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「センターの神様」を信じる横浜高・増田珠。涙はなし、プロで会おう

8/13(日) 8:20配信

webスポルティーバ

 センターのポジションにたどり着いた増田珠(ますだ・しゅう)は、おもむろにバックスクリーンに向かって深々と頭を下げる。1秒、2秒、3秒......、じっと動かない。時には10秒以上もお辞儀したまま、頭を上げないこともある。

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 増田はこのとき、「センターの神様」に挨拶し、祈っているという。

「バックスクリーン全体を見ながら、甲子園のセンターの神様に『また戻って来られました』と挨拶して、『夏の大会でいいプレーができますように』と祈るんです。甲子園の神様に好かれたらいいなと思って(笑)」

 まだニキビの残るあどけない顔立ちで、真っすぐこちらの目を見て言われたら、その存在を信じずにはいられなくなる。もし増田が「サンタクロースはいる」と言えばいるのだ。そう思いたくなるような純真さ、真っすぐさがある。

 甲子園に出る選手、とりわけドラフト候補ともなると、なかには「スレ」を感じる選手が出てくる。何度も繰り返される同じ質問、勝手につけられる的外れなキャッチフレーズ、自分ばかりが注目されることで起きる周囲との摩擦......。自然と言葉に張りがなくなり、つまらなそうに受け答えする選手が何人か現れるものだ。しかし、増田にはそんなスレを感じたことが一度もない。

 増田はメディアに「どんな選手になりたいですか?」と問われると、いつもこう返している。

「小さい子どもに夢を与えられるような、『増田のような選手になりたい』と言われる選手になりたいです」

 多くの高校野球ファンは増田のことを「横高(よここう)らしくない選手」と評する。横浜といえば、かつて渡辺元智監督、小倉清一郎部長の名コンビによって、数々の金字塔を打ち立てた。能力の高い選手が緻密な野球を実行し、勝利に近づく。自由奔放な選手よりも、高度な技術を仕込まれた野球IQの高い選手が重大な任務を遂行するようなイメージが強い。

 しかし、時代は変わった。若い平田徹監督が就任して以来、往時の横浜らしさを残しつつ、より選手をスケールアップさせるチームカラーになっている。天真爛漫な増田は「平田野球の申し子」と呼べる存在なのかもしれない。

 4万7000人の大観衆で埋まった秀岳館(熊本)との1回戦。試合前の取材で増田に聞いてみた。「この試合で初めて増田選手のことを見る野球ファンもいると思います。そんな人に自分のどんなプレーを見てもらいたいですか?」と。増田はやはり真っすぐこちらを見つめて、こう答えた。

「野球を楽しんでいるところですね。『こんなに楽しんでいる人がいるんだ!』と思うくらい、元気ハツラツとした、全力のプレーを見せたいです」

 そして、いざ試合開始を告げるサイレンが鳴ると、「新生・横浜」の良さと悪さがともに顔を出す試合になった。

 この試合で横浜が記録した残塁は0。一見、効率がいいように思えるが、その中身は今の横浜を象徴していた。出塁した8人のランナーのうち、4人は本塁に生還したものの、残りの1人は併殺打、そして3人は走塁死した。

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