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「相手の面前で弱気を出してはいけない」加藤一二三氏の“強気”を支えた聖書の言葉

2017/9/4(月) 12:00配信

BEST TIMES

6月に現役を引退した、将棋界のレジェンド・加藤一二三九段。77歳まで戦い抜いた氏が、常に胸に持っていた言葉とは? 

「勇気を持って戦え」「相手の面前で弱気を出してはいけない」「あわてないで落ち着いて戦え」という3つの言葉

 座右の銘は「勇気を持って戦え」「相手の面前で弱気を出してはいけない」「あわてないで落ち着いて戦え」という3つの言葉ですね。

 これらは旧約聖書の言葉です。この言葉ができた背景には、イスラエル民族が周りの民族と闘う時の心構えとしての教えらしいのですが、私も将棋の勝負の際には意識して心がけていました。

 この言葉を知ったのは42歳、名人を決める決戦直前でしたね。

 例えば「勇気を持って戦う」、これはその言葉どおりです。なかでも「相手の面前で弱気を出してはいけない」という言葉、これがとても大切なんです。といいますのも、対局の際にこちらが弱気ですと、相手の指した手がすべて「相当な確信を持って指している」と思いこんでしまうんです。

一度弱気になるとはまり込んでしまう

 私と若手棋士との対戦を例にあげましょう。最近の若手棋士たちは、複数人で集まって研究会をしている方が多いそうです。みなで指し方や戦略を研究しているわけで。私も彼らが「研究会を開いている」という背景を知っていますでしょ。そうすると、こちらが弱気になっているときに、相手が見たことない手を指すといろいろと思ってしまうわけです。「これは見たことがない手だけど、彼らが研究会でテスト済みの手ではないか」、「相当な自信を持って指したのではないか」、このように思ってしまうんですね。

 本当はそうじゃないこともあるんですよ(笑)。実際は共同で研究したといっても、なかなか明快な答えが出るものでもないですから。しかし、弱気になっていると相手の一挙手一投足が、自信に裏打ちされたものという風に思いがちなんですね。

 つまり、そういった心配は“ 弱気”のなせるわざなのです。ですから、対局をする際には、決して弱気になってはいけません。これは大きな弱点になりますからね。反対に、こちらが“ 勇気”を持って戦いますと、見たことがない手を打たれても、例え困難な状況になっても、スイスイスイと乗り切っていけるような気持ちになるんですね。こちらが自信あり気に指すと、相手が勝手に深読みしてくれる可能性もありますから。

 ですから、弱気になってはいけませんし、勇気もとても大切。そして、それらがないと落ち着いてあわてない戦いもできません。

 この座右の銘を胸に戦い、42歳に初の名人位を獲得することできました。

明日の第二回の質問は「Q2.「負けパターン」のようなものはあったのでしょうか」です。

構成:加藤純平 写真:河野優太

最終更新:2017/9/29(金) 19:27
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