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ベイスターズ捕手陣の父親的存在。光山英和コーチの求心力、関西弁。

8/14(月) 11:31配信

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 ベイスターズのチーム全体練習は、18時プレーボールであれば、たいてい14時ごろから始まる。

 だが正午にはすでに、横浜スタジアムで汗を流す幾人かの選手がいる。主にキャッチャーの面々だ。座った状態からの二塁へのスローイングやワンバウンドのボールを前に落とすブロッキングなどは、彼らだけに求められる動き。精度を少しでも向上させるべく、全体練習の2時間も前から、試合開始の6時間も前から個別の練習時間が設けられている。

 戸柱恭孝や嶺井博希、高城俊人ら、ベイスターズ捕手陣をつきっきりで見ているのは、バッテリーコーチの光山英和だ。戸柱が「家族より長い時間を過ごしている」と話すほど、彼らは朝から晩まで行動を共にし、各々の成長のため、チームの勝利のために練習に励み、そして語り合っている。

野茂英雄の球を受けた光山は言葉に「力」がある。

 光山の名鑑データは、185cm、95kg。姿勢よく立ち、腕組みが似合う51歳である。

 現役時代、野茂英雄の球も受けた近鉄バファローズをはじめ、日韓6球団を渡り歩いた。解説業を挟み、ライオンズで3年間、一軍バッテリーコーチを経験。昨シーズンから現職に就く。

 その多彩なキャリアは、言葉に「力」を与えている。言葉とは、文字で書き起こせるものだけを意味しない。口調や表情、要は伝え方全般が巧みなのだ。

 それを思い知らされたのは、2016シーズンの戦いをまとめたドキュメンタリー『FOR REAL―ベイスターズ、クライマックスへの真実。―』に収められたワンシーンを見た時だった。

「昨日までがとか、明日がどうとか、違うねん!」

 1勝1敗で迎えたCSファーストステージ第3戦の直前、光山が全員の前で話す場面がある。輪の中心に歩み出ると、こう言った。

 「みんな、ここまでほんとに、気の狂うような頑張りでここまでこれた。でも、今日負けたら最後という試合の中で、みんなが何ができるのか。昨日までがどうやったとか、明日がどうとか、違うねん。今日の試合、この日の試合のために今年1年あったと思ってみんな戦ってくれ。わかった? OK? おし行こう!」

 途中の「違うねん」で心が鷲づかみにされた感覚がする。こういう時にぽろっと混ぜ込まれた関西弁は、ずるいぐらいに沁みる。ラストはたたみかけるようにトーンを上げる。画面越しにでも、選手たちの士気がいっきに高まるのが見て取れる。これも指導者の大事な技術、あるいは資質であろう。

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最終更新:8/14(月) 11:31
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