますか。

zopp:最後に印象に残っているのは「ポニーテールとシュシュ」(AKB48)。秋元(康)さんのすごいところは、真面目っぽい中にちょっと“エロ”を彷彿とさせる歌詞を作るところ。ORANGE RANGEの「イケナイ太陽」などもそうで、特に男性アーティストの場合、“エロ”なところを出さないと同性のリスナーから好かれないし、異性も上辺だけの爽やかさと格好よさだけでなく、“おバカ”で“エロ”なところを見たい。僕も来年はものすごく“おバカ”な歌を作ろうと思っています!

(取材=中村拓海、村上夏菜/構成=村上夏菜)

リアルサウンド編集部

最終更新:8/12(土) 13:00
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