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育成年代のサッカー少年に戦術を教えるのは是か非か?

9/4(月) 19:30配信

footballista

個性は型にはめないことで育つ。戦術という枠組みも選手を縛る足かせになるのではないか―― 近年の日本の育成年代でよく議論されているテーマを、アヤックスアカデミーやオランダ代表U-13・14・15を担当する育成年代の専門家、白井裕之さんに聞いてみた。


インタビュー・文 浅野賀一



年代別の育成モデル
技術も組織プレーも両方大事。年齢によって両者の比重を変えていく


──最近、日本では「育成年代に戦術を教えるのは是か非か」というのがテーマになっています。オランダではどう考えられているのでしょうか?

「オランダではあまり議論にならないテーマですね。なぜ、そういう議論が起こっているのでしょう?」


──例えば、小さい頃から子供を戦術という枠に当てはめてしまうと個性が消されてしまうのではないか、教え過ぎると自由な発想がなくなってしまうのではないかというのがデメリットとして挙げられていますね。

「まず戦術をどう定義するかですね。さらに言えば、育成年代とは具体的にどの年代を指すのか。それを明確にしなければ議論になりません。もし子供のサッカーではボール扱いやドリブル“だけ”を重視すべきで、組織プレーは教えるべきではないという問いであれば、オランダの答えはNOです。ボール扱いも組織プレーも両方大事です。ただ、年齢によって両者の比重を変えていくイメージですね。オランダではサッカー協会が年代別のトレーニング目標を明確に設定しています。U-7ではボールコントロールの習得、ボールにたくさん触って感覚を養う時期ですね。U-9では敵のゴールへ個人でドリブルして攻撃することを意識するようになり、U-11で味方とパスを介して連係して得点するプレーを学んでいきます。ここまでの年代は攻撃、守備、攻⇔守の切り替えのチームファンクションの中でいえば、攻撃と守備が中心になります。U-13で攻⇔守の切り替えを含めた4つのチームファンクション別に設定されたチームタスクや、それを落とし込んだ各ポジションの役割を習得します。U-15からは味方の個性に応じてチームタスクを調整できるようにし、U-17でチームとしてのプレーを完成させます。オランダサッカーではこのU-13~17年代で学ぶ、自クラブのフィロソフィを実現する方法全般を『戦略』と呼んでいます。そしてU-19の目的は、相手チームに応じて自クラブの戦略をアジャストさせて1シーズンのリーグ戦でどう結果を出していくか。この戦略をアジャストさせる行為を『戦術』と呼びます」


──これはどのクラブにも当てはまるものですか?

「いえ、あくまでオランダサッカー全体のガイドラインです。アヤックスのようなトップクラブでは固有の文化、フィロソフィに応じた別の年代別目標のガイドラインがあります。アヤックスに入ってくるのは国内のトップ層なので要求される内容やそれを身につける年齢が違ってきます。あくまで年代別の目標は習得すべきことの目安なので、指導者が身につけたと判断したら次のレベルに上げます。育成のスタートはどこで、ゴールはどこなのか、どの年代で何を教えるべきなのか、これらの全体像が共有化されているのがオランダサッカーの特徴です」


──オーバーコーチングの議論もないですか?
「U-11にいきなりU-15やU-17で習得する戦略を教えるのはオーバーコーチングです。ただすでに話したように明確な指導のガイドラインがありますし、それをクラブ内で共有しているのであまりそういうことは起きませんね」


──個人戦術とチーム戦術という区別は?

「日本でいうチーム戦術はオランダの戦略にあたるのかもしれませんが、U-11からは11人制なのでチームの枠組みでプレーするようになります。個人戦術が何を指すのかはわかりませんが、各ポジションでの選手のタスクを指すのでしょうか?」


──1対1で勝つ工夫、駆け引きみたいなものかもしれませんね。

「1対1の個人戦術、3~4人のグループ戦術、11人のチーム戦術という分け方をしているのかもしれませんが、オランダではそういう考え方はしないですね。戦略は11人が前提ですし、戦術も11人対11人を前提に考えます」


──その前提で目指すサッカーに応じてトレーニングするようになるわけですね。

「そうですね。例えば足が速い選手をどのポジションで起用するか。同じ[1-4-3-3]のチームオーガニゼーションであっても、カウンター戦略であればCFかもしれませんし、ゲームメイク戦略のポジショナルプレーならばウイングかもしれません。クラブのフィロソフィと戦略によって育成モデルも変わってくるわけです」


──で、U-19で相手に勝つためにプレーするようになると。

「日本では自分たちのサッカーという言葉がありますが、オランダでは自分たちの理想はもちろんありますが、同時に敵チームのレベルや戦略に応じて『いかに試合に勝つか?』を習得していきます。特に、U-19以降でその比重が大きくなっていきます。相手チームも自分たちのサッカーをやりたいわけですから、その上で状況に応じて戦略をアジャストさせなければならない。オランダではそこがサッカーの最も面白い部分と考えられています。ここまでできるようになれば、育成は卒業ということになりますね。大切なのは、担当しているチームの選手がどの年齢カテゴリーに属していて、何が要求可能で不可能なのかを指導者があらかじめ知っておくことです」

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最終更新:9/4(月) 19:35
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