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星野源、乃木坂46が複合チャートで急浮上 最新曲の注目すべきポイントは?

8/13(日) 14:00配信

リアルサウンド

【参照:ビルボードジャパン チャート・インサイト(2017年8月14日付)】(http://www.billboard-japan.com/chart_insight/)

 8月14日付のビルボードチャート。1位はHKT48の「キスは待つしかないのでしょうか?」、2位はBOYS AND MENの「帆を上げろ!」と、上位2曲はオリコンチャートと同様の結果ながら、それ以降はフィジカル作品の売り上げに加えて、ダウンロード/ストリーミング再生回数、動画再生回数、Twitterのつぶやき数などを合算するこのチャートならではのものになっている。その中でも、複合チャートならではの結果をいくつか取り上げてみたい。

 リリース前の楽曲では、MVを公開した星野源の「Family Song」が動画再生数で2位にランクインした他、ラジオオンエア数でも5位につけ、総合チャートで先週の73位から14位へと大幅にランクアップ。TVドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系)の主題歌としてオンエア中のこの楽曲は、家族をテーマに「恋」よりもクラシックな60年代末~70年代初頭のソウル・ミュージックとJ-POPらしい歌心がひとつになっていて、彼が『YELLOW DANCER』以降追求する、日本ならではのソウル・ミュージックのさらなる成熟を伝えるようだ。また、MVでは日本の家族の原風景のひとつ=サザエさんを連想させるちゃぶ台が置かれた家族の団らんを描写。そのうえで、本人に加え高畑充希、藤井隆らが揃うMV出演者の多くの性別が男女逆になっていたり、建物から小物まで一面ピンクに塗られたセットの中で、植物や金属を組み合わせた人型の置物が人と同じように元の色を残していたりと、世帯によってひとつひとつ異なる家族のかたちや、その多様性を祝福するようなメッセージが表現されている。

 海外の音楽をエッセンスとして取り入れながら、J-POPならではの魅力もあわせ持った楽曲としては、乃木坂46の「逃げ水」もフィジカル作品の集計期間前ながら、ダウンロード販売の開始を受けて総合10位に。この楽曲はTwitterのつぶやき数でも7位につけているが、これはサビ前に突如無音になり、印象派の作曲家クロード・ドビュッシーの「月の光」が挿入されるという奇抜な楽曲展開が、SNS上で話題になった結果でもあるだろう。同時にAメロ、Bメロ、サビを含む楽曲全体の雰囲気は、このグループらしい魅力を持った正統派のポップ・ミュージック。ドビュッシーの「月の光」が収められた『ベルガマスク組曲』は陽気に振る舞う人物が心の内に抱えた孤独や哀しみを描くポール・ヴェルレーヌの詩「月の光」からの影響を指摘されるのに対して、「逃げ水」では追いかけると消えてしまう逃げ水を「叶わなかった夢」になぞらえ、少しの儚さを宿した日本的な夏の風景を連想させてくれる。

 フィジカル盤の売れ行きが強い傾向にあるアニソン作品では、『ラブライブ!サンシャイン!!』の4曲A面シングルから、桜内梨子(cv逢田梨香子)、国木田花丸(cv高槻かなこ)、小原鞠莉(cv鈴木愛奈)による「夏への扉 Never end ver.」が総合12位に。夏のはじまりや高揚感をテーマにした楽曲は、ラテン風のイントロを経て2番にはヘヴィなギターに乗せたラップも挿入され、フル尺で聴くと様々なアイデアが詰まっている。フィジカルの4位に加えてダウンロード/ストリーミング数などの合算でも15位を記録。ボイスドラマパートがCD限定という状況でのこの結果はライト層による楽曲購入の多さもうかがえるため、昨今のアニソン人気の広がりを改めて感じる結果と言えるかもしれない。

 また、このチャートでより顕著に表われる特徴のひとつ、リリース日に関係なくチャートにランクインするロングセラー楽曲の中では、TWICEの「TT」がラインクイン10週目ながら動画再生数、Twitterのつぶやき数、それらを合算したBUZZチャートでそれぞれ1位になり、先週の9位からふたたび順位を上げ総合5位に。日本デビュー以降の人気の広がりや「踊ってみた」動画などの盛り上がりがチャート結果を後押ししている。また、ゆずの「夏色」は1998年の楽曲ながら、8月2日放送の『FNSうたの夏まつり』(フジテレビ系)でのNissy(西島隆弘:AAA)とのコラボレーションが話題になり20位に急浮上した。洋楽では世界でストリーミング再生数の史上最多記録を更新中のルイス・フォンシ&ダディー・ヤンキーの「デスパシート」に、ジャスティン・ビーバーが参加したリミックス・バージョンがラジオオンエア数を中心に日本でも話題になり、チャートイン10週目ながら39位につけている。

 フィジカル作品の売り上げ以外の価値基準も含むチャートでは、発売日に限定されない世間の関心や季節ごとの楽曲への興味など、より多角的な価値観が結果に反映されていく。それぞれの楽曲は様々な音楽要素を含んでいるため、そこから広がる新たな楽曲との出会いもあるだろう。本来は数値化しがたい人々の“関心/ムード”を可視化するこのチャートの結果を入り口に、まだ聴いたことのない音楽への興味を広げてみるのもいいかもしれない。

杉山 仁

最終更新:8/13(日) 14:00
リアルサウンド