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鹿島茂の映画コラム 名脇役映画館、上映中!── エリシャ・クック・ジュニア【前編】

2017/9/7(木) 21:52配信

GQ JAPAN

日本の映画俳優の名脇役をフィーチャーした著書を持つフランス文学者の鹿島茂さんが、今度は海外スターの名脇役に注目し、彼らの作品とともに彼ら自身を紹介していく連載がスタート。第1回目はエリシャ・クック・ジュニア。ご存知ですか?

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「第三人格」とは?

いまから12年前、『蘇る!昭和脇役名画館』(後に文庫化されて『昭和怪優伝』)と題した日本プログラム・ピクチャー俳優論を上梓したが、その序文で、私は次のようなことを述べている。

すなわち、個性的な敵役ないしは脇役のプログラム・ピクチャーを何本も見てゆくと、「劇中の様々なキャラクターが俳優その人のパーソナリティーに重なって、一種独特の人格が形成されることになる」が、それはいわば、モンタージュ写真のようなもので、劇中のキャラクターとも俳優の素顔とも異なる第三の人格をかたちづくっている。その「第三人格」を介して映画を論じられないものか、と。

この連載においては、この方法を洋画に適用してハリウッド、あるいはフランス、イギリスなどで量産されたプログラム・ピクチャーに登場する個性的な脇役や敵役をとりあげで、彼らの第三人格を論じてみたいと思っているのである。

では、連載第一回にだれを取り上げようか? エリシャ・クック・ジュニア(現在はアイライシャ・クック・ジュニアと表記するようである)という名前が頭に浮かんだ。

しかし、ただちに「待てよ」という内心の声がした。2017年の今日、1903年生まれのこの俳優のことを知っている人が果たしてどれくらいいるのだろうか? もしかして、だれも知らないのではないか?

そんな不安に駆られたので、ウィキペディアの日本版でエリシャ・クック・ジュニアを検索してみた。

で、結果は? 出演作は列挙されているが、肝心のコメントは以下の通り。 「エリシャ・クック・Jr(Elisha Cook, Jr)1903年12月26日-1995年5月18日」は、 アメリカ合衆国の俳優」

なんと、 これだけである。つまり、コメントはゼロに等しいということだ。あんまりではないか。可哀想すぎる。

しかし、よく考えてみると、これはいかにもエリシャ・クック・ジュニアにふさわしい扱いではないかという気もしてくるのだ。なぜなら、エリシャ・クック・ジュニアとは、一貫して「無に等しい」、ようするに五分の魂しか宿らない一寸の虫けらのような男を演じ続けてきた俳優だからである。

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最終更新:2017/9/7(木) 21:52
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