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名医たちが実名で明かす「私が患者なら受けたくない手術」

9/19(火) 17:00配信

現代ビジネス

焦ってやると必ず後悔する

 「私は外科医なので、様々な手術をしてきましたが、今は基本的に人の身体を傷つける手術は、できるだけ避けるべきだと考えています」

 こう語るのは、帯津三敬病院名誉院長の帯津良一氏(81歳)。そんな帯津氏が「自分が患者なら受けたくない手術」として挙げたのが食道がんの手術だ。

 「私が40代後半の頃、食道がんの手術をした患者さんに『先生だったら、この手術を受けましたか? と聞かれたことがあります。当時の私は手術こそが最も有効な手段だと思っていたので、自信満々に『もちろん受けますよ』と答えました。

 しかし、今はそうは思いません。あまりにも身体への負担が大きすぎるため、その後の患者さんの人生、QOL(生活の質)を大きく損なってしまうからです。特に首から上の手術をすると人相までも変わってしまう」

 健康増進クリニック院長の水上治氏(69歳)も同じ意見だ。

 「食道がんの場合、『食道亜全摘術』(食道とリンパ節を切除し、胃を持ち上げて残っている食道とつなぎ合わせる)という大手術になるため、医者の腕によって大きな差が出ます。

 中村勘三郎さん('12年、食道がんの手術後死去。享年57)のように、合併症の危険もある。術後死や後遺症を考えると、60歳を超えてからは受けたくない」

 最悪の場合、食べられなくなり、寝たきりになることも考えられる。にもかかわらず、腕試し感覚で、食道がんの手術をしたがる医者は少なくない。しかし、医者自身がその手術を受けるかといえば、答えは「NO」だ。

 食道がん同様に、多くの60歳以上の医師が受けたくないと答えたのが、膵臓がんの「膵頭十二指腸切除術」だった。

 大腸がんの権威で、神奈川県立がんセンターの赤池信氏(68歳)ですら膵臓がん手術には否定的だ。

 「治癒切除率の低さと術後合併症の頻度、QOLを考慮すると正直、自分なら受けたくない。手術の代わりに重粒子線治療を選択したい。

 他にも膀胱がんに対する人工膀胱造設術は避けたいですね。理由は自己管理が非常に困難で、常に尿漏れが続くからです」

 前立腺がんの手術も「受けない」と答えた医者が多かった。大阪大学人間科学研究科未来共創センター教授で循環器内科医の石蔵文信氏(62歳)が語る。

 「前立腺がんや甲状腺がんは進行が遅いので、手術せずとも、そのまま人生を終えられる可能性が高い。実際80歳以上で亡くなった男性を調べてみると、多くの人に前立腺がんが見つかっています。

 最近はPSAという前立腺がんマーカーの数値がちょっと高いとすぐに『手術しよう』と言われますが、海外の論文では手術のやり過ぎを指摘する声も多い」

 がんと並んで、医者が受けたくない手術として挙げたのが脳の手術。たとえば、脳ドックで未破裂脳動脈瘤が見つかったと言われたら、不安で手術を受けようと思う人もいるだろう。

 だが、はるひ呼吸器病院病理部長の堤寛氏(65歳)は、無理に手術するほうが危険だと主張する。

 「脳ドックによって、脳に小さな動脈瘤が見つかるケースがよくあります。

 『破裂したら大変ですから、今のうちに取り除きましょう』と言う医者がいますが、私なら放置します。手術による死亡率が5%程度あるのに対し、10年以内に破裂する確率は1~2%程度と言われています。

 高齢者は、無理に手術した場合と、そのままにした場合で寿命が変わらない可能性が高い。ちなみに脳ドックは日本でしかやっていません」

 脳と同じく、神経に影響を及ぼす可能性があるのが頸椎の手術だ。

 「頸椎は神経が集中するものすごくデリケートな部分です。『手が痺れる』といった症状で手術に踏み切る人がいますが、良くなったという声をほとんど聞かない。

 手術をしても痺れと痛みは残るし、よりひどくなる可能性はいくらでもある。私も自分で歩けるうちは絶対に受けない」(秋津医院院長の秋津壽男氏・63歳)

 さらに前出の堤氏は「自分なら大動脈瘤の人工血管置換術は受けたくない」と語る。

 「手術の際、血栓が詰まって脳梗塞や心筋梗塞になって死亡する確率が10~20%ほどあり、たとえ手術を乗り越えたとしても、体力のない高齢者の場合、寝たきりの状態になる可能性も大きい。

 実際、私の義父が担当医から胸部の大動脈瘤で手術を勧められたと聞き、私が『もし先生のお父さんが患者だったら手術をしますか』と問うと『しません』と答えました。

 自分の家族にはやらない手術をなぜ勧めたのか。もっと患者のことを真剣に考えてほしいと憤りを感じましたね」

 前出の秋津氏は、扁桃腺の摘出手術、盲腸の手術、胆石の手術、白内障手術は、ギリギリまで逃げ回って受けないという。

 「もともと扁桃腺自体は邪魔者ではなく、免疫の要になっている部分なんです。盲腸も同じです。以前はほかの手術のついでに取ったりしたのですが、いまは盲腸があったほうが、腸内環境がよくなると研究結果が出ています。

 白内障は徐々に悪くなっていく病気なので、本当に生活に支障をきたしてからでも十分に間に合う。

 胆石も同様。昔は胆石が刺激になって胆嚢がんになるとされていましたが、いまは関係ないことがわかっている。炎症を起こしていない人は、知らん顔して死ぬまで持っておいたほうがいい」

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最終更新:9/21(木) 14:05
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