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古代戦士 vs 幻狼!? 古都発のローカルプロレス団体「なら万葉プロレス」

8/16(水) 16:00配信

HARBOR BUSINESS Online

 日本の歴史・文化発祥の地といわれる奈良県。日本最多の史跡をもつことから(文化庁調べ)、近隣の大阪府や京都府に次いで観光客数が増えている。

 ローカル(ご当地)プロレス団体が存在し、地域密着型の活動を続けている。

 なら万葉プロレス。覆面レスラーの「マホロバ」が主宰者だ。

 マホロバは学生プロレスを経て海外でデビュー。大学卒業後は世界を放浪するバックパッカーだったが、あるレスラーから声をかけられたことで復帰。

 そして、父親でもあるマホロバは子どもが犯罪に巻き込まれることが少なくない昨今、何ができるを考えた。そして父と一緒に観たプロレスを思い出し、プロレスによる地域活性化を志した。

 橿原青年会議所からの呼びかけで、2008年10月11日、奈良県・橿原神宮公苑で旗揚げ。橿原神宮は初代天皇とされる神武天皇と皇后を祀っている神社で、1890年(明治23年)に立てられた官幣大社だ。

 プロレス団体の旗揚げは、体育館やホールなどで華々しくおこなわれることが多いが、皇族ゆかりの地で産まれた団体はおそらくなら万葉だけだろう。

◆ハニワからラーメンまで、個性豊かな選手たち

 ローカルプロレス団体の例にもれず、選手は奈良県にちなんだキャラクターばかりだ。

 埴輪(ハニワ)をモチーフとした「ぐらん・ハニワ」。出身地ならぬ出土場所は奈良県高松塚古墳、生年月日ならぬ推測製造時期は縄文時代。多少若めにサバを読んでも1500歳ほどになる、文字通りの古豪選手だ。

 得意技は、片手をあげたハニワポーズで倒れ込み拳を落とす「フィストドロップ」や、美しい弧を描く「縄文スープレックス」など、クラシカルならぬヒストリカルなファイストスタイルだ。

 古代ではなく近代の歴史をモチーフとした選手もいる。名前は「月光ウルフ」。なぜ奈良でオオカミ? と思っただろう。奈良県東吉野村は、1905年1月最後にニホンオオカミが捕獲された場所なのだ。絶滅は確定しておらず、生存の可能性が消えていない幻の動物だ。

 ご当地ネタといえばグルメだって外せない。「天理ラーメンマン」は、宗教都市として知られる天理市のご当地ラーメン。スープは豚コツと鶏ガラベース、具は炒めた白菜や豚肉などを用いる濃厚ラーメンだ。

 この他にも、奈良県民しか分からないようなローカルなネタをモチーフとした選手ばかりで、ひとりを除き全員マスクマンなのも特徴だ(そのひとりですら顔にペイントをしている)。

◆素顔のときでもリングネームで呼ばれるほどの浸透ぶり

 なら万葉は、少しでも多くの人に楽しんでもらうため入場無料のイベントプロレスで大会を開催している。

 ボクササイズやダンスを学べるスタジオに満員の観客を詰め込んだ定期戦を開催することもあれば、大型ショッピングモールの吹き抜け広場にリングを設置することもある。

 野外会場での開催も珍しくない。天理駅前の古墳モチーフの野外ステージ「コフフン」や、本物の古墳・壁画が眠る国営飛鳥歴史公園での「古墳プロレス」も開催した。

 地方で活動するプロレスラーの多くは仕事を別にもち、プロレスに取り組んでいる。それは主宰者のマホロバも同じで、小泉純一郎政権下で民営化された、物流・金融会社に勤めている。

 活動を頑張りすぎて「職場バレ」してしまったが、奈良県民なら誰もが知る場所で大会を開催してきた実績が認められ、ストップどころかバックアップを受けられるようになった。

 さらに地元のフリーペーパーでは「マホロバとして活動する●●さん」とまで紹介され、素顔の時でもリングネームで呼ばれてしまうこともあるそうだ。

 兼業レスラーをプロと認めない声があるのは事実だ。しかし、なら万葉が文化財といえる場所で大会を開催できるのは、レスラーやスタッフがその場所で闘う意義を知り、地元愛と誇りをもつ地元の人間だからこそだ。

 マホロバは、ローカルプロレス団体のあり方はメキシコに近いと語る。地元の選手がファンのために闘い、秀でた選手はさらに大きな舞台へ移っていくのだと。

 その言葉通り、近年はローカル団体でデビューした選手でも実力が認められ、全国区の団体に移籍するケースが増えている。様々な事情ですぐ東京に行けない選手でも、まず地元の団体でキャリアをスタートできるようになり、裾野が広がっているのだ。

 「まほろば」とは「素晴らしい場所」を意味する古語だ。機会があれば、ぜひ奈良で彼らの試合を観て欲しい。奈良のプロレスファンにとっての「まほろば」がそこにある。

<文・たこやきマシン>

【たこ焼きマシン】

名古屋在住のローカルプロレス探求家。ローカルプロレスファンサイトたこ焼きマシン.com、スーパーたこ焼きマシン.comを運営。北海道から沖縄、台湾まで未知のプロレスを求め観戦に遠征する。ご当地プロレスラーガイドブック『ローカルプロレスラー図鑑』をクラウドファンディングで発行。オンラインストア。元・小中学校教員、障害者職業能力開発校講師。夢は世界中すべてのご当地プロレスを観戦しての『ワールドローカルプロレスラー図鑑』制作。

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最終更新:8/16(水) 16:00
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