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『うつヌケ』作者の真骨頂は“下ネタ”にあり。こだわり続けた理由とは?

8/14(月) 8:00配信

BEST TIMES

自身も鬱病を患い快復した経験をもち、同じく経験者たちにインタビューを重ねた漫画『うつヌケ』がベストセラーに。『うつヌケ』で初めて作者・田中圭一氏を知った読者には意外に思われるかもしれないが、田中氏の真骨頂は“下ネタ”にある。そのこだわりを聞いた。

「絶滅危惧種的に、ファンからは大事にしてもらえているのかな」

――やはり、下ネタへのこだわりがあったということでしょうか? 

  デビュー当時はそれほど下がキツくはなかったのですよ(笑)。でも、結局、似たような作家がたくさんいる中で、自分の得意分野で勝負していかなければ勝てないですよね。これは大学でも教えていることなのですが、ジャンプでトップを取る人は子どもの頃からジャンプが大好きなんですよ。ガロの人がジャンプに来ることができないのは才能の差ではなく、何をインプットして育ってきたかの違いによるのです。僕はサブカルの中で生きてきた人間なので、自分の血肉になっているモノがまさにそれで、自分の引き出しが多いジャンルで戦うのが結局、一番強い。そして中高生の頃から下ネタが大好きだから(笑)、そこが自分の強みになるだろうと思っていました。

 一方、90年代くらいから、ストーリー漫画の中の必然性あるSEXはOKだけれども、単に扇情的だったり、笑いのためのエロは駄目という風潮になってしまった。そこをやる人が少ないんだったらやろうと。劇画チックで、チ●コマ●コで笑いを取る、みたいな作品は意外にネット上にも雑誌にも見当たらない。みんな自主規制しているのですよ。そういう意味では絶滅危惧種的に、ファンからは大事にしてもらえているのかなと(笑)。

隅っこならライバルがいないから長生きできる

――下ネタ作品を上梓するにあたって、何か抵抗というか、評価に対する不安みたいなものはなかったのでしょうか? 

 元々、手塚パロディを手掛けた段階で当然、センターではなく、隅っこに居場所を作ったという、そんな立ち位置にいましたからね。エロギャグマンガ家はいないし、そこの椅子が空いているから座れるわ、という感覚ですよ。はなからセンターに座る意識はないから、むしろ隅のほうに居場所を確保しておこうと。

 センターって結局、競争率が高いから、そこに10年間君臨する人などめったにいません。でも隅っこならライバルがいないから長生きできます。お笑い芸人もそうでしょうけれども、どセンターにやってきて短命で終わることはあまり良しとしないのですよ。漫画家ってちょっと当たれば年収が億単位というのも可能な世界ですが、1億円が3年で終わるより年収500万円で20~30年食っていったほうが幸せですよ。大型書店に平積みでドーンとなるけれども、3年後に1冊も店頭に出ていないより、ビレバンの片隅に長く置いてあるほうが良いですよ。長く愛されるためには隅っこのほうで、ライバルがいないジャンルのほうで描き続けていたほうが良いにきまっています。

 最近は、オフィシャルなパロディみたいな作品も登場していますよね。『北斗の拳』とか『プレイボール』の続編とか。でも僕にとっては、オフィシャルではなく、常にカウンターのほうが面白い。だって(c)がついちゃうと、キャラクターに「69させてください!」っていわせるわけにはいかないでしょう(笑)。ぜったい、無理ですから。それではつまらないですからね。

取材・文:伊藤秋廣 写真:花井智子

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