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香川真司の消化不良感。発揮しきれない実力。日本の10番が攻撃の中心として輝くために

10/7(土) 13:20配信

フットボールチャンネル

 6日に行われた日本代表-ニュージーランド代表の一戦で、先発出場した香川真司。本田圭佑、岡崎慎司らが不在の状況で、トップ下に入った背番号10には大きな期待が集まった。だが、決定機もあったものの得点には絡めず。消化不良のままピッチを後にすることになった。(取材・文:元川悦子)

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●決定機もあったが…またも不完全燃焼感を覚えることに

 本田圭佑(パチューカ)、岡崎慎司(レスター)の両30代アタッカーがメンバー外となる中、国際Aマッチ87試合・28ゴールという比類なき実績を誇るエースナンバー10・香川真司(ドルトムント)に日本代表攻撃陣をけん引してほしい…。それはヴァイッド・ハリルホジッチ監督のみならず、チーム全体、サッカー界全体に共通する思いだっただろう。

 本人も6日のニュージーランド戦(豊田)を前に「攻撃面において(自分が)チームを引っ張っていけるかって意味では、すごく楽しみなゲーム。前回(2014年ブラジルワールドカップ)はまだ24~28歳の時で、まだまだ未熟な部分も沢山あった。そういう経験を経たから今、自分自身もメンタル的なところですごく安定していると感じる。この2試合でしっかり勢いであったり、実力を証明していきたい」と語気を強めていた。

 その意欲を前面に押し出すように、6月のシリア戦(東京)以来のスタメンに陣取った香川は開始早々の15秒、いきなり振り向きざまのシュートを打ちにいった。

 相手の5バックが下がり気味になる中、背番号10はそこを自由自在に動いて攻めに絡む。出だしの感触は悪くなかった。8分には左CKの流れから山口蛍(C大阪)が頭で流したボールに反応。前線でDF2枚を揺さぶりながら右足を一閃。これは枠を捉えたかと思われたが右ポスト直撃となりゴールは奪えない。

 さらに前半24分には山口のインターセプトから決定的なスルーパスが通ったが、この得点機もモノにできなかった。この1つでも決まっていたら…と思わせたが、結局、3本のフィニッシュの機会をゴールにつなげられず、60分でピッチを後にすることになった彼は、またも不完全燃焼感を覚えることになった。

「フィニッシュの冷静さが足りない? どうなんですかね。それはどの世界でもあることだし、入る時は入ると思うし。別にゴール前で焦ってたわけではないので。ただ、決めきれないと、結果を残せないと、何とも言えない世界。そこは次の試合に向けて1人1人がより強く持ってやれればいい」と本人は必死に前を向いたが、表情は険しいままだった。

●「ワールドカップを見据えると、こういうレベルはたぶんないと思う」

 香川が輝けなかったのは、もちろん彼1人の責任とは言い切れない。前半15~20分頃からニュージーランドが日本のやり方に適応してくると、山口と井手口陽介(G大阪)の両ボランチが低い位置に下がり、前線4枚と後ろの6枚が分かれてしまう状態に陥った。こうなると中盤の連動性もコンビネーションも出しづらくなる。

「相手が慣れてきた中で行き詰った感じはした。(攻めと守りが)2つに分かれちゃっていましたね」と本人も認めていた。

 ただ、山口・井手口との距離が遠くなったという実感があったのなら、香川の方から声をかけてラインを押し上げさせるなり、自分からサポートに行くなり、何らかの改善策はあったはず。そういうリーダーシップを示しきれなかったのは、やはり悔やまれるところだ。

 攻撃のタクトを振るう人間として、相手の弱点を徹底的に突く方向に持っていけなかった点も物足りなさが残る。

「相手のプレスも強くなかったから、ゴール前まで簡単に行けちゃってた。特に左サイドの守備がルーズだったから、そこに展開するだけでクロスに行けちゃうくらいの試合だったから、そこからの起点でもっとやればよかった」と彼は試合運びの拙さを反省していた。

 左サイドの武藤嘉紀と長友佑都(インテル)のタテ関係は機能していたし、外は崩せていたのだから、確かにゴール前でもう一工夫がほしかったところ。実際、ドルトムントでは9月30日のアウグスブルク戦で芸術的なループ弾を決めていて、香川の創造性と高い技術には多くの人が度肝を抜かれた。それだけの傑出した能力があるにもかかわらず、代表チームに来るたびにその良さが影を潜めるため、見る側も消化不良感が拭えない。

「なかなか評価しづらいゲームでしたね。ワールドカップを決めた後ってこともありますし、みんなのモチベーション含めて少し難しさがあるのは当たり前で。とりあえず最低限勝ち切れたことはよかったけど、果たしてワールドカップって意味では正直、何の意味がある試合なのかっていうのは…。

 相手のインテンシティーもそんなに高くなかったですし、ワールドカップを見据えると、こういうレベルはたぶんないと思うんで…。ただ、やっぱりゴール前もそうですけど、攻撃の精度は確実に上げていかきゃいけないというのは思いますけど」と香川本人は世界トップよりレベルの下がる相手とどう向き合っていくべきか、考えがまとまらない部分があったことを明かした。

●「我々の知っている香川本来のレベルではない」(ハリルホジッチ監督)

 ドルトムントで常日頃から世界トップの相手と対峙している彼は、ワールドカップ本大会のクオリティの高さをよく理解している選手。ゆえに、今回のニュージーランド戦に多少の違和感を覚えるのも分かる。左肩脱臼が癒え、ようやく所属クラブで出場機会が増えてきた時に、親善試合のために長距離移動しなければならない負担も感じていたかもしれない。

 酒井宏樹(マルセイユ)も「海外組の選手たちは長いシーズンの途中で帰ってきているので、意味のある経験にしないといけない」と話していたが、やはりロシア行きの決まったこのタイミングでの代表テストマッチの位置づけは欧州組にとっては特に難しいものがあるようだ。

 とはいえ、8ヶ月後のワールドカップ本番まで海外組が参加できる国際Aマッチは今回を含めて7~8試合しかない。日本サッカー協会の田嶋幸三会長も「プレーオフに回る可能性があったので、正直、今回のマッチメークは難しかった」と本音を吐露したが、そういった事情も受け止めて、チームの強化、自身のレベルアップに集中するのが選手の務めだろう。

 この日の香川が圧倒的経験値を誇る攻撃リーダーとして合格点を与えられる仕事をしたかといえば、十分とは言い難い面がある。そこを彼自身、しっかりと整理・分析して、完全復活への道筋を描いていくべきだ。

 ハリルホジッチ監督も「我々の知っている香川本来のレベルではない。ボールを持っていない時のプレーをより速くして、どんどんチームメートに絡んでいくことを要求している。トレーニングを続けて、高いレベルを取り戻すことが必要だと思う」と改めて注文をつけていた。

 指揮官があえてそんな発言をするのも、卓越した国際経験と実績を高く評価しているから。これまで積み上げてきたものを今一度、思い出して、自分が日本代表のエースナンバー10として何をすべきなのか。そこを香川真司にはしっかりと突き詰めていってほしい。

 次なるターゲットは10日のハイチ戦(横浜)。そこに向けて心身両面の切り替えを図ってもらいたい。

(取材・文:元川悦子)

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