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脳とは「記憶そのもの」だった。「記憶のメカニズム」の詳細が明らかに

8/13(日) 12:30配信

WIRED.jp

記憶と脳の関係、そして記憶のメカニズムの詳細を明らかにする論文が発表された。研究結果によると、記憶とは「脳に蓄積される」ものではなく、脳が「記憶そのもの」であり、脳細胞やシナプスなどが「時間を理解」しているのだという。

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あなたのとっておきの記憶を思い浮かべてみてほしい。大事な試合での勝利、子どもの顔を初めて見た瞬間、恋に落ちたと気づいたあの日。その記憶は、ひとつの事象ではないはずだ。記憶を再構成する際、人は匂いや色彩、だれかのおかしな発言を思い出し、それらに対して抱いたあらゆる感情を追体験する。

脳は、こうしたミリ秒単位の印象をかき集め、つなぎ合わせて、モザイクをつくりだす。その能力が、あらゆる記憶の基礎だ。延長して考えると、「あなた自身」の基礎でもある。

これは、単なる形而上学的ポエムではない。どんな知覚経験も、ニューロンの分子に変化を生じさせ、ニューロン同士の接続を再編する。つまり、脳は文字通り記憶でできていて、記憶はつねに脳をつくり替えているのだ。

脳内の細胞やシナプスは「時間を理解」している

記憶と脳の関係についてのこうした理論的枠組みの歴史は古い。そして、2017年7月19日付けで『Neuron』誌に掲載された広範な最新のレヴュー論文では、さらに詳細なメカニズムが論じられている。記憶が存在できるのは、脳内の分子、細胞、シナプスが「時間を理解している」からなのだ。

記憶を定義するのは、時間を定義するのと同じくらい難しい。広義では、記憶とはシステムに起こった変化であり、そのシステムの将来の働きを変化させるものと定義される。「典型的な記憶とは、過去のある時点で活発だった脳の複数の部位のつながりが、再び活性化することでしかないのです」と語るのは、論文共著者のひとり、神経科学者のニコライ・ククシュキンだ。そして、すべての動物のみならず多くの単細胞生物でさえも、なんらかのかたちで過去から学ぶ能力をもつ。

たとえばアメフラシ(海に棲む軟体生物)だ。進化の観点からいえば、アメフラシとヒトは途方もなくかけ離れている。しかしどちらもニューロンをもち、アメフラシも、ヒトと同様に記憶のようなものを形成することができる。アメフラシのエラを刺激すると、アメフラシは次に恐ろしい指が近づいてくるのを見た場合、最初よりも早くエラを引っ込めるようになる。

研究者たちは、アメフラシがエラを引っこめることを学習した際に、シナプス結合が強化されることを発見し、さらにこの変化をもたらす分子も発見した。驚くべきことに、ヒトのニューロンにも、これに似た分子がある。

一体これが、あなたのとっておきの思い出とどう関係するというのだろう。「ニューロンのユニークなところは、何千というほかのニューロンと、それぞれが非常に特異的なつながりを築くことができることです」と、ククシュキンは言う。こうしたつながりをネットワークにするのは、これらの特異的なつながり、すなわちシナプス(ニューロン同士の接合部)が、信号の強弱によって調整されるためだ。つまり、あらゆる経験(エラをつつかれる経験も含む)には、ニューロンのつながりの相対強度を変化させる力があるのだ。

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最終更新:8/13(日) 12:30
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