ここから本文です

ヤマハ、「電子ピアノ」20年ぶり大改良の理由

8/14(月) 6:00配信

東洋経済オンライン

 20年ぶりとなる電子ピアノの大型改良で生まれたのは、ヤマハの”本気”が詰まった新製品だった。

この記事の写真を見る

 楽器大手のヤマハは、電子ピアノ「クラビノーバ」の上級シリーズにおいて、6月から「グランドタッチ鍵盤」という新たな鍵盤機構を搭載した新製品を順次発売した。価格は28.8万~42万円と高額だ。

 グランドピアノやアップライトピアノといった、昔ながらのアコースティックピアノは、鍵盤を押すと、その先にあるハンマーが動いて弦をたたき音が鳴る。弦がない電子ピアノにとっての鍵盤は、電子音源を発するためのスイッチのような役割だ。

■鍵盤機構の改良でグランドピアノへ近づけた

 今回ヤマハは、20年ぶりに鍵盤機構を大幅に改良し、グランドタッチ鍵盤を作り上げた。目指したのは、電子ピアノを弾いたときの感触をグランドピアノに近づけることだった。

 多くのピアノ曲はアコースティックピアノのために作られたもので、特にクラシック音楽ではその傾向が強い。演奏者が思い通りに曲を表現するには、グランドピアノのような音やタッチ感が重要となる。

 音源に関しては、ヤマハのグランドピアノはもちろん、2008年に買収したオーストリアの高級ピアノ、ベーゼンドルファーの音も採用するなどしてきた。

 鍵盤機構は、20年前に開発されたものをベースに、打鍵を感じるセンサーを改良・増設したほか、白鍵に木を埋め込んで見た目も感触もアコースティックに近づけるといった取り組みを続けてきた。

 「だが改良をやり尽くし、限界を感じた」。技術開発部の市来俊介主幹は頭を抱えた。そこで鍵盤機構そのものを見直し、一新することにした。そうしないと、物理的な「グランドピアノらしさ」を実現できないと考えたからだ。

 これまでグランドピアノと電子ピアノの感触を隔てていたのが、たたいたときに鍵盤が沈む「深さ」だった。ここが改良のポイントとなった。

 グランドピアノは大きな音を出すために、鍵盤から支点部分までの距離が長く取っている。奥行きがあるのはそのためだ。これによって鍵盤もより深く沈む。今回の改良では、電子ピアノでも、鍵盤の端から支点までの距離を従来より長くした。

 白鍵の端を押したときの深さは、アコースティックでも電子でも10ミリメートル程度で同じ。感触の違いを大きくしているのは、白鍵の奥側を押したときの鍵盤の沈む深さだった。

 中型のグランドピアノで白鍵の奥側を押すと鍵盤が4.5ミリ沈む一方、ヤマハの従来機構の電子ピアノでは3.3ミリしか鍵盤が沈まず、感覚が重かった。新たなグランドタッチ鍵盤では支点の位置を鍵盤から遠くしたため、白鍵の奥の部分をたたいても4.5ミリ沈むようになった。

1/2ページ