ここから本文です

前川喜平・前文科事務次官が告発「首相の“お友達案件”の世界遺産登録は、日韓関係悪化の火種となる」

9/21(木) 8:50配信

HARBOR BUSINESS Online

 加計問題で「行政が歪められている」「国家権力の私物化が濃厚」と告発した前川喜平・前文科事務次官が、2015年7月に世界遺産登録された「明治日本の産業革命遺産」が安倍首相の“お友達案件”であったのではないかと告発、さらにこれが日韓関係を悪化させる“火種”となることへの懸念を語った。

◆世界遺産登録時の「情報センター設立」の約束を先送り

 2015年7月、長崎市の軍艦島をはじめ八幡製鉄所(福岡県)や松下村塾(山口県)などが「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されることになった。

 これに対して韓国は「強制労働の現場を日本の近代史の世界遺産にしようとしている」と反発、日本側が「強制的に働かされた朝鮮半島出身者の歴史的事実に関する情報センターを作って説明する」と約束して韓国側が納得したという経緯をたどった。それなのに、この約束が実行に移されようとしていないのだ。

 そしてこの問題の当事者こそ、加計問題で“総理のご意向”を伝えたとされる和泉洋人首相補佐官なのだという。前川氏はこう振り返る。

「加計学園の問題で和泉首相補佐官に呼びつけられた昨年の秋、『情報センターを六本木の国立新美術館に作ってほしい』と言われました。『どうして六本木なのか』と思って、『難しいですよ』と言いながら松野(博一)大臣(当時)にも相談したのですが、最終的には『無理です』と押し返した。その情報センターが、2年以上経った今もできていないのです。このことが、今後の日韓関係をさらに悪化させる“火種”になるのではないかと懸念しています」

 軍艦島や八幡製鉄所について説明する情報センターを900km以上離れた東京に作ろうとすることも理解しがたいが、登録時の約束の実行を先送りする、一種のサボタージュと見なされる恐れさえある。

◆日本政府代表が「軍艦島や八幡製鉄所で強制労働があった」と世界に向けて発言

 日本政府の代表は、世界遺産登録が決定した2015年7月の世界遺産委員会で「韓国人などが自分の意思に反して動員され、“強制的に労働”(forced to work)させられたことがあった。この歴史的事実を説明するための情報センターを設置する」と発言した(決定文には記載せず)。

 つまり日本政府は、公式の場で「(朝鮮半島出身者が軍艦島、八幡製鉄所などで)強制的に働かされたことがあった」と世界に向けて認めたのだ。一方で、国内向けには「戦時徴用工であり、強制労働ではない」と言い続けている。

 タイミングが悪いことに、いま韓国では「軍艦島」が映画化されて話題になっている。史実にはない反日的要素が含まれているフィクション映画だが、否が応でも軍艦島への関心は高まっている。反日感情が一気に広がりかねないこの問題を放置することは、政府の職務怠慢といえる。しかも世界遺産は登録から3年後に見直すことになっている。来年、韓国側が登録時の約束を持ち出して、国際問題になるのは必至だ。

◆「明治日本の産業革命遺産」世界遺産登録は、加計問題と同じ“お友達案件”だった!?

 この「明治日本の産業革命遺産」の世界遺産登録は、第1次安倍内閣の頃から動き始めた。これに関して前川氏は「(加計問題と同様に)かなり無理筋の“お友達案件”でした」と振り返る。

「地方の首長が『地域振興だ』として協議会をつくって取り組んでいたのですが、それをまとめてユネスコに働きかけようとしていた中心人物が加藤康子(こうこ)さん。加藤六月元農相の長女です。安倍家と加藤家は仲が良く、康子さんは安倍首相の幼なじみだそうです」(前川氏)

 第2次安倍内閣で康子氏は内閣官房参与となり、文科省の3年先輩で元ユネスコ大使の木曽功氏も同じく内閣官房参与だった。現在、加計学園「千葉科学大学」学長の木曽氏は、和泉氏と同様、加計問題にも登場する(事務次官時代の前川氏を訪ねて獣医学部新設について面談)。加計問題と世界遺産登録問題は、人脈的に重なり合う。「文科省が抑え込まれた」ということも加計問題と瓜二つだ。

◆文化庁が推していた「長崎の教会群」を逆転、政治判断で決定

 世界遺産はユネスコの諮問機関であるイコモスが審査するが、各国の文化遺産の推薦枠は年間1件。文科省外局の文化庁文化審議会は、2015年の推薦枠として長崎の教会群を考えていた。

 この年は長崎での信徒再発見から150年目。幕末の開国で禁教が解かれ、フランス人の宣教師が長崎に教会を作った1865年、カトリック世界で日本の隠れキリシタンが大きなニュースとなった。そこで、長崎県の関係者は「150年目の年に教会群を世界遺産登録したい」と準備を進め、文化審議会も「長崎教会群推薦」という結論となった。

 当時「明治日本の産業革命遺産」も候補のリストに入っていたが、その順位は低かった。安倍首相の地元・山口県の松下村塾と八幡製鉄所(福岡県)や軍艦島との関連性が説明しにくいこととに加え、軍艦島の保全措置が取られていないという大きな問題もあった。

 そのため、文化審議会では「保全措置が不十分な限りは、日本政府から推薦できる案件にならないのではないか」という慎重論が大方を占め、長崎の教会群より順位が下になっていたのだ(現在も軍艦島は保全措置が取られていないため、日々壊れゆく状態になっている)。

「ところが内閣官房が文化審議会とは別の有識者会議を設けて審査し、『明治日本の産業革命遺産にする』と言ってきました。政府の中に、文科省外局の文化庁の『文化審議会』と内閣官房の『有識者会議』という二つの審査機関ができていたのです。

 最後は政治判断となり、『明治日本の産業革命遺産』が選ばれました。順位が低かったにもかかわらず、加藤康子氏や内閣官房が強く推していたほうに決まったわけですから、こちらでも“総理のご意向”があったのではないかという疑問が出てきます」(前川氏)

<取材・文・撮影/横田 一>

よこたはじめ●ジャーナリスト。著書に『新潟県知事選では、どうして大逆転がおこったのか』(七つ森書館)『検証・小池都政』(緑風出版)など

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:9/22(金) 16:32
HARBOR BUSINESS Online

Yahoo!ニュースからのお知らせ