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【開発秘話】約半年で約2万台売れた無印良品の『豆から挽けるコーヒーメーカー』

9/24(日) 7:10配信

@DIME

 無印良品が2017年2月に発売した『豆から挽けるコーヒーメーカー』の売れ行きが好調だ。発売前の予約販売で用意していた台数を即完売し、以降注文が殺到したことから、8月下旬まで予約販売で対応せざるを得なかったほどである。

【写真】約半年で約2万台売れた無印良品の『豆から挽けるコーヒーメーカー』

『豆から挽けるコーヒーメーカー』は、プロがハンドドリップで淹れる美味しいコーヒーの実現を目指して開発された。コーヒーミルを搭載しているが、同様の既存品が搭載するブレードカッターミルではなく、業務用のフラットカッターミルを搭載。豆を一定サイズに挽くことができ、安定した味を出すことができるようになった。価格は3万2000円(税込)と高めながら、8月末までに約2万台が売れている。

■丁寧で美しいプロの技を再現

 無印良品では一時期、ブレードカッターミルを搭載したコーヒーメーカーを扱っていた。しかし、同様のものが他社からも発売されていることから、無印良品で扱う意味に疑問符がつき、販売が終わってしまった。これを受け、今から3年ほど前に、社内で新たなコーヒーメーカーをつくるためのプロジェクトが発足した。

「豆を丁寧に挽いた淹れたてのコーヒーは美味しいことがわかっているにもかかわらず、忙しいために自動販売機で買って済ましてしまっている矛盾が、開発の一番最初のきっかけになります」

 無印良品を展開する良品計画の生活雑貨部エレクトロ二クス・アウトドア担当の中川実氏は、『豆から挽けるコーヒーメーカー』の開発のきっかけを、このように語る。

 プロジェクトは開始から1年ほど経ってから大きく動き出した。きっかけは、同社が展開する『Cafe&Meal MUJI』が、コーヒー豆の輸入販売などを行なうミカフェートのコーヒー豆を使い、プロが淹れるコーヒーを忠実に再現するというリニューアルしたこと。中川氏らプロジェクトメンバーは2015年夏、ミカフェートに美味しいコーヒーの淹れ方などについて話を聞くことにした。ここで、プロは非常に丁寧な工程をいくつか経て、美味しいコーヒーを淹れていることを知る。「コーヒーを注文してから出てくるまでの間に、『ここまでしているのか!』というポイントがいくつかありました。しかしそれらは、それまでのコーヒーメーカーでは再現できていないことがわかりました」と中川氏は話す。

 中川氏が感心してしまった、プロがコーヒーを淹れる際の丁寧な工程の代表例が、豆を均一に挽くことだった。豆を均一に挽くのは、そうしないと雑味が生まれてしまうためで、そのためにフラットカッターミルを使用している。中川氏は、「知識として知っていたことでも、実際に目にすると、すごく丁寧なもので、プロジェクトチームのメンバーは感銘を受けました」と振り返る。新たなコーヒーメーカーのコンセプトを、丁寧で美しいプロの技を再現することに見出した。

■ミカフェート直伝のノウハウを搭載

 搭載することにしたフラットカッターミルは、数え切れないほどく試作をつくった。実際にコーヒー豆を挽いてみては同社でチェックし、ある程度均一に挽けるレベルに達したら、それを使って挽いたコーヒー豆で淹れたコーヒーをミカフェートに試飲してもらった。ミカフェートの評価は概ね高かったが、むしろ同社の方が厳しくチェックし、豆のバラツキを限りなく抑えるべくフラットカッターミルの製造を依頼したツインバード工業に改良を要請した。

『豆から挽けるコーヒーメーカー』はミルのほかにも、ミカフェート直伝の美味しいコーヒーを淹れるためのノウハウを搭載した。

 例えば、抽出温度は酸味や苦味の味のバランスと香りがいい87℃で管理している。水タンクの下にヒーターを設置して、センサーで温度管理。湯をドリッパーまで最短距離で届ける専用ルートを確保し、温度が下がらないようにした。このほか、ドリップ前に少し湯を注ぐ蒸らし工程を入れたほか、味を劣化させる保温も20分までとした。

■黒とステンレスを基調としたデザインにした理由

『豆から挽けるコーヒーメーカー』は、それまでの無印良品のキッチン家電とはデザインイメージが異なる。無印良品のキッチン家電といえば、白を基調とし柔らかい印象が強いが、黒とステンレスを基調とし、業務用のイメージを彷彿とさせる。

 それまでのキッチン家電と雰囲気を変えたのは、「新しいステージに立ちたい」という無印良品のアドバイザリーボードの一人である深澤直人氏のアドバイスによるところが大きかった。中川氏は次のように話す。

「メーカーのロゴがない白くてシンプルな家電は、日本のほとんどのメーカーがやり始めています。謙虚さの中にある美しさを伝える、といった無印良品の役目は、白を基調としたキッチン家電で世の中にしっかり浸透しました。従来とは違いこだわりが詰まったものだということを表現するために、黒とステンレスを使うことに決めました」

■発売1か月で予約販売に切り替える事態に

 2017年1月、同社は『豆から挽けるコーヒーメーカー』を報道発表。そのとき、店頭販売に先がけて先行予約販売を実施した。用意した台数は3000台。ところが、2月の店頭販売を前にして3000台を完売してしまった。

 このような事態が起きたのは、発売前にテレビ東京の「ガイアの夜明け」で紹介されたため。「テレビ放送に合わせて先行予約を開始しましたが、放送中にネットストアの在庫がすべてなくなりました」と中川氏は振り返る。

 当初の計画では半年で6000台程度と、かなり控えめなものだった。万が一の在庫切れなどを防ぐ意味でも、9000台は確保することにしたが、発売から1か月後には、用意していた9000台を完売。2月に部材を手配したが、部材が揃い量産できるようになったのは5月になってからだった。

 したがって、9000台完売後は予約販売で対応。生産能力も徐々に上げていったが、8月下旬までこの状態が続いた。予約してから手元に届くまで、最大で3か月近く待たなければならないこともあった。

 このような状況では、販促などできるはずもない。だが、店頭販売できるようになった現在、本格的に取り組み始めたことがある。それは、各店舗が独自に地域のロースター(焙煎業者)と組んで実施するワークショップ。また、店舗にいるテイスティングアドバイザーに、美味しいコーヒーの淹れ方や『豆から淹れるコーヒーメーカー』についてのレクチャーを実施し、店頭でコーヒーと機械の両方を勧めることができるようにした。「これらはもともと、発売当時からやりたかったこと。メディアで伝えられていること以外の+αを伝えることができるようになりました」と中川氏は話す。

★★★取材からわかった『豆から挽けるコーヒーメーカー』のヒット要因3★★★

1.プロが淹れる正しい工程を忠実に再現

 プロの淹れたコーヒーが美味しいのは誰もが知っている。美味しいコーヒーを淹れるためプロの技を忠実に再現したことで、コーヒー好きの期待に応えた。

2.簡単に美味しいコーヒーを淹れることができる

 美味しいコーヒーを淹れるには、複数で丁寧な工程を経なければならない。だが、忙しいと時間をかけられない。時間をかけて丁寧に淹れた方が美味しいとわかっていても、それができないジレンマを抱えたコーヒー好きに支持された。

3.価格以上の価値

 価格は高めだが、業務用の高価なフラットカッターミルを搭載するなど、価格以上の価値を提供することができている。

『豆から挽けるコーヒーメーカー』はミルだけを使いハンドドリップで淹れるという使い方や、タイマーでセットした時刻に合わせてコーヒーを淹れるという使い方もできる。また、試飲させてもらったが、それまでのコーヒーメーカーよりハンドドリップで淹れたものに近い味わいがした。コーヒーメーカーにしては高価だが、多機能や味わいの良さを踏まえれば、高いものではない。

文/大沢裕司

@DIME編集部

最終更新:9/24(日) 7:10
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