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最速級のサメは人間の飽くなき欲望から逃げきれるか

8/31(木) 10:24配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

 アオザメは、短距離も長距離も得意な万能タイプのハンターだ。獲物を追うときのスピードは最高で時速55キロといわれ、短距離ならサメのなかで最速。生息域は熱帯から高緯度の海域まで広範囲にわたる。

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 だが、このサメは今、相当に苦しい状況に追い込まれている。スポーツフィッシングの愛好家たちから執拗に狙われ、はえ縄漁で頻繁に混獲されたりしてきたほか、アジアで珍重される食材として捕獲されているからだ。ただし、そうした苦境がどれほど深刻で、長期的にどんな影響が出るかは、今のところはっきりしていない。

 米ロードアイランド大学の海洋生態学者ブラッド・ウェザビーたちにわかっているのは、追跡装置を付けたサメたちの行方だ。追跡装置の信号がもし陸地から届いたとしたら、そのサメは捕獲されたことになる。「これまで49匹に追跡装置を付けましたが、そのうち11匹が殺されました」とウェザビーは言った。ずいぶん多いように感じると私が言うと、彼もうなずいた。

 海から戻った私は、この追跡プロジェクトを率いるマームード・シブジと電話で話をした。「私が驚かされるのは、海は広く、アオザメは長距離を移動するというのに、装置を付けたサメの実に25%が釣られてしまったということです」とシブジは言った。「毎年25%ずつ捕獲していたら、どんなサメ漁だって長続きはしませんよ」

米国各地でサメ釣り大会

 私はメリーランド州で毎年開かれているサメ釣り大会「アオザメ・マニア」を取材した。米国全体で見ると、アオザメやオナガザメ、イタチザメといった外洋にすむサメを釣る大会が、ほかにも65ほど開かれている。

 マリーナに到着したのは、その日最初のサメが波止場に水揚げされているときだった。それはまるで祭りのような光景で、何百人もの人々が飲食を楽しみ、釣り人とその釣果に喝采を送る。

 66キロのアオザメ、211キロのオナガザメ、227キロのオナガザメ、79キロのアオザメ……捕獲されたサメたちが続々と水揚げされるなか、私は大会の主催者であるショーン・ハーマンと話をした。

 魚を殺して、その大きさを競う大会の是非について話が及ぶと、彼は自分の大会は昔のものとは違うのだと説明した。この大会では、マリーナに持ち帰るのは味に定評のあるオナガザメとアオザメだけだ。一定の大きさに達していないサメは放さなくてはならないし、1日に釣ることが許されるのは、1隻当たり1匹だけだ。

 だが、大会に問題が潜んでいることは明らかだった。私はその日、妊娠した227キロのオナガザメが水揚げされたことを、ある釣り人から聞かされた。その腹を切り開いたとき、中から出てきたサメの子たちを大会スタッフが必死で見物客から見えないようにしていたという。

 妊娠したサメのことをハーマンに尋ねてみた。彼がその事実を否定したので、私はあるスタッフに聞いてみた。すると彼は「はい」と認め、長さ50センチから1メートルの子が3、4匹いたと言った。私はハーマンのところにとって返し、なぜ否定したのかとただした。

 彼は少し慌てながら、記事の中で「悪者」にされたくなかったからだと答えた。「私たちは法を守り、法が持続可能だとする方法に従って大会を運営しています。違法だとなれば、私たちだってやめますよ」

※ナショナル ジオグラフィック9月号特集「大洋の稲妻 アオザメ」より抜粋。

Glenn Hodges/National Geographic

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